ディジョンマスタード

小林TKG

小説

2,018文字

普段使ってるメモ帳に伊藤ロックダウンって書いてあったので、使いました。

GOTO鳥貴族、鳥貴族錬金術っていうのをニュースで知って、
「おお、マジかよ」
ってなって、さっそく知り合いの伊藤ロックダウンとやりに行った。北戸田に鳥貴族がある。本当は月一で飲みに行くいつもの連中と行きたかった鳥貴族。しかしコロナの影響で延び延びになってる。何せ自分以外には家庭もある。無理強いは出来ない。でもしかし抜け駆けごめん。あとこんな形で初鳥貴族、鳥貴族ごめん。

でも、とにかく錬金術師になりたくて。ハガレンとか読んでたし。パチンコとか行かなくても錬金術師になる方法があるんだと知ったらそれはもうね。行く。行くしかない。
「どうして急に鳥貴なんだ」
詳細は伊藤ロックダウンには言わなかった。ただ、一人でそのような事をするのが怖かったから、好奇の目で見られる可能性があったから。あるいはパない憎しみでもって対応されるかもしれないから。そんなの怖いじゃん。憎しみの表面張力の最後の一滴になったら泣いちゃう。ぴえんしちゃう。

「鳥貴に行かなくても、うまいのだったら」
「いいんだいいんだ」
知らなくていいんだ。お前は知らないでいいんだ。貴族に対して唾を吐きかけに行くんだ。平民以下、下賤の者が、メンタル穢●&●人(差別用語)みたいな穢れた精神の持ち主が頑張ってる鳥貴に無粋、不純を働きに行くんだ。でも、
それでも、
錬金術師になれるならなりたい。
錬金術師になりたい。
その一心。
だからその当時の行き過ぎた錬金術師も邪法を用いたんだ。それでも錬金術師になれるならなりたい。私は錬金術師になりたい。肩書欲しい。そういう肩書。ツイッターとかの自己紹介文に書きたいもん。あとなろうでも書けるし、アメブロでも書けるし、破滅派でも書けるし。書ける。何だったらそれを引っ提げてカクヨムとかノベルアップに行ってもいい。自己紹介文に錬金術師ですって。かっこいい。
禁忌を犯しても錬金術師になりたい。魂が穢れても錬金術師になりたい。地獄に堕ちるんだとしても錬金術師になりたい。名実ともにきったねえうんこのくっせえゲロがけになっても錬金術師になりたい。錬金術師ってかっこいいし。錬金術師って四文字熟語かっこいいし。

着いた。
「ここか・・・」
さながらその日の鳥貴族は、魔王の居城のように見えた。風が吹き荒れていたのもそういう印象作りに影響を及ぼしているだろう。
「それはチャンポンの影響だな」
伊藤ロックダウンが物憂げに前髪をはらってる私に言った。
「え?リンガーハットの話?」
なんで?なんで急に?
「ほら、14号の」
人造人間は18号だろ。一生そうなんだよ。一生。もう一生そうなんだよ。人造人間は18号なんだよ。一生涯そうなんだよ。違うって言う奴はかっこつけてんだよ。他人と違う自分をアピールしてるんだよ。
「っていうか台風はチャンホンだから」

ただ、とにかく鳥貴族に行った。そして錬金術を使った。

「もう帰るのか」
伊藤がうだうだ言ってきたが、とにかく出た。その後美女木JCTの所の安楽亭に行って二人で割り勘で焼肉食べた。
「べらぼう!」
最底辺の事をした後の焼肉ビールは最高です。ホルモンのコリコリがいつもよりコリコリです。三割増しでコリコリ。リッコリコ。

更にその後、
「もうホルモンだけ食べたい。塩ホルモンだけ食べたい!」
と、ロヂャースの向かいの美女木酒場情熱ホルモンにも行った。

そんでリッコリコをたくさん食べてお酒をがぶがぶ飲んだ。それはもうコリコリ。リッコリコ。もう自分のTwitterのアカウント名とかホルモンリコリ子とかにしようか考えたりするくらい堪能した。いひひひひ、いひっひいっひひい。ってなった。

 

「・・・頭いてえ」
割れる。いやもう割れたかも。割れて中身出てるかも。目を覚ますと伊藤ロックダウンの家だった。年中出しっぱなしにしてる炬燵に足突っ込んで天板でよだれ垂らして気絶してた。

伊藤がいない。
「お、目覚ましたか、ご飯だぞ」
声がして後ろを見ると、伊藤が居た。
「悟飯?」
ピッコロさーん!の人?

あと、伊藤は手にハトを持っていた。ハト。鳥。ハト。鳩。西口公園とかにいる奴。

「早く来いよ」
そう言うとぼんやりしてる私を放って台所に戻り、皿にのってる鶏の香味焼きみたいなのの上でバサバサしてるハトをふんってやった。

ふん!って。

ばさばさばさふん!って。

「な、何してんだ、え!」
思わず垂れてる涎も拭わず言ってた。
「何って、ピジョンマスタードだよ。これであとはからし足したらピジョンマスタードになるんだ。うまいぞ。お前鳥好きなんだろ」

「いや・・・」

ディジョンマスタードだろ。

伊藤さあ、耳で覚えるとか、ちょっと見ただけで確信しちゃうようなところあるよ?思い込みが激しいっていうの?いや私もそうだけど。

あと、伊藤ロックダウンのふん!によって室内が急激にハト臭くなってゲロ吐いた。昨日食べたモツが出てきて、内臓出たのかと思った。錬金術師のあれかと思った。代償かと。兄ちゃんの手足が取れたみたいなの。

2020年10月7日公開

© 2020 小林TKG

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"ディジョンマスタード"へのコメント 2

  • 投稿者 | 2020-10-07 20:07

    ユーモアのセンスが素晴らしいと思います。然も多分、この筆者は浮世で何かの大失態やら大依存していたのだろうなあ? なる悲哀を感じさせるのでズシンと軽妙洒脱の中身に重みが有るとも思われます。

    • 投稿者 | 2020-10-08 08:01

      ありがとうございます。大失態とか大依存とかいいですね。長らく他者との関わりを半ば絶って、自分の書いたものだけ吐き出してまた飲んでっていうのを繰り返してやっていたのが、もしかしたら山谷さんのいうユーモアのセンスになってるのかもしれません(ユーモアとか軽妙洒脱とか今まで言われたことないのでわかりませんけども)。でもありがとうございます。軽妙洒脱ってタトゥー彫ろうかとさえ思います。それくらいうれしいです。

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