アレルギー

小林TKG

小説

2,085文字

これまた久々なんですけど、でもまあ、こんな感じでやってます。あとまたまた純文学にしてごめんなさい。

家々の並びのはずれ、その先はもう広大な秋ヶ瀬公園、あれ彩湖道満公園だったか?どっちだったっけ?という所まで行くと、そこに家、住宅の最後の一軒がある。その日はその場所まで散歩をした。昼間は暑くなって湿気もひどくなるから、とても活動する気、散歩する気なんて起きなくなるから。だから朝の涼しいうちに。
「ひゅー・・・ひゅー」
それでもまあ汗は噴き出したし、呼吸は怪しくなったけど。おでこから汗が延々と噴き出してきた。

ただとにかく朝のうちに散歩した。よかった。このルートは人気もないのか他の人もあまり歩いていなかった。それがよかった。空はすでに濃い青色になりつつあり、公園緑地の木々の向こうからは龍の巣とか思えない雲が出ていた。

「さて・・・」
じゃあ帰りましょう。お風呂に入らないととてもじゃないが何一つ活動できそうにない。そう思って180℃ターンをした後に自宅に向かって歩き出すと、家々の並びのはずれ。最後の家のドアが開き、バタンと大きな音を発して乱暴に開き、アジの開きよりもガバっと開いて、
「ごめんなざいごめんなざい」
と泣きながら子供が出てきた。

年の頃はいくつぐらいだろう?6歳とかそれくらいだろうか?

その後ドアはすぐに閉まってしまい、外にその子供だけが取り残された。

「ごめんなざいごめんなざい」
子供はいつまでもそう言って泣いていた。

ああ、自分にもああいう時代があったなあ。ある種の子供というのは大人の厳しさやら優しさやらを軽んじる傾向にあると思う。だって私自身そうだったし。まあそう言っても今の自分が過去のそれらを全部取り払ってその分優れた人間になったかと言えばそんな訳はないけど。

「おつです」
家の前で両手で顔を覆ってさめざめと泣いてる子供。まるで雨に濡れた惨めったらしい猫や犬みたいな子供。自分にもそういう時期があったんです。多かれ少なかれ誰もそういう時期を体験しているもんです。今はどうだか知らないですけど。DVとかサイウルでしょうからね。スーパー売る際でしょうからね。でもまあ、お疲れ様です。親って言っても人間ですからね。大きくなった子供にすぎませんからね。だから子供は子供なりに気を使えないといけないですね。合掌。気が付かれないように合掌してそのまま家に帰った。子供の服には戦隊ヒーローの絵が描かれていた。あの子供、スーパー泣いてたけど戦隊ヒーローと全然違うなあ。帰り道そんな事を思った。

次の日の朝、またそのルートで散歩に行くと昨日と同じところに子供がいた。昨日と同じ服で玄関の所に座っていた。
「・・・」
さすがにもう泣いてはいなかったけど、ただでも、え?まさか昨日からずっとそこにいるわけじゃないよね?

昨日よりも日に焼けてるような気がする。昨日よりも憔悴しているような気がする。昨日よりも汚れているような気がする。

いや、まさか。

いやいやまさか。

「嘘嘘、嘘だろう」
自分用に持っていた小銭を使って自販機で見たこともないラベルのスポーツドリンクを買って、そっと子供のいる家の玄関の所に置いた。

それでそのまま子供が見つけたかどうかも確認せずにすぐに背を向けて家に帰った。だって自分は余計なことをしたんじゃないかと思ったし、してるんじゃないかと思ったし、子供が見ていたらどうしようと思ったし、あともしもこれで自分が面倒ごとに巻き込まれたらどうする?子供が見てるか不安だったし、あと、その家の人が見ていたらどうする?どうしよう。警察に通報するべきなんだろうか?いや、全然違うとかそういう事になるかもしれないし。全然なんでもない事だったのかもしれないし。たまたま二日連続でその子がそこに居ただけの話で。逆に警察に通報されてるかもしれない。
「そうなったらどうしよう?」
その家の親と、全然関係ない他人の自分。どちらが怪しい?そんなの決まってる。言うまでもない。聞くまでもない。

その日の夕方突然に信じられないほどの大雨が降った。

こんな大雨長くは続かないと思っていた通り、その雨は二時間ほどですっかり何事もなかったみたいに止んでしまった。スマホにもヤフーとかライブドアとか、あとiコンシェルとかからもガンガン通知が来ていた。荒川の増水危険です。近づかないでくださいみたいなの。

次の日の朝も散歩に出た。ただ少しルートは代えた。でもどうしてもあの家の事が、子供の事が気になって、違う場所から、反対車線の家の角から例の家を覗いた。

子供はもう家の外にはいなかった。
「ああ、よかった」
やっぱりたまたまだったんだよ。あーよかった警察に電話とかしないで。

あー、マジ危ねえ。危なかったー。

家に帰ってパソコンを起動し、ヤフーニュースを眺めていると地域の欄にさいたま市のニュースがあった。

小学4年生男の子、雨で増水した川で溺れて死ぬ

そういうニュースだった。それを見てあの家とあの子供の事を思い浮かべた。

数日後、その子供の母親が逮捕されたというニュースが出た。

小学4年生にしては体重も軽かったので、捜査が行われたらしかった。母親は犯行を認めており犯行理由にアレルギーだった書いてあった。

アレルギー。

アレルギーかあ。

2020年9月5日公開

© 2020 小林TKG

読み終えたらレビューしてください

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

この機能は廃止予定です。

タグ

この投稿にはまだ誰もタグをつけていません。ぜひ最初のタグをつけてください!

タグをつける

タグ付け機能は会員限定です。ログインまたは新規登録をしてください。

作者がつけたタグ

純文学

"アレルギー"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る