この工場に雇われて三月目、私は初めて「千鳥格子崩し」を織る番に当たった。
工場は、町はずれの川沿いに建つ、煉瓦造りの大きな建物だった。機の音が、朝から晩まで途切れることなく響き渡り、初めのうちは、その音の大きさに気圧されて、思うように手が動かせなかった。同じ棟で働く娘たちは、皆、私よりいくらか年下の者が多く、遠方から出稼ぎに来ている者もいれば、この町の生まれの者もいた。誰もが、黙々と機に向かい、私語を交わす暇もなく、一日の割り当てをこなしていた。
工場の柄帳には、代々受け継がれてきた図案が、幾つも収められている。多くは、他の工場でも見かけるような、ありふれた縞や格子だったが、「千鳥格子崩し」だけは、この工場だけに伝わる、独自の柄だった。柄帳に描かれた図案通りに織れば、格子の交差する点は、一反につき、ちょうど二百四十であるはずだった。
だが、私が織り上げた反物を、古参の女工頭が検めた時、彼女は指先で布地をなぞりながら、静かに言った。
「二百四十一だね」
「数え違いでしょうか。もう一度、確かめます」
「いいんだよ。これで、いつも通りだから」
女工頭の口ぶりには、驚きも、咎める色もなかった。私はその時は、深く考えずに聞き流した。だが、それから幾つも反物を織るうちに、この「千鳥格子崩し」だけが、いつも決まって、一点だけ多く織り上がることに気づいた。他の柄では、そのような食い違いは一度も起きなかった。
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