僕の町の街灯はLEDになった
それまでの夜道は恐ろしげだった
この明るさは未来に僕の娘を守るだろう
ある夜に約束を果たした僕は
酔いながら暗い夜道を歩いた
自転車を押し
コンビニで買った
見たこともない缶ビールを携えて
ときおりポケモンの画面を眺めつつ
もっとも暗かった道にさしかかったころ
遠くから少しずつ街灯が消えていった
夜も更け その役割を終えようとしているのだ
LEDはまるでその命を終えるかのように
尾を引いて消滅する
遠くから少しずつ命が消えていく
この街灯もまた
無限ではない
もしかしたら この明かりは
未来の僕の娘を守ってくれないかもしれない
暗闇と見知らぬビールの酔いが
僕を包んでいる
2017年1月24日公開
2017-01-24T23:30:40+09:00
2017-01-24T18:24:11+09:00
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高橋文樹
破滅派
編集長
日本の小説家。1979年8月16日に千葉県に生まれる。株式会社破滅派代表取締役。太宰治や大江健三郎を輩出した東大仏文科在学中に『途中下車』で幻冬舎NET学生文学大賞を受賞し、幸福な作家デビューを果たすも、その後辛酸を舐める。2007年、『アウレリャーノがやってくる』で第39回新潮新人賞を受賞するも、単行本化されず、この世のすべてを憎むようになる。
自分の作品は自分で世に出すというDIY精神のもとに、日夜活動をしているプログラマーとしての側面もあり、千葉県でもっともGIthubスターを稼いだPHPエンジニアでもある。趣味は家づくりで、山梨に自分で家を建てた。
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