んでもって俺の極めてアンバランスな精神の上で成り立ってる弾丸みてぇな性質をした儚い何かがゆれ動いてる。魂に同化させた煌めきの美しい側面に見た聖なる映像が心と連結してゲリラ豪雨を呼び込む雨ごいをしている俺であると想像してみる。いつかは死にたいのだという願望を持った俺に必要なのは、神聖なる神がその手で下す裁きでしかねぇ。俺は糞みてぇな心で、腐敗した心でただれた心で殺人を行いてぇ。女の白く滑らかな陽光を反射する肌を唇を使って愛撫してぇ。んでもってこれって掛けがえのない代用品でもない紛れもない愛情じゃね、って確信してるわけ。んで魂と透明な鎖で繋がった精神を引きちぎりたいが、鎖はとても硬くて切っても切り離せねぇのよ。心は美しくも繊細な均衡を保ちつつ、輝く胃液の混じったゲロが出るような一面を保持してる。けど心って結構アンバランスだったりするから、俺は感情の変化を大切にしていきてぇ。眼下に広がる精神という名の底の見えない深淵、つまりは無意識に思考を接続するためのケーブルが欲しい。やっぱ生きてくにはそれが必要不可欠じゃん、って気づいちまった俺の精神の回路を狂わせてるおぞましい影だけの生き物にも似た闇に飲みこまれそうで、恐ろしさより不可思議な感情の方が勝ってて、それって好奇心ってやつじゃね、って何度目かの悟りを得ちまった。これから何かが俺の身に降りかかるのだとしたら、俺はそれを受け入れ前進するっていう強固な心も持ち合わせてる。一種の快楽をおぼえた俺ちゃんの腐り果ててどうにもならなくなった人生を再生させるための気力はまだあるつもりだが、真相は闇に葬り去られたまま。やがて俺の意識は潜在意識という広大な波の激しい海に沈みこみ、海中で泳ぐようにしてイカした魚雷みてぇに突き進む。もう面倒な工程は省いて、俺の胸に空いた空洞に吹きこむ風をそのまま静かに脈打つ心臓で感じてぇだけなんだ。その生命をつかさどる体内で活発に鼓動する臓器は鮮血をポンプみてぇに細い血管に送りだして絶えず活動を続けている。稼働する細胞組織の集合体である心臓が俺ちゃんを生かし、精神と思考を糸で結びつけてるから、それが解けないように懸命に頭を使い、膨大な量のアイディアを自分の物にしようとしちゃう。俺はみっともねぇ糞食らえな人間だし、恥知らずな奴だから人前で平気で屁をこける。俺はプライドを捨てて自分の内面で蠢く艶やかな身体をした小さな虫のような感情を大切にしていきてぇ。そんな俺は頭がイッてるって訳で、思考が飛んでるって訳で、結論を述べると狂ってるのかもしれねぇ。精神は淀んで退廃的な人生という重りにより蝕まれたので、俺は涙ながらに生きていた過去もあるけど、まぁそんな時はウイスキーを飲む。ボウモアっていうイカしたデザインの華やかで奥ゆきのある香りをした堪らなく素晴らしい一品の酒。アルコール度数四十パーセントの鼻とノドを突きぬけるような刺激に、陶酔した感覚になっちゃって、俺は凄まじく嬉しくて、生きている証を残すだなんて真似はせず、ただむさぼる様にウイスキーを浴びつづける日々を楽しみながら過ごしてるのよねん。精神の決壊が俺の望んでいた、憧れていた事なのか、って疑問をふり払うために思考のスピードを上げて上げて世界の果てまで辿りつきてぇ。憧憬って言葉の意味は知らねぇけど、それって素敵かつ優しい言葉じゃね、って想像上で羽ばたく白い鳥をまぶたの裏側に浮かび上がらせて思う。柔らかな襞、女性器のイソギンチャクにも似た襞にも似てる美しい言葉だ。精神は軽やかに跳躍し、着地点にある風でゆらめく旗をなぎ倒す。そうだ、これが俺の求めていた悟りという名の境地なんだ、って結論に行きつくにはやや早計なのかねぇ。誰も答えてくれないから、俺はその命題を奥の奥の奥にまで突きつめて考えなきゃいけない。まぁウイスキーは最高に美味くて超刺激的な味が蛇のように長い生き物じみた舌に絡まって、味覚神経にゆっくりと浸透していき、俺をこれ以上ないくらい満足させて、一時的ではあるが、紛れもない幸福を与えてくれるんだ。もうマジでこのウイスキーっていう神がかった飲み物は、輝く半透明の宝石にも似た至福の存在で、俺の精神に作用する安定剤と興奮剤を同時に内包した琥珀色の液体なんだ。瓶の中で波のように揺らめきながら内部で光を乱反射させてるとろみのある液に、自分の精神を重ね合わせるって馬鹿げた妄想に憑りつかれる。マジで夢遊病者みてぇな、白昼夢でも見てるみてぇな、現実感が遠のく感じに、俺の頭のネジは勢いよく外れてどっかに吹っ飛んでいきやがる。ウイスキーの味、香り、その美しい色に、俺は五感を使ってそれらの感覚を感じとると、陶酔してしまう。これこそが俺の求めていた最高の精神に作用をおよぼす薬なんだ、錠剤の代わりなんだ、と認識しちゃって繊細な心は麻痺するようにして、穏やかな眠りにつきそうになるものの、俺は意識を現実へと何とかきわどい所で引き戻した。太陽から濡れたようなヌメリとした粘液じみた光線が凄まじい速度で地上にとどき、俺の膜の張った眼球を射抜く。光を直視したという視神経の微弱な刺激により、俺は涙を流しそうになる。あの透明なしょっぱい滴はガラス細工のような眼球から滲みでてくる。俺の精神を浄化させるために一筋の涙が流れ頬をつたい、アゴを通過し、ゆっくりとじらす様にして床に落下する。カーテンは開け放たれたままで、窓から透過された無邪気そうな獰猛な太陽から吐きだされた光が室内で戯れてる。光は部屋中を乱反射し、優しく壁や床をテーブルを淡く照らし、その幼子のような性質を持つ無垢な光輝を部屋中に塗りたくる。精神とアルコールによる酩酊効果は密接に、男女の全裸の絡み合いのごとく結びついている。心は怠惰な日々により研磨され細く鋭く尖っていき、徐々に俺の人体を疲弊させていく。俺の体内で活動する様々な臓器、つまり肺や、胃や、肝臓、そして一番注目すべき心臓がすり減っていく気分だ。細胞が集まって滑らかな感触がする臓器を作り上げるという自然的な、でも奇跡に近いこの事象に俺は幸福を感じているハズなんだけど、幸せと呼ぶには客観的に見てほど遠い生活をしている。俺は服を一枚一枚、脱いでいき、全裸になって日光浴をしようとする。まず汗の染みこんで黄ばんだ、元は雪原のごとく白かった綺麗なTシャツ、次に腰に巻きつけられた硬いがしなやかな革のベルト、それから下着を脱いで靴下も取り払う。見事全裸になった俺は、自由がこの胸に満ちていくのだというゆるやかな錯覚を感じた気がしたけど、それは儚い蜃気楼のように意識から遠のき、完全に消えてしまった。全裸になった俺の精神状態はというと、まぁ素晴らしく開放的じゃね、ってところ。目の前にうず高く積まれた労働という名の拷問から解放された俺は、今は自室にこもり自由を謳歌していた。でもそれは本当の自由なのか自分でも分からず戸惑ってすらいたから、今日この日に全裸になって薄汚い皮膚をさらしながら日の光を浴びたのは、俺にとって良かったのかもしれない。疲労した俺の心と身体は少しずつ本来の快活さを取りもどしてきた。激しく脈動し始めた心臓の音が、どこか鐘の音にも似ているという感想が頭の中で渦を巻きながら脳の皺に浸透していく。脳細胞から抽出された意識が例えるなら砂漠で輝くオアシスみてぇな安らぎに満ちた場所に深く深く沈みこんでいく。まどろみを覚えて、俺は少し眠くなり、空想上のオアシスの草むらで眠りたくなった。広大な砂漠に肌に、突き刺さるような狂暴な光、それを遮るための木陰で光合成したながら呼吸してる木々と温かな眠りにつきたい。そうすりゃすり減った精神は段階的に回復していくと予想している俺は、まだ人生を楽観視してるだけなのかもしれねぇ。俺と人生をすり寄せて、白く濁った糊という概念で包みこみ、接着させたい。俺は狂おしいほど女を抱きたい過去があったけど、今は性欲も落ちついてきて、今では不能の不感症になり下がった。でも女のケツを追うという衝動が霧みたく消失したので、かなり楽に日々を過ごしている。あの身を焦がすような灼熱の情欲に捉われていた時はきつかったから、自分で自分を慰めるだなんて情けない真似しなくちゃならなかった。でも今ではウイスキーとタバコがあれば他に何もいらねぇって感じて、今日も生きてる。アメスピ、ラッキーストライク、ショートホープ、ハイライト、ロングピース、様々な銘柄のタバコをはしごして、その濃厚で深くずっしりとした煙の香りと味を堪能する俺は、己の額に架空の銃を突きつけて引きがねを引き、透明な弾丸で頭蓋を射抜くと骨の破片が飛散する、なんて馬鹿げた妄想をしながらタバコを吸いまくる。ああ、ウイスキーとタバコは寄りそい合っていて、互いに互いを深く理解している愛情たっぷりの嗜好品だ。この二つの嗜好品が俺の精神を素晴らしく軽くしてくれてる。性欲抜きの愛情を感じるにはまだまだ俺は若すぎるが、青年ってわけでもねぇ、もう中年という域に差しかかってる。地面にくさびで打ち込まれた俺の足から流れでる血液が美しい色彩をしているのだ、という妄想に捉われて、俺は自分の内側に隠しもってる獣のような危険な欲望を胸のなかに仕舞ったままにしておきたいと思った。今はショートホープを吸いながら、ウイスキーを飲んでいて、フィルターに着香されたハチミツの香りを鼻から吸引し、その引力に引きずりこまれるようにして鼻腔に流れこむ匂いが鼻毛に染みこんでいきやがる。ボウモアってウイスキーは潮の香りを感じさせるから、甘いタバコと良く合うので、比較的やさしい甘味のあるアメスピ・ライトを次に吸おうと考えてる。このタバコはたっぷり六分も持つ無添加で、自然本来の葉の香りと味が楽しめるタバコで、俺はこいつを重宝してる。仕事のない俺の暇な時間を埋めるための役割を果たしてるこのタバコにはいつも頭が上がらねぇ。頭が上がらねぇってか、うだつが上がらね俺の日々に嫌気が差すのは一体いつ頃なんだろう。でも俺はこの惰性にまみれた日々に友情の念を抱いてるし、日々の方も俺を友達だって思ってくれてるハズなんだ。俺の部屋には観葉植物が置いてあり、葉先がナイフのように鋭く尖っている。この植物は緑色というただ一色でありながらも俺の心をやわらかく包みこむようにして癒してくれる。母が赤子を抱くのにも似た愛情たっぷりの抱擁に、ザラついた精神の産毛の生えた表面がゆっくりと滑らかになっていく。観葉植物を眺めているだけで和んでしまう俺は、少しだけ単純かつ無垢な性格をしてるのかもしれねぇ。俺はただ植物に一方的に与えられているだけではなく、水という草木にとっては聖なる飲み物をお返ししちゃってるんだよん。つまり植物に精神があるのならば、俺の心と植物の心は密接に絡み合うようにして繋がってるってのは明白な事実だ。俺にとっての水はウイスキーってわけで、ストレートでワイルドターキーをあおった後でサントリーオールドを氷を入れたグラスに注ぐ。俺はウイスキーはストレートに限る、氷なんか入れちまったら時の経過と共にあの濃厚さが損なわれてしまう、と信じていたけど、サントリーオールドは別だ。このウイスキーはグラスの中で丸い氷をまわし、少しうすめて飲むのが最高に美味い。脳がとろけるような美味な液体がノドを軽やかに滑走し、胃に到達してウイスキーにの内部に眠る熱、つまりアルコールが胃の粘膜に染みこんでいくのを感じながら酔いつぶれるまで飲むのが俺の生活の一部になっちゃってる。俺は朝と昼と夜にアルコールを大量に摂取してるから、一日中酔ってるってわけで、つまり俺はアル中なのかもしれないね、マジでほんとんとこ。酔っぱらいながらバロウズの爆発した切符を読むと、マジでその膨大な支離滅裂な文章の羅列に密接に精神をつなぎ合わせられる。ヤク中の書いた文章をアル中の俺が読む、ってのはうってつけってじゃん。アルコールに思考が飛んでた俺は観葉植物に意識を集中させるため、その艶やかな白い毛が生えた尖った葉に視線を向ける。この植物は花を咲かせたりしねぇ、その不完全さが俺自身の微妙な精神の動きと重なるんだ。んでもって観葉植物がもしお喋りできたら、俺と楽しく会話をしてくれるくらいの親密度はあるって信じたいね。でもこいつはどんな性格をしてるんだろうか、って疑問が夜空に浮かんだ月から吊るされて宙ぶらりん、って今は昼だから月は見えねぇし、空は真っ青だし、太陽はギラついた輝きを地上にそそいでるしで、嫌になるくらい外の世界は明るい。俺は薄暗い部屋で一人ウイスキーを味わいながら読書するか観葉植物をながめるのが好きな腐れ変態ヤロウだって自覚はあるのよん。太陽は俺の精神を大きな穴を開けるほど蝕んで、俺を自殺へと追い込みやがるから、俺はそれに抗うためにウイスキーを浴びるほど飲んで、思考を麻痺させなきゃならねぇ。手のなかで爆発するように輝くグラスに入った琥珀色の液体が、救世主となって白馬に乗りながら俺を救ってくれる。まだ大人になってねぇのかな、俺の心は弱いままなのかな、外の世界では生きていけないのかな、働くなんて俺には無理! って結論に毎日毎日たっしてる俺ちゃんはクソニートマシーン。クソニートマシーンって歌をアイドルという一つの記号じみた少女に歌って欲しい。歌詞は俺が書いて印税が入ったら俺は高級で希少なウイスキーを飲み放題って妄想が頭んなかに浮かんでは消え、浮かんでは消えてく。でもまぁ高い酒もいいけど、手ごろな値段の酒も抜群にウメェし、何だかんだ言ってみたところで安ウイスキーでも満足できちゃう健気な俺ちゃん。優しい俺ちゃんは愛すべき観葉植物にウイスキーを注いでやった。これでこいつも酔っぱらうかなって想像しちゃった俺は、これから毎日ウイスキーを観葉植物に与えてやろうと思う。まぁそしたらいつかは枯れて萎れて、その静かに息をする生命も死んじゃうか、って不安が脳裏を一瞬だけ、ほんの一瞬だけよぎっちゃう。その時はその時、命ってのは儚くて死ぬ時ってのは結構あっけないのかもしれない。それは植物や動物だけに当てはまる真理だけじゃなくて、もちろん人間にも適用されるって知ってるのよねん。だから俺はいつ死んでも悔いのない生き方をしてぇ、って一種の悟りを得ちゃったの。でもこれってみんながみんな考えてる事のハズだから、俺のオリジナリティのある思考ってわけでもねぇ。とりあえず俺はゆっくりと時間が経過していくのを本を読みながら感じていた。ゆるやかに流れる時の優しい肌触りに、アルコールで酩酊した俺の意識が触れて、その時間の柔らかさと残酷さに、悲しみと喜びの入り混じった気持になっちゃう。んで爆発した切符を酔っぱらいながら読んでる俺は軽く混乱して、何度も読書を中断しようとしたが、その文章に引きこまれてなかなか止め時が見つからねぇ。バロウズってのは本当にイカれててイカした老人だったな、って今は亡き作家様に思いをはせる。奴はホモだったけど、俺は紛れもない女が好きな性的には異常ではない一人の男、つまらねぇ男だって結論づけちゃうにはやや早計。この歪な手のなかに一体何を収められるんだろう、って未来を映像、として思いうかべようとすると、脳に痛みが走り、無理やり思考が途切れるから、俺は思考ではなく感情で物事に接する。その方が楽だから、思考は邪魔だから、俺のチンポコを萎えさせる病魔みてぇなもんだから、ウイスキーを脳に打ちこんで思考に対する抗体を身につけてぇ。んでもってクソニートマシーンである俺ちゃんは爆発した切符を読破し、次にバロウズのソフトマシーンに取りかかろうとして、床に積まれた本の中からソフトマシーンを探そうとする。クソニートマシーンの俺がソフトマシーンを読むって何て滑稽なんだ、これは失笑、いや嘲笑、いやいや爆笑ものだね。アルコールを摂取まくったから酔いは強烈に頭に回ってきてんだけど、酔いつぶれるほどでもねぇ。脳が頭蓋という壁を透明になって通過し、天井を抜けて、雲で覆われた空に吸いこまれるようにして消えていってしまう、と形容したら適切なほど、俺は快楽を全身で得てしまってる。んで脳に刻まれた無数の皺につまった知識を、銀色に輝くピンセットでつまみ取って、その美麗な形状をした知識という概念をこの澄んだ目で見てみてぇんだ。知識と言っても俺は勉強が嫌いだから、爪に薄汚い垢がつまるようにして、脳につめ込まれてるのは膨大な量の活字だけだ。活字は俺を心躍らせ、物語りの中に意識を沈みこませて、つまりは没頭させ、別の世界へと俺を誘ってくれるんだ。読書をしてる時は現実を忘れ虚構という名の様々な世界へと旅立てる。それは胸躍る体験であり、他には代用のきかないダイアモンドじみた希少な経験でもあるのだ、と俺ちゃん無意識で分かっちゃってるんだね。酒とタバコと読書が、俺を世界の果てまで連れて行ってくれるし、砂浜のような景観をした涙がでるような美しい情景の場所で発光してる昆虫が空中を軽やかに舞ってるんだ。その昆虫の羽根は芸術的なほど微細でイカした模様で彩られていて、それを見ていると脳天を突きぬけるような快楽が腹の底から噴出するようにしてみなぎってくる。昆虫は俺のカサついて毛の生えた剝きだしの腕に止まり、羽根を休めてまた大空を滑空する鳥のように飛び立とうとスキをうかがってる。抜け目ねぇ一匹の昆虫は光輝きながら静かに呼吸し、俺の脈打つ血管のなかを流れる血液の音に聞き耳をたててるみてぇだ。暗闇のなかで息をしている鳴き声も上げない昆虫には愛しさを覚えちまう。俺は虫なんか無慈悲に殺すような冷酷な顔つきをしてるけど、実際には生き物を愛する繊細な心の人間だ。だからこの可愛らしい昆虫は俺の腕にその矮小な身をあずけて、気がねなくたっぷりと時間を取って休んでられるんだろう。その昆虫を目を凝らしてもっと注意深く観察してみると、蛾の一種なんじゃねぇのかなって思った。毛皮じみた羽根には無数の産毛が生えていて、その先端から燐光がしたたり落ちて月の光と混ざって、溶け合ってひとつの光のしずくとなって砂の絨毯に落下して、線香花火が持ち手から千切れて残り火が消えるようにして消失した。でも蛾の身体から発生する燐光は次から次へと姿をあらわし、月の光だけで照らされていた薄暗い砂浜に優しい光を与える。その光景はあまりにも幻想的じゃね、って感じで、俺は感動して胸が打ち震えそうだった。感傷的な気持ちになっちゃった俺の酔いは深まる一方で、明日、目覚めたら二日酔いで嘔吐しそうだな、と嫌な予感がしてた。でもまぁコーヒーでも飲めばいつもの様に酔いも次第に覚めてくか、って感じで次の瞬間に安堵して目まぐるしく変わっていく自分の感情に驚きを隠せねぇ僕ちゃんの人生には活字という逃げ場があると自覚して、俺はこの惰性の日々に身をまかせてるだけ。何を言ってんのか自分でも分からねぇ、って酔っぱらい過ぎてるから思考が上手くまとまらねぇのか。思考と現実をつなぐ一本の虹色をした細い糸は意識というナイフによって切断されたが、新しい糸を使ってまた結び合わせる。その作業が、外科医が難しい手術をするように、とてつもなく神経を使う作業だった。でもそのおかげもあって、発光する昆虫と浜辺の景色は俺の頭ん中からゆっくりと遠のき、やがて夕方になった自室の様子が鮮明に見て取れるようになった。良かった良かった、今日も俺ちゃん無事に蜃気楼じみた妄想の世界から艶やかな羽をした鳥が巣にもどるように、無事、現実へと舞いもどってこれた。ウイスキーを飲みながら本の世界へ没入してるとよく起きる現象なんだが、俺ちゃんだけなのかねぇ、他の読書家の人々はこんな経験ないんだろうか。まぁドラッグでもキメてるわけじゃねぇから、俺はいつも妄想で幻覚じみた情景を見れるだけなんだ。夕暮れの光が室内に浸入してきて、ぶわっ室内に広がり、壁を淡いオレンジ色の染めて、その美しい光景に見惚れている俺の手のなかにはウイスキーの残骸が入った透明なグラスが握られていて、その滑らかなガラスの感触を手のひらで味わうようにして力を込めた。ガラスに綺麗な曲線のような亀裂が入るまで強く強く握ろうとしたが、俺は大切なグラスを割ったりしたくねぇ、ってのはこの部屋にはガラス製のコップは他にないからだ。ウイスキーを茶碗で飲むだなんて情緒のない真似したくねぇし、ウイスキーは透明なグラスで光を透かしながらその琥珀色の内部で乱反射する光輝をながめながら、ゆっくりとグラスを揺らすのが最高に楽しい鑑賞の仕方ってわけ。メーカーズマークも飲もうとして、あの血液じみた赤い封蝋の半身を取りのぞいて蓋を回し、そのかぐわしき香気を鼻から吸いこむ。焦がした樽のなかに眠るバニラのような、かすかにフルーツを思わせるような華やかな香りに、俺は昇天寸前。俺の魂が階段を昇るように空気の膜を転がりながら昇っていく、ってそしたら俺ちゃん死んじゃうじゃん。まぁいつ死んでも悔いのない人生を歩んでる僕ちゃんは、いま何者かがこのボロアパートの一室である僕ちゃんの部屋の扉に体当たりして、それを破壊し、、内部に浸入してきて侵入者である暴漢がそのゴツイ手のなかに握ったナイフの尖った先端で俺の腹の皮膚をやぶり、柔らかな肉に刃先を食いこませ、内臓にまで刀身が達して、俺は苦痛に顔をゆがめながらも床に倒れ伏し、安らかな眠りにつく様にしてやがて痛みも薄らぎ、まぶたを閉じて優しげな死の世界に意識が沈みこんでいくのを感じながら絶命するのも悪くはねぇな。俺は死んだふりをするために床に横になって手足を伸ばして、窓から差しこむ皮膚を包みこみ毛穴から浸透して体内の血液と溶け合ってしまうかのような程よい温度の光を感じてた。かつてないほど穏やかな気分だ。夕暮れは俺の心を満たしてくれる嗜好品の一つ、って表現したら大げさなのかねぇ。つっても俺ちゃんは朝より昼が好きだし、昼より夕方が好きだし、夕方より夜が好きだし、夜より夜中が好きだ。まぁ何て言うかさぁ、あの猛禽類の口から覗く狂暴そうな鋭利な牙の数々を思わせるギラついたすべてを飲みこんでその内部で溶かしてしまう灼熱の太陽より冷ややかだが、安心できる優しい月の光が好きなんだ。だから空には太陽なんかいらねぇ、あの銀色の丸い月だけあればいいのだ、と自分に言い聞かせる。夜は雲ひとつなく澄んでた方が月見にはうってつけだから、俺ちゃん夜に降る雨は大嫌い。でもでも昼間に降る雨は愛してるかもしれねぇ。なぜなら淀んで薄汚れた分厚い雲が青空を覆いつくして太陽の強烈な光を遮ってるから目に優しいんだもん。細い雨のしずくが地面に落下する音楽を聴きながら、俺は暴発するようなエネルギーが自分のなかに宿ってるんだって感じ、その内面と外面の差に楽しみを見出しちゃうのさ。雨が降りそそぎ熱せられたアスファルトを冷やしていき外の温度が下がっていく。俺はそんな日にはもちろん外出もせずタバコを吸いながら雨の音に耳を傾け、アイスコーヒーを猫がミルクを舐めるようにして少しずつ飲んでいく。もちろん砂糖も牛乳も入れないブラックコーヒーの苦味に舌つづみを打っちゃ俺ちゃんの神経は過敏で先端は刃物のように尖ってるのだと想像してみる。想像は俺のように自由だから親近感を覚えちまうのさ。コーヒーに含まれたカフェインにより脳から膨大な量の快感物質が洪水のごとく押しよせてきて、俺の想像、ってか妄想をはかどらせる。
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