八 混沌夜

歌 and ON(第8話)

高橋文樹

小説

6,094文字

やがてモロイの前に現れたのは……「どんな音色が鳴っていた。小説は其れが一番肝要だ」全編七五調のみで書かれた衝撃のヒップホップ小説、ここに堂々完結。

犇めく若人、揺れ、回る。或るいは叫び、或るいは跳んで、普段は死んだ魚の目にも、燦然きらり眩しい光が灯る。取り取りに染め、取り取りに装う頭……また頭。天に突き出す両腕は猛々しくも尖ったようで、大東京の六本木、地階に在って見下ろした、其の光景は針地獄。無間地獄か、煉獄なのか、其れとも此処が天国か。善いも悪いも彼岸むこうにやって、踊る人々、狂宴態ハイテンション。殺し合いこそ良く似合う。

舞台ステージは男が二人。一方は凡庸此処に極まれり、という具合の無名氏で。もう一方が、かんばせも頗る華美で、巨躯怪異。冠った帽子にGDC。

背の高いのは、鋭い灯光ライト一身に受け、舞い、歌い、そして亦、舞う。さっと手を振り、翻すなら、伏せた口から韻律ライムを績ぐ。絞った声はつとに緩んで、聞く者は胃の腑を落とし、悦に入る。急転直下、再び声を絞り上げれば、聞く者は髄を引かれて天にも昇る。手の平煽る、御客は叫ぶ。身の丈の高い美丈夫、宵とあわいに勝負。

最早相手は気勢も薄れ、績ぐ詞も覚束無い。咬ませ犬なら意地すら無い、つい退ゝすごすご引き下がる。

さあさ、準備は整った。視られい兄弟ブロウ、いざ視られ。宵の高みにもう一勝負。

早る調子リズムに誘われて、不整合ちぐはぐな二人の男、舞台ステージの袖からぬっと現れる。持てる武器マイクの尻を上げ、揺れつつ進む。乱鏡球ミラーボールが光を散らす、聴衆オーディエンスは髪振り乱す。

 

ようこそ野郎共ガイズ混沌夜ケイオティック・ナイト 前座の下手糞ワックにもう飽きてない

今宵荒れたラップの戦場          満を持して主役登場

規則ルール無用の戦闘バトルなら本望      耳糞穿ほじって聞けこの節回フロウ

肥満様でぶさんお先に先ずは俺だ      小さな巨人枯葉カレハ皆惚れな

刻む韻律ライムは無限大           広辞苑でももう限界

超高性能韻律ライム機械マシーン           ぐいと引っ張る音楽情勢ミュージックシーン

極小マイクロ身体ボディで魅せる高機能ハイスペック      日本の技術を証明すべく

邪魔な雑魚役者キャラぷちっなす   小僧ボーイ背伸びの罵詈雑言ディスラップちとイカ

 

選手交代パス・ダ・マイク韻律ライム外さない     常時いつもは起きてらんない一晩中オールナイト

でもこんな夜は汗も輝く    其のすみずみ韻律ライム行き渡る

決める音韻バースは飽くまで渋く   太く熱くやばく其の名泡沫アブク

外見みかけに因らず多い語彙ボキャブラリー    即興なんかもらせりゃ上手い

お喋りはあんま好きじゃねえ とはいえ喧嘩も見過ごせねえ

掛かる火の粉は払うが自分流マイ・ウェイ 伊達に任侠映画ふかさく視ていねえ

楯突く馬鹿は見る目がえ   襁褓おむつはちゃんと変えたか赤子ベイベー

ちゃんと作って見せな汝打拍ユアビート でなきゃとっとと帰んな自慰オナ無職ニート

 

2015年8月21日公開

作品集『歌 and ON』最終話 (全8話)

歌 and ON

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© 2015 高橋文樹

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