裏メ

応募作品

小林TKG

小説

2,173文字

すごく面白い話があって、その話が優秀賞になってほしくて書きました。

最初に出会ったのがいつの頃だったのか、何年前だったのかはもう思い出せないが、毎年辛●魚のカップ麺が寿がき●から出るたびに食べてる。
「辛い、辛い死ぬ」
辛いものに強いわけじゃないし、好きっていう訳でもないのだけど、でもなんか毎年食べてる。毎年肛門が酷いことになるのに食べてる。それから毎年何かしらマイナーチェンジというか、その年ごとにテーマがあるらしいのだけど、そういうのは知らない。そこまでマニアックじゃない。そこまでマニアックだったらとっくの昔に石神井の店に行ってるつー話。

まあ、こちらとしては季節の便り的な感じ。春にさくらんぼ。夏にスイカ。秋に梨。冬に辛●魚みたいな。

年に一回顔見ておかないとみたいな感じ。年に一回くらい東京駅で東京ばなな買って実家にお土産にしておこうか。くらいの感じよ。

だからまあ今年も食べたし、当然それで肛門は破壊されたし、でもまあキービジュアルスマホでパシャってインスタにあげたから。だからいいんじゃない?堪能した。十分に。自分としてはそういう距離感でいい。満足してる。これ以上は雑誌にコラムとか書く人の領分よ。それで飯食ってる人のテリトリー。

ただまあもう毎年の事だからなのかな?今ぐらいの時期になると、
「食べたいな」
と思う事が増えてきた。特にここ数年増えてきた。自分ではそうは思わないが体があの刺激を求めているのかもしれない。死ぬほど辛い目にあって、腹痛くして、肛門が死ぬ感じのあれを。体壊してなんぼみたいな感じを。
「あれがいい」
あの感じがたまらない。そういうのを。

そんな折酒の肴を求めて近所のコンビニに行くと、
「え?え?」
ファミマ入ってすぐの所に見たことも無いカップ麺があからさまに目立つように積まれており、手に取って見てみると販売メーカーは寿がき●だった。

しかも、
「この字ずらもなんか」
見たことある。自分のせいで自動ドアが開閉を繰り返すのも構わず熟読するとどうも例の辛●魚のやつ。ただし辛●魚ではなく幻し魚と書かれている。それはもう立派な字体で。真ん中のし、なんてぱっと見、し、と見えない感じで。

『幻し魚』

その脇には、

今年は夏もやってきた!!裏メニュー幻し魚!!

と、集中線で囲った中に書かれていた。緊張感を漂わせた感じ。買えと言わんばかり。

「・・・」
買った。二つ買った。

んで、家に帰ってお湯を沸かしさっそく一つ食べてみることにした。あ、食べる前に一応スマホで写真も撮った。後でインスタにあげる用に。

「おおお」
で、期待を込めてお湯を入れて五分待って蓋をはがしたが、正直見た目は辛●魚と全然違う。まずスープが透明だ。塩ラーメンの様だ。においも別に辛い感じはしない。
「さて、どんなもんですか?」
そんな感じで、メンタルに何の準備もしない状態で、とりあえず一口すすると、
「げええ」
っていう音がした。自分の発した声だった。それを自分が発したのはわかったが、ただそれ以降記憶がない。意識がそこで途切れた。いや途切れたなんて生易しいもんじゃないな。ケーブルぶつ切られたみたいな切れ方。後遺症残るレベル。

目を覚ますとそれから五時間ほど経過していた。

「・・・なんだ一体、どういう事だ?」
テーブルの上では幻し魚がすっかり伸びて膨らんでいる。あと記憶は無かったが今際の際につかんだのか手にはスマホを持っており、写真を一枚とっていた。
「うお」
白目をむいて口をだらしなく開けてそこから麺を吐き戻していた。そういう自分の写真が一枚残っていた。

「・・・」

夕方、井口多恵を家に呼んだ。井口多恵というのはもうすぐいい感じの関係性になりそうな女性だ。所謂カキタレとでもいうのか。

「仕事見つかった?」
多恵は来て早々そんなことを言った。
「ああ、もう決まるよ。それより」
このカップ麺、食べてみ凄いおいしくてさ。

「何これ、新商品?」
多恵はそういうのに目が無いから。

彼女はお湯を入れて五分経って出来上がったカップ麺を一口、どれどれ?とか暢気な事を言いつつ、髪をかき上げながら啜った。

「うええ」
そして食べた瞬間自分と同じように白目を向いて気絶した。口からは麺だけでなく、昼にでも食べたのか麺以外のものも吐き戻しつつ。

「ああ、いけない。このままでは気管に詰まってしまうかもしれない」
ああ、いけないいけない。このままではまずい。まずいまずい。死んでしまうかもしれない。

ぽっかりと開いたその口に指を突っ込んだ。

頬を内側から引っ張る。多恵の歯茎見えた。ああ歯茎だ。歯茎が見えてる。多恵の歯茎。

舌が痙攣しているははは。

こういう魚がいたような気がするな。舌先を疑似餌に見せかけて小魚をおびき寄せるとかいうの。名前は思い出せない。欠片も思い出せない。記憶違いだったかな。興味ないからな。まあいいや。

目は半分だけ開いてる。白目だ。多恵の白目だ。瞳の光彩の部分が上の方に少し見えた。

我慢できなくなっておちんちんを出して扱いた。

多恵の口内や鼻穴、喉元に吐精した。二回も三回も吐き出したのに全然萎えない。ごめん多恵、その思いが更に興奮を呼ぶ。

だから呼吸して上下するお腹にも三回出した。

最後に全部掃除して綺麗にしてから、彼女の財布から五千円くすねた。

幻し魚はその後すぐに販売中止自主回収という騒ぎになった。カビが生えてるとかそういう報道がなされていたけどどうだろう?それはあまり信じれない。

2020年9月9日公開

© 2020 小林TKG

これはの応募作品です。
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合評会2020年9月 純文学

"裏メ"へのコメント 24

  • 投稿者 | 2020-09-23 18:04

    は?ナニコレ最高なの?(最高評価)

    • 投稿者 | 2020-09-23 19:55

      ありがとうございます。なるべく酷い感じにしようと思って奮起しました。

      著者
  • 投稿者 | 2020-09-24 19:00

    軽妙な口語体や「買った。二つ買った」、「白目だ。多恵の白目だ」などのリズミカルな文、「真ん中のし、なんてぱっと見、し、と見えない感じで」というフレーズが印象に残りました。全体的に疾走感あふれる文章だなあと思いました。

    • 投稿者 | 2020-09-24 19:28

      ありがとうございます。合評会というものに参加したくて、とにかく何でもいいから話書かなきゃって思って書いたんで、そういう感じが出たのかも知れません。あと文字数を増やしたくて、そういう無駄な足掻きが出たのかもしれません。

      著者
  • 投稿者 | 2020-09-25 22:19

    なんかよくわかんないけど、疾走感があって好きです。幻し魚食べてみたいなあ。気絶しない程度に気持ち良くなれるようにお湯の量を調整して。

    • 投稿者 | 2020-09-27 19:59

      ありがとうございます。疾走感だけですね。疾走感だけで何とかしようとしました。はい。

      著者
  • 投稿者 | 2020-09-25 23:15

    幻し魚よりも主人公の下衆さが印象に残ります。

    • 投稿者 | 2020-09-27 19:59

      ありがとうございます。破滅派だし、そういうのの方がいいのかなと思いまして。はい。

      著者
  • 投稿者 | 2020-09-25 23:22

    すみません。何の話なのかよく分かりませんでした。合評会の席で解説お願いします。
    寿がき●のラーメンは好きなので、こういう危ない商品が販売されないことを願うばかりです。

    • 投稿者 | 2020-09-27 20:01

      ありがとうございます。私もよくわかりませんww
      それに解説も特には無いんですよね。ただまぼろしの魚って言われたから、こうしただけで。

      著者
  • 投稿者 | 2020-09-25 23:57

    「自分のせいで自動ドアが開閉を繰り返すのも構わず」っていう描写が妙に頭に残りましたね。「幻し魚」も好きです。
    初見ではちょっと???だったのですが、深く考えたら負け系の文章かなと思って何も考えずに読み直したらめっちゃ笑えたのでよかったです。

    • 投稿者 | 2020-09-27 20:03

      ありがとうございます。近所のファミマで入り口近くに推し商品を詰んで置いてて、そこですか?ってなってて。そこで人が止まったら、後ろにいた時ぶつかるぞ。自動ドアも開閉を繰り返すぞ。って思ってて。ええ。それがうまく作用したのではないかと思います。

      著者
  • 編集者 | 2020-09-26 15:17

    他人に中毒?を勧めそれを利用する辺りが中々である。中毒麺もこう使われれば本望なんじゃないだろうか。うーむ凄い。

    • 投稿者 | 2020-09-27 20:05

      ありがとうございます。まぼろしの魚で思いつくのがこれしかなくて。はい。後は合評会という事でいつもよりも少しくらいちゃんとしたりした方がいいなと思いまして。はい。

      著者
  • 投稿者 | 2020-09-26 18:43

    主人公のクズっぷりと食生活の貧しさがリンクしている。食は人なりといったところか。失神間際でも自撮りを欠かさないあたり、SNS文化の業を見た気がした。

    • 投稿者 | 2020-09-27 20:07

      ありがとうございます。私は何も考えていなかったんですけど、その人のクズっぷりと食生活がリンクしているっていいですね。それありますね。合評会の解説の席というものに参加する際、それ使いますね。ありがとうございます。

      著者
  • 投稿者 | 2020-09-26 22:40

    どんな酷い食い物なんだろうと思ってみてましたが、なるほどそういう用途でもあったのか、と。
    しかし主人公が酷いですね、、本当に酷い(褒め言葉)

  • 投稿者 | 2020-09-27 20:09

    ありがとうございます。まぼろしの魚ってなんだろう?辛辛魚?あ、それの上位機種を作って話にしたらいいかって思って。それでこういう話になりました。酷いですねw
    私も酷いと思います。あと諏訪さんフォローありがとうございます。

    著者
  • 投稿者 | 2020-09-27 21:16

    このお話を読んだ何日後かにわかめ7倍のわかめラーメン食べたんですけど、インスタントラーメン界隈ってどうしてこういう極端なもの売るんでしょうね。「謎肉」があるんだから「幻し魚」があってもおかしくないと思いますし、なんだかそういう意味で変にリアルで面白かったです。

  • 投稿者 | 2020-09-28 12:03

    ありがとうございます。まあ、どうせ他の人がちゃんとした魚の事に関しては書くだろうから、そういう意味で私は極振りで他の人が書かないことで書けばいいかと思って、こうなりました。辛辛魚には感謝ですね。はい。あってくれてありがとう辛辛魚。

    著者
  • 投稿者 | 2020-09-28 18:22

    東京ばな奈は伏字じゃないのに寿がきやと辛辛魚は伏字になるのか、等読みながらいろいろ突っ込んでしまいましたが、考えたら負けなのかなと思いました。
    辛辛魚は存じ上げなかったのでググりました。確かに肛門痛そうですね。
    歯茎を見て興奮するシーンが好きです。

  • 投稿者 | 2020-09-28 19:13

    ありがとうございます。考えない方がいいと思います。私もわかりませんし。あと歯茎を見るというシーンではもう少し咀嚼したものの残骸などが出せたらよかったんですけどね。面倒でした。すいませんでした。

    著者
  • 投稿者 | 2020-09-30 19:43

    合評会に自身も書いてなくて会議に参加していなかったが、とにかく、この筆者の文体のリズムは内容がどうのこうのではなく、中毒性が有る故、いつまでも破滅派で読みたい。
    タイミング的に合評で押せなくて自身を悔やんでいる。

    • 投稿者 | 2020-10-01 10:00

      ありがとうございます。そう言ってもらえるだけで感謝です。ただあれですね。飽きられないように色々と手を返え品を変えやらないとあれですね。一回落としたりして、それから再びまた来たこういうのみたいな感じに出来るように精進的な事をします。もしかしたら面倒でしないかもしれないんですけども。

      著者
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