今月は4誌が発売。

新潮2016年10月号

  • 宮本輝「野の春」が新連載。ライフワークとなっている自伝的小説『流転の海』の第九部にあたり、この部をもって完結を迎えることとなる。
  • 第47回新潮新人賞・高橋有機子の受賞第一作「似非りんご味」が掲載。
  • ほかに創作は古井由吉、多和田葉子、星野智幸などがラインナップされている。
  • 評論では、長谷川郁夫「編集者 漱石」の連載がスタート。日本近代文学最初の編集者は夏目漱石であるという視点から文学史に切り込んでいく。
  • 加藤典洋「シン・ゴジラ論(ネタバレ注意)」も注目の評論だ。
  • 7月に逝去した翻訳家・柳瀬尚紀の追悼特集として、柳瀬訳によるスウィフト「ガリヴァー旅行記」の冒頭部を掲載。また、吉増剛造が追悼文を寄せている。

文學界2016年10月号

  • 特集は「藝能春秋」。日本の伝統芸能の現在にスポットを当て、各界の代表する若手演者をピックアップしている。インタビューに坂東巳之助(歌舞伎)、神田松之丞(講談)、藤間勘十郎(日本舞踊)、寄稿に茂山童司(狂言)、立川吉笑(落語)、玉川太福(浪曲)、安田登(能)など。篠山紀信による市川海老蔵の写真も。
  • 創作では宮内悠介「カブールの園」。日系三世女性を主人公にした110枚の作品となっている。
  • ほか、高樹のぶ子、荻野アンナ、岸川真、水原涼らの作品も。
  • 「現在進行形の文学史!」と題されたブロックでは、石原慎太郎×斎藤環、柄谷行人×高澤秀次の2つの対談が掲載されている。

群像2016年10月号

  • 今号は創刊70周年記念号のため、新作小説はなし。
  • 特集は「群像短篇名作選」と題し、70年の歴史から選りすぐった54篇の短篇を掲載。取り上げられているのは、初出順に以下の54作家。三島由紀夫/太宰治/原民喜/大岡昇平/安岡章太郎/庄野潤三/吉行淳之介/圓地文子/室生犀星/島尾敏雄/倉橋由美子/正宗白鳥/佐多稲子/森茉莉/深沢七郎/小沼丹/河野多惠子/瀬戸内晴美/三浦哲郎/吉村昭/富岡多恵子/林京子/藤枝静男/小島信夫/大江健三郎/後藤明生/大庭みな子/丸谷才一/津島佑子/色川武大/山田詠美/多和田葉子/笙野頼子/小川国夫/稲葉真弓/保坂和志/辻原登/黒井千次/村田喜代子/角田光代/古井由吉/小川洋子/竹西寛子/堀江敏幸/町田康/松浦寿輝/本谷有希子/川上未映子/長野まゆみ/筒井康隆/津村記久子/滝口悠生/藤野可織/川上弘美
  • 上記54篇のラインナップをもとにした座談会「群像70年の短篇名作を読む」 も掲載。参加者、辻原 登、三浦雅士、川村湊、中条省平、堀江敏幸の5名。
  • 70年の歴史を辿る評論として、清水良典「「群像」70年の轍」および坪内祐三「「群像」で辿る〈追悼〉の文学史」も。

すばる2016年10月号

  • 特集は「海外文学の実り」。現代日本を代表する翻訳家たちがフェイバリットな作品をピックアップし、翻訳したうえ自ら解説している。登場する翻訳家はくぼたのぞみ、鴻巣友季子、岸本佐知子、飯野友幸、柴田元幸の5名。中でもユニークなのは、飯野友幸が挙げたトム・ハンクスのエッセイ「おれはトム。タイプライターで書くのが好き。わかる?」だろう。
  • 小説は椎名誠「かいちゅうじるこ」、二瓶哲也「酩酊のあいまに」の2作。
  • 谷川俊太郎による書き下ろしの詩「近作十四行詩」も。
  • 四方田犬彦「詩の約束」が今号から連載開始。
  • 木村元彦×星野智幸「想像力で橋を架ける」、原田ひ香×鈴木謙介「《失踪》という社会の余白」の2つの対談も掲載。
  • なぜかクリント・イーストウッドのインタビューも載っている。

以上、2016年9月発売の4誌について概観をお伝えした。