台風予報と養生テープ

小林TKG

小説

1,463文字

どうでもいいかもしれないんですけど、小説家になろうの新規小説作成で書いて、出来たらこちらにコピペして投下してます。

ちょっと週末の為にと買い出しに行くと、そのスーパーの一角に、
『いざという時に備えましょう』
と、防災グッズをたくさん並べている棚があった。ついこないだまで、その棚にはハンディ扇風機とか、冷却シートとか氷枕が並んでいたんだけどなあ。

なるほどなあ。八月が終わったらもう夏も終わりなんだなあ。まだ暑いけどなあ。
「ガンガンだけど」
直射日光とか。あと台風とかも来てるって言うし。
しかし以前知り合いに聞いた話だけど、八月が終わるとスイカなんかも売れなくなるんだという。まだ暑くてもスイカというのは八月までというイメージがあるからだとか。

「無情ってこういう事なのかな?」
まあでも、きっと夏はもう終わったんだろうな。まだ暑いけど。でも終わったんだ。無情だろうと何だろうと終わりは終わり。夏終わり。また来年。

防災グッズの棚には養生テープが置いてあった。
「あー」
去年とかだったかな?Twitterとかなんかで、強力な台風接近時家の窓ガラスに養生テープを貼りましょうていうのが話題になったよな。窓にXの形に貼っておけば、いいとかそういうのを見た覚えがある。割れた時に飛散を防ぐんだったか、あるいは強度が増して割れないようになるのかは覚えていない。でも、とにかく養生テープを張っておけってタイムラインで流れていたのは覚えてる。

「・・・」
棚には養生テープが残り五つあった。それを全部買い物かごに入れた。赤青緑黄色白、全部入れた。

それとあと週末用の食べ物を買って、全部マイバックに入れて家に帰った。
「ただいま」
家のドアを開けるとすぐ向こうにリビングが見える。しかしそこに見えるはずの坂下君の姿が見えなかった。

「え!ちょっと!」
家を出る時は頭が見えていたのに。確認していたのに。

急いでリビングに入ると坂下君はいた。キッチンシンクの下の方に居た。
「なんだ」
あーびっくりした。よかったー。場所が移動していただけだった。そらそうか。だってあんなにぎゅうぎゅうに縛ったんだもん。両手両足。あと体にもたくさん絡ませたもんね。ほどけないように。逃げられないように。ネットでたくさん見て勉強したんだもん。頑張ったんだもん。

「ううん、うんんん」
口にもウエスを詰めて縛ってたので、坂下君はしゃべれないみたいだった。

「何言ってるの?」
わからないよ。でも大丈夫。大丈夫だからね。

「台風が来てるっていうからさ、スーパーで養生テープをたくさん買ってきたよ」
今このタイミングだったら、たくさん買ってもおかしいと思われないでしょう?

「赤―」
マイバックから一つずつ出して坂下君に見せた。

その後、坂下君を彼が元居たリビングのフローリングの床が傷つかないビニールシートの所まで引きずって行って、その上でたくさん養生テープを張り付けた。

一個一個50メートルもあるからね。たくさん貼れるね。

そうして彼の事をデコレーションしたクリスマスツリーみたいにしたら、最後に目に養生テープを何重にもして貼り付けた。真っ暗になるように。視界が真っ暗闇になるように何重にもして。

そうして坂下君を固定して動けなくした。

熱中症対策にコップに水を注いでそれを彼の口めがけて垂らした。ごぼごぼがぼがぼと溺れたみたいな声が聞こえた。

「今日はグリーンカレーにするからね」
坂下君。おいしくなるように頑張るからね私。

ごぼごぼがぼがぼ。

坂下君はもがいている。でももう動けない。たくさん養生テープを貼ったもん。グルグル巻きにしたもん。

ごぼごぼがぼがぼ。

坂下君はもがいている。溺れたみたいになってるの?

その様が、その姿がとても愛おしい。

2020年9月6日公開

© 2020 小林TKG

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