今月は4誌が発売。

新潮 2018年1月号

  • トップ扱いの長篇は、ドキュメンタリーの名手として知られるNHKディレクター国分拓による長篇ノンフィクション「ノモレ 第一部」。アマゾンの先住民を追った物語で、2号連続掲載となる。文芸誌の目玉にノンフィクションをもってくるあたりは、いかにも新潮らしい采配といえるか。
  • 創作に田中慎弥(連作)、藤野可織(連作)、柴崎友香、円城塔。草間彌生の詩と絵画による新作も掲載。
  • 矢作俊彦「ビッグ・スヌーズ」が今号より連載開始。
  • 特別原稿として、東浩紀、杉本博司、平野啓一郎、水村美苗がそれぞれ寄稿している。
  • 特集はナボコフ。「初訳書き出しコレクション」と題して9作品を紹介。若島正による評論もと、多和田葉子×沼野充義による対談「言葉を旅する移民作家」も。

文學界 2018年1月号

  • 「珠玉の小説館」と題して7名の創作が掲載。多和田葉子、松浦寿輝、西村賢太、青山七恵、小山田浩子、滝口悠生、水原涼というラインナップ。
  • 特集は「映画の新しい波」。ジャン=ピエール・レオーへのインタビュー、黒沢清×篠崎誠による対談、矢橋透の評論などが掲載。一部の層から猛烈な支持を受けそうなのは、綿矢りさ×松岡茉優の対談「「こじらせ女子」の突破力」だろうか。
  • 評論に小山鉄郎「又吉直樹論――創造と破壊の神々」。
  • 特別エッセイとして金井美恵子が寄稿。
  • 通常のエッセイには小倉拓也、切通理作、餅井アンナ、高橋久美子。
  • 連載陣では、シンガーソングライター柴田聡子のコラム「きれぎれのハミング」が連載を開始した。

群像 2018年1月号

  • 古川日出男「おおきな森」が今号より新連載。公式サイトに書かれた概要を見てもまったく意味がわからないので、おそらく面白い作品なのだろう。
  • 「歳時創作シリーズ」と題した読み切り掌編特集が今号からスタート。年間を通じて季節おりおりの掌編を掲載していく予定で、タイトルはいずれも七十二候からとられている。第1回は瀬戸内寂聴「麋角解」、絲山秋子「雉始雊」、伊坂幸太郎「鶏始乳」。
  • 短篇に西村賢太。
  • 対談は2題。瀬戸内寂聴×佐藤愛子という重鎮2人による「愛情がないと書けない」と、吉増剛造×ヴァレリー・アフェナシエフによる「不完全の美しさ」。
  • 野間文芸賞・野間文芸新人賞の受賞のことばと選評も。
  • エッセイに蓮實重彦、笙野頼子、若竹千佐子、佐藤雄一、佐藤文香、松本花奈。そして昨年小説家デビューしたAV女優の紗倉まなもついに五大文芸誌デビュー。

すばる 2018年1月号

  • 創作は中長篇に沼田真佑と椎名誠。短篇に上田岳弘、円城塔、高橋源一郎、多和田葉子、津村記久子、橋本治、星野智幸、山崎ナオコーラ。
  • 特集は「対話からはじまる」と題し対談を一挙掲載。石川健治+姜尚中による対談では天皇退位と憲法のありかたをめぐって考察がおこなわれている。ほか森田真生+岡本啓、竹信三恵子+田中俊之、デボラ・E・リップシュタット+木村草太、夏目房之介+周冷飛という組み合わせ。
  • 評論に浜崎洋介「観念的な、あまりに観念的な」。戦後批評の「弱さ」について論じたもので、江藤淳、吉本隆明、柄谷行人、加藤典洋の過去の批評が再検証される。
  • エッセイに海猫沢めろん、華雪。
  • 連載陣では、横山悠太による唐詩和訓がスタート。

以上、2017年12月発売の4誌について概観をお伝えした。