明治の文豪、森鴎外(1862~1922年)の代表作『舞姫』の自筆原稿が、森鴎外記念館(東京都文京区)で開催中の企画展「舞姫-恋する近代小説」で初公開されている。

『舞姫』の自筆原稿は長らく個人所蔵されていたものを昨年、学校法人跡見学園が約4600万円で購入。今回初めて一般公開された。会場には『舞姫』とともに、鴎外がドイツ留学後に同国を舞台に執筆した「ドイツ3部作」の一つとされる『文づかひ』(大阪樟蔭女子大所蔵)の自筆原稿も並ぶ。同展は9月25日まで。自筆原稿の公開は9月11日まで。

公開終了まであとわずかとなった現在は、『舞姫』の主人公・太田豊太郎が通りがかった寺院の前で、泣いている少女・エリスと出会う場面のページを公開中。

現在刊行されている『舞姫』では「声を呑みつつ泣くひとりの少女あるを見たり。年は十六七あるべし。」とあるが、実は原稿に最初に書かれていたエリスの年齢は違っているという。たくさんの訂正の中でも、最も重要な訂正の一つ。鴎外がなぜ、エリスの年齢を変えてしまったのか、そしてはじめは何歳だったのか。あなたの目でそれを確認して欲しい。

いったい相沢はどんな言葉でエリスを狂わせたのか。そして舞姫はどのように狂っていったのか。これは『舞姫』を読めば誰もが知りたいと思い、妄想するところ。該当のページは公開されていないようであるが、たくさんの訂正があるのならば、なにかしら妄想のヒントにはなるかもしれない。高校生の時に『舞姫』読んで以来、今でも相沢を憎んでいるあなたは何を思うだろうか。「わが脳裡に一点の彼を憎むこころ今日までも残れりけり。」

同記念館では、今年没後100年を迎える夏目漱石のミニ企画展示「夏目漱石―「うつくしい本」への探求―」も同時開催中。今後も多くの企画を開催予定。