ニール・クラークは自身のブログ “A Concerning Trend” で、パンデミックの初期から剽窃や明らかなボットと思われる投稿が増えていたこと、そして、2022年の終わりから別の急増(スパイク)があったと指摘している。これはChat GPTというAIツールが注目を集めた時期と同一だ。クラークは自身の分析の詳細を明かしていないが、以下の点においてこれは特殊な事例ではないことを明かしている。

  • 公募を受け付けており、なおかつ一定の原稿料を支払われるサイトが狙われている。
  • いまは明らかな剽窃などがあるため人力で見抜けているが、それは徐々に困難になっている。
  • 特定の地域からの投稿に集中しており、バイアスがかかることを避けるために公表を控えている。

これはある意味で小説投稿サイトの危機であり、クラークス・ワールドをはじめとする「寄稿を受け付け、編集者による下読みとギャラを支払うことで、質の高い短編を世に送り出す」システムへのハックである。クラークは自身のブログ記事を次のように締めくくっている。

もし界隈がこの状況に対応する方法を見つけられなければ、何もかもダメになり始めます。返答の時間はさらに長くなり、投稿へのフィードバックを提供している私の同僚がどうなってしまうのかなど、考えたくもありません。いや、これは短編小説の死ではない(そんな戯言はやめてくれ)、しかし、事態は複雑になりそうです。

それにしても、SFマガジンであるクラークス・ワールドがよりによってAI生成小説スパムの犠牲になるというのも、なんとも皮肉な話だ。破滅派もまた小説サイトではあるので、こうした事態をどのおうにして乗り越えていくのか、状況を見守りたい。

ちなみに、クラークス・ワールドには日本の作品を多く翻訳しているKamei Toshiya氏による翻訳作品(梶舟景司”The Book Reader”)も掲載されたことがある。