「落□とは、消えるこ□では――」短篇集『落丁』カットアップ・リミックス
もしもし――その一言だけが、機の合間に、こぼれ落ちる。
委、応、帳、録、目――これらの字だけが、消えていく。
何十年勤めて、一枚。誰もが、自分の書いたものを、自分の手で切り落としていた。
今、その影は、誰に一番近づいているのだろう。
満ちては引き、引いては満ちる。その中に、いずれ等しく紛れ込んでいく。
代々の記帳者は、誰に言われるでもなく、同じ場所を、空けてきた。
もしもし、こちら交換。――あなたは、まだそこにいますか。
日誌は、正しい。ただ、数えるたびに、誰かが足りない。
始祖の顔は、誰の顔でもない。欠けた頁は、消えたのではない。
翅に刻まれた符号は、百年前から、あなたを待っていた。
ゲンロン大森望SF創作講座の打ち上げ参加後、始発の電車に乗るため五反田から品川まで歩いたときに思いつきました。2026年7月合評会参加作品
鼻腔を擽る甘く不純な香り。 昨晩の温もりを落とした私が向かう先は、暗闇。 煙は路に、ただ辿る先に花は此方を見る。
春風は嚔をした。 還り埃に塗れ燃ゆる。幻想掌編。
別れた恋人が置いていったハエトリソウを育てる「私」が奇妙な体験をする話。ややグロテスクな描写を含みます。 ペーパーウェル14( テーマ「欠片」)に参加した作品です。お手に取ってくださった方、あ…
庭に繁るオキナワスズメウリ。小さな実をつけるそれはとても奇妙な形をしていた。まるで、人の形のような――。
友人の死の知らせを受けた私は葬儀に出席するために旅立つ。私は友人の葬儀で不思議なものを見た。 ※2020年にネットプリント配信した作品です。当時、お手に取ってくださった皆様、ありがとう…
私はある日、露天商からひとつの卵を買った。それは天使の卵だと云う。私は半信半疑で露天商の云う通り、三日三晩、卵を月光に晒した。すると卵から美しい天使が孵った。私はその天使と奇妙でいて穏やかな同居…
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