榊英雄、園子音らの映画監督による性加害が相次いだことを受け、映画原作者でもある作家たちが「原作者として映画業界の性暴力・性加害の撲滅を求めます。」という声明を発表した。文責は山内マリコと柚木麻子で、賛同する作家も続々と集まっている。

それを受け、twitter上ではハッシュタグ #文学界に性暴力のない土壌を作りたい も誕生した。文学界でも映画業界を他山の石とせず、ということだろう。

発端は深澤潮が15年近く前に受けたセクハラ被害に関する一年前のツイートを再掲したのに対し、山崎ナオコーラが反応。山崎がかつて文學界に寄稿した古井由吉によるセクハラについてのエセーが「そういうもんでしょ」的な軽い扱いを受けたことを回想しつつ、深澤に対して連帯を申し出た形になる。それに桜庭一樹が追随した。

ハッシュタグでは賛同の声が続いており、それにともなって告発も増えている。

そもそも作家というのはフリーランスの弱い立場であり、無名作家ともなるとほぼ人権がないというのが筆者の実感でもある。性加害に限らず、ハラスメント的な環境に陥りやすい。また、これは作家に限らずノルマを抱えた編集者も同様で、著名作家に対してハラスメントを受けた立場の弱い編集者も多いことだろう。被害のパターンとしては色々と考えられる。

  • 有名作家 → 無名作家
  • 有名編集者 → 無名作家
  • 有名作家 → 弱小編集者

映画界での性加害が監督やプロデューサーという人事権を持つ者によることからも、権力がハラスメントの発生源となっていることは間違いない。また、映画業界・出版業界というクリエイター界隈では、そうしたハラスメントによる「圧」こそが成果物のクオリティを高めるという素朴な信仰が根付いているため、告発者に対して「その程度のことで騒ぐな」という冷淡な矮小化作用が働くことも多い。こうした業界構造は変わっていかなければならないだろう。経営側も、新人作家に対して高圧的に振る舞う編集者や有名作家を「リスク」として捉える必要がある。

複数の業界で仕事をしてきた筆者からすると、出版業界とくに文芸の世界(それも特に純文学)というのは信じられないぐらい野蛮である。こんなに高圧的な人々で構成される業界があるのか、という驚きがある。

筆者もまた、この声明に対して連帯の意を示すとともに、昭和生まれの中年男性として、また、書籍を出版する企業の代表として、ハラスメントを行なっていないか自らを顧みるようにしたい。