かたす仕事

高橋文樹

432文字

ぼくは煙草をやめたことになっている

おそらく妻にはばれているのだろうけれど

妻の前では吸わない ときおりパイプだけを吸うことになっている

玄関の脇には灰皿が置いてあって

そこにはもう吸い殻が追加されないことになっている

ぼくは夜こっそりと煙草を吸うと 灰だけを灰皿に落とす

吸い殻が見つかるわけにはいかないので 灰だけを落とす

吸い殻は家の中に持ち帰り 水道にさっと流して ゴミ箱の奥底にしまう

 

ぼくがついた嘘の分だけ 灰皿には灰が溜まる

隣のマンションの植え込みにさっと捨てる

どうせ灰なのだから いつか土に帰るさ

そんな気持ちで捨てる

ぼくだって辛いのだ

 

隣のマンションでは毎朝清掃の人が周囲を掃除している

側溝の溝やアスファルトに貼り付いたガムを懸命に綺麗にする

たまにはうちの前も綺麗にしてくれる

 

そしてぼくは灰を捨てている

清掃の人はかたす

吸い殻を捨てずにいるのがぼくの仕事

灰もついでにかたすのが清掃の仕事

2016年4月20日公開

© 2016 高橋文樹

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