メタメタな時代の曖昧な私の文学 高橋文樹(著)

テキストが電子書籍やWebページなどの形をとって流通する時代、テキストに対していかに向き合うべきか。様々な試行錯誤の末にこぼれ落ちる断章をまとめています。2012年より足掛け5年に渡って連載されたテクノロジーと文学に関する論考。各界著名人からの密かな評判を受けた連載がついに完結。

¥ 250

  1. 完結済み ( 2012 年 2 月 26 日 〜 2018 年 1 月 4 日 )
  2. 22 作品収録
  3. 107,389文字(400字詰原稿用紙269枚)
  4. あとがき付き(約724文字)

Authors & Editors 執筆者一覧

高橋文樹

高橋文樹 著者

日本の小説家。1979年8月16日に千葉県に生まれる。株式会社破滅派代表取締役。太宰治や大江健三郎を輩出した東大仏文科在学中に『途中下車』で幻冬舎NET学生文学大賞を受賞し、幸福な作家デビューを果たすも、その後辛酸を舐める。2007年、『アウレリャーノがやってくる』で第39回新潮新人賞を受賞するも、単行本化されず、この世のすべてを憎むようになる。
自分の作品は自分で世に出すというDIY精神のもとに、日夜活動をしているプログラマーとしての側面もあり、千葉県でもっともGIthubスターを稼いだPHPエンジニアでもある。趣味は家づくりで、山梨に自分で家を建てた。

Works 収録作一覧

  1. 高橋文樹

    1. あなたのテキストは人間が読むようなものではない

    • エセー
    • 2,372文字
    • 2012 年 2 月 28 日公開

    いまあなたのテキストは文学的か否かというよりもまず、「いいゴミか悪いゴミか」を問われることになっている。それを知った上でなお、あなたが紡ぐテキストの価値は残るだろうか。

  2. 高橋文樹

    2. 父は殺戮の限りを尽くし、息子は本が読める

    • エセー
    • 2,633文字
    • 2012 年 3 月 1 日公開

    いまWebの世界ではGoogleとFacebookによる熾烈な戦いが繰り広げられている。どちらの巨人が勝つにせよ、あなたのテキストは彼らのやり方で評価されるとうことは知っておいた方がいい。

  3. 高橋文樹

    3. グッド・ルーザーになるための準備はできているか

    • エセー
    • 4,265文字
    • 2012 年 3 月 16 日公開

    あなたのテキストは1000年前の人間が書いたテキストよりも良いだろうか。いい場合もあれば、悪い場合もあるだろう。ただし、機械はそうではない。あなたのテキストに関する能力のうち、かなり多くのものが機械によって代替されるようになる。

  4. 高橋文樹

    4. 生のものと紙に刷られたもの

    • エセー
    • 1,930文字
    • 2012 年 2 月 26 日公開

    紙に刷られないテキストの流通量は次第に増えている。あなたのテキストは「なまのまま」でも大丈夫だろうか。紙に刷られることを前提とした「レイアウト」があなたのテキストの価値を支えているのだとしたら、「なまのまま」では価値がないということになる。

  5. 高橋文樹

    5. 破壊しに、と電子書籍は言う

    • エセー
    • 5,222文字
    • 2012 年 4 月 18 日公開

    クレイトン・クリステンセン著『イノベーションのジレンマ』を元に電子書籍が破壊的技術であると仮定してみよう。新技術によって破壊された荒野で、あなたはどんなテキストを紡いでいくべきか。

  6. 高橋文樹

    6. 売っていない本の中身と永遠に出てこない見積もり

    • エセー
    • 4,466文字
    • 2012 年 5 月 18 日公開

    電子書籍という言葉が喧伝され、なにか本よりも安いものが流通するのではないかと期待されたがそうはなっていない。これは端的にいってテキストに値段はつかないからだ。私達は今、19世紀のお針子たちのように、値段のわからないモノの前で怯えている。

  7. 高橋文樹

    7. 真に恐れるべきは異形のモノ

    • エセー
    • 4,274文字
    • 2012 年 6 月 25 日公開

    機械が発達するにつれ、ついにテキストは自動的に生成されるようになった。この時代に私達のテキストはどのようにして奪われていくのだろうか。

  8. 高橋文樹

    8. JBG48、あるいは純文学に課された48の課題

    • エセー
    • 4,564文字
    • 2012 年 7 月 29 日公開

    衰退する音楽業界の中でAKB48だけがひときわ高いセールスを誇っている。これはなにがしかの事実を指し示していないだろうか。純文学という「売れないジャンル」をAKBと対比させることで、私達の電子的なテキストが割けられないだろうビジネスモデルについて思いを巡らせたい。

  9. 高橋文樹

    9. キャッチ・ミーン・イフ・ユー・キャン

    • エセー
    • 3,784文字
    • 2012 年 9 月 30 日公開

    私達はテキストに意味があると思っている。そして、メタデータはそのテキストの意味を適切に伝えうると思っている。そして私達はそう思うがゆえに、テキストの意味を捕まえることができないのだ。

  10. 高橋文樹

    10. 文脈の中で私達は無力である

    • エセー
    • 3,482文字
    • 2013 年 3 月 25 日公開

    テキストはある文脈の中に位置づけて読まれる。ただし、文脈は広がりつつある。人々がスマートフォンを持つことで、位置情報を元にしたマーケティングが可能になったように、IT界の巨人達はより強い属性を求めて支配可能なコンテキストを広めている。そんな世界で私達のテキストは無力である。

  11. 高橋文樹

    11. 堕落した詩とテキストの民主主義

    • エセー
    • 4,974文字
    • 2014 年 3 月 20 日公開

    詩の発展の歴史は堕落の歴史である——と言ったら、あなたは怒るだろうか。だが、そうなのだ。貴族の娘がコルセットを脱ぎ去って一枚のワンピースで駆け出すことが堕落であるのと同じ意味において。

  12. 高橋文樹

    12. 館長、感染させてくれてありがとう

    • エセー
    • 4,826文字
    • 2014 年 9 月 12 日公開

    バイラルメディアという新たなメディアが人目に触れることが多くなった。盗用スレスレの引用が平然と行われるインターネットという荒野で、創作者はどのような心構えをすべきか。

  13. 高橋文樹

    13. ロックスターの牛乳、写真家の散財、人々の怒り

    • エセー
    • 6,240文字
    • 2014 年 12 月 29 日公開

    最近、ある作品がその質とは別のところで批判される例がいくつかあった。ミュージシャンであるU2と、写真家大橋仁である。彼らの言い分や作品の質については論じない。ただ一つ、重要なことは、彼らが自分たちの思いもよらないところで裁かれたという点について、インターネット上で創作活動を行う人間が知っていなければならないことについて、私は語ろう。

  14. 高橋文樹

    14. 不都合な真実、それも無名で卓抜な表現をするあなたにとってだけ

    • エセー
    • 4,882文字
    • 2015 年 3 月 11 日公開

    私はこれまで、繰り返しWebの仕組みについて述べてきた。だが、あなたが真面目に文芸活動を行っているとするならば、私はおそらく絶望的なビジョンを提示することになるだろう。と同時に、これは福音でもある。あなたがただ単に文学によって名を馳せたいとか、イケていたいという類のサブカルクソ野郎である場合において。

  15. 高橋文樹

    15. 悪いやつほどよくググる

    • エセー
    • 7,010文字
    • 2015 年 3 月 30 日公開

    「泥棒は事前に必ず下見する」という七五調の看板はあなたの町にあるだろうか? 私の住む町にはある。考えてみればおかしな話だ。事前準備は美徳であるはずなのに、泥棒という悪人がそれを厭わない。あなたは悪人が逆説的に真面目だと思うだろうか。それとも、制度的な欠陥だと思うだろうか。

  16. 高橋文樹

    16. そうはいっても女神は優しい

    • エセー
    • 6,248文字
    • 2015 年 4 月 22 日公開

    あなたのテキストはコンピューターによって計算される。あなたは怒るだろうか。だが、彼女は機械仕掛けの女神でもある。彼女は敵ではない。それどころか、あなたがこれまで出会いもしなかった読者をあなたに届けてくれる女神なのだ。

  17. 高橋文樹

    17. 無敵の主婦とプルーストに送る白旗

    • エセー
    • 5,345文字
    • 2015 年 5 月 15 日公開

    電子的なテキストを紡ぎ、それで生活の糧を得ようとするあなたの前に立ちはだかる数々の敵のうち、もっとも手強い者は主婦なのではないか。メルカリというオークションアプリを眺めていると、そんな恐れを感じる。

  18. 高橋文樹

    18. 私は死んでもいいねしない、その結果死ぬ

    • エセー
    • 5,551文字
    • 2015 年 7 月 13 日公開

    テキストを読むという行為は、ある意味で時間の投資である。私たちはこの投資効果を上げる仕組みを日常的に受け入れている。Amazonのレビューであり、Facebookのいいねである。それらの仕組みがシステムに組み込まれている状況で私たちはどう振る舞うべきだろうか。

  19. 高橋文樹

    19. 平家の女とテキストの質

    • エセー
    • 6,412文字
    • 2015 年 8 月 27 日公開

    「テキストの質」について語るとき、私たちはそれがなにを示しているのかについてあまり自覚していない。平家の女についての説明がそれを明らかにしてくれるだろう。

  20. 高橋文樹

    20. 村上春樹について語るとき、僕が語ること

    • エセー
    • 8,037文字
    • 2015 年 10 月 13 日公開

    およそ文学に携わる者において、村上春樹についていうべきことはなにもないという人はいないだろう。「村上? 龍だろ。春樹? 角川だろ」とか、そういうことは言ってるんじゃない。本稿では、現時点の日本人作家で最も強い存在感を放つ作家のテキストの質について書く。

  21. 高橋文樹

    21. 若い人工知能へ宛てた手紙

    • エセー
    • 5,449文字
    • 2016 年 3 月 14 日公開

    つい先日、DeepMind社のAlpha碁というプログラムが碁界最強と目されるイ・セドル九段に三連勝し、話題をさらった。もっとも複雑だと目されてた競技において人工知能が圧倒的といっていいだろう勝利を収めた衝撃は小さくない。はたして、シンギュラリティを間近に控えた時代において、どのような敗北が我々を待っているのだろうか。

  22. 高橋文樹

    22. 文学だけにできること

    • エセー
    • 5,423文字
    • 2018 年 1 月 4 日公開

    2010年から連載してきたこのエッセーもついに最終回となる。本稿では、連載を通じて触れてきた「テクノロジーと文学」ということに対する考察ではなく、単に文学だけができることについて、現時点での私の結論めいたものを書く。

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