もぐもぐタイム

小林TKG

小説

1,570文字

そだねーとかを使えなかった。でもまあいいかなって諦めました。

地獄に行かないようにするための社会科見学というものに行くことになった。なんか即興小説でやるような話の始まり方ですけど、それはお気になさらず。

地獄に行くのは初めてだった。だからちょっと楽しみだった。あと昨今人気がある大人の社会科見学に参加するというのも楽しみだった。

「地獄までどれくらいかかるんですか?」
出発時ガイドの人に聞くと、三十分くらいです。という事だった。ちかっ。都心から最短35分竜宮城スパホテル三日月より近い。

「まあ、地獄なんてその気になれば何処にでもありますから」
更にガイドの人はそう言って笑った。なるほど確かにそれはそうだ。人によってはこの世は地獄という案もあるから、まあ確かにそういうモノなのかもしれない。

それからバスに乗って30分。地獄の入り口という場所に到着し、皆で少し歩いて、その先にある建物に入るとエスカレーターを降りた。

「ようこそ地獄へ」
そこはもう地獄であった。

見学者通路を歩いていくと左右がガラス張りになってる場所があって中を見ると地獄に堕ちた人が火であぶられたり、油かなんかが煮えたぎってる場所に落とされたり、吊るされて捌かれたり、針に体を貫かれていたりしていた。

「うあー」
地獄だー。すげー。赤ーい。赤黒ーい。グロ―い。こわーい。やばーい。

「フラッシュはご遠慮くださーい」
その間もガイドの人が大声でそんな事を言ってた。

その後もしばらくそういう通路が続いたが、角曲がって両開きのドアを越えた所で、
「はーいここでは鬼の皆さんのもぐもぐタイムがご覧いただけまーす」
とガイドの人が言ったので、みんな足を止めた。

ガラス張りなのは変わらなかったが、中には人ではなく鬼の皆さんがいた。

ガイドの人がガラス越しに目礼して合図を送ると、責任者らしき鬼の人が浅くうなずき、天井から垂れ下がっていた紐を引っ張った。すると奥のまた別の部屋からその部屋にたくさんの人間が放り込まれた。生きた人間の皆さん。皆一応に怯えたような表情をしていた。

で、鬼の皆さんはその人間たちを捕まえて潰したり、捥いだり、割ったりして食べ始めた。

もぐもぐした。

泣いたり叫んだりしてても関係なかったし、抵抗をする人もいたりしたが逆に鬼の軽い手で仰ぐくらいの感じの平手で爆ぜたりした。

あと肘から下、あるいは肩から腕、膝から下。足の付け根から下。

鬼の皆さんが人間のその部分を捥ぐとき、蟹の殻を割るみたいな音がした。ぱきゃっていう感じ。

そうしてお米を作った農家の人の事を考えて一粒残らず食べるみたいに、鬼の皆さんは綺麗に全部もぐもぐした。

「もぐもぐタイムでした。ありがとうございましたー」
ガイドの人が言った。私達はみんなでガラスの向こうの鬼の皆さんに拍手した。アメリカ人みたいに指笛でぴゅーいって鳴らす人もいた。

帰りのバスで、どうしてこのようなツアーを行ってるのかガイドさんに聞いた。
「それは当然、悪い事をしないようにしましょう、やったらああなるぞっていう奴ですよね」
「そらそうですよね」
まあ、そうだろうな。

でも、

ガイドさんの言う事はわかる。

わかる。私はああいうのは怖いからやだ。悪い事しないようにしようって思う。

でも、ピクシブとかでR-18Gのやつを一か月とか眺めてたらわかるけどさ。

きっと世の中にはああいう目にあいたい人もいるんじゃないかと思うんだよね。

なにせこの世は地獄。

あと、

この世は全ては誰かの性癖。

なんだから。

そういう人には逆効果だよなあ。きっと。

で、実際隣にそういう人がいた。

こっそり見るとズボンの前が膨らんでた。それはもうギンギンよ。手のひら広げた時の親指位。どう見ても30歳を超えたくらいの、私と同年代っぽかったけど。興奮の仕方がもう10代。だって親指位だからね。ズボンのウエストの所からチンアナゴするんじゃないかと思ったもんなあ。ヒヤヒヤしたよもう。

2020年9月26日公開

© 2020 小林TKG

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"もぐもぐタイム"へのコメント 2

  • 投稿者 | 2020-09-30 12:58

    この作者の文体のリズム、軽妙洒脱さは読んでいて愉快。他作品も含め題材もユーモアが有り、オチがどうのこうの関係なく、面白く感じました。

    • 投稿者 | 2020-09-30 19:02

      ありがとうございます。少しでも文字数を増やしてちゃんとしたものを書いてるように見せたいと思って悪あがきをしてるんですけど、それらをこのように評価していただいて、それはもうありがたいですね。うれしみがすごいです。

      著者
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