今月は4誌が発売。

新潮2017年1月号

  • トップ扱いの創作は上田岳弘の長篇「塔と重力」。震災により生き埋めになった男が主人公の話。
  • 島田雅彦の連載小説「黎明期の母」が今号で完結。全12回。
  • ほか創作には、高村薫、円城塔、滝口悠生、岡田利規。
  • 特別原稿として寄せられた阿部和重の「かいぶつたちのいた夏」は、ポケモンGOについてのエセー。
  • 同じく特別原稿として、水村美苗のナンパについてのエセーと星野智幸の大相撲についてのエセーも。
  • 荒木経惟「老冲乃花」は花をモチーフとした連作写真。
  • 加賀乙彦は10月に逝去した高井有一への追悼文を寄稿。
  • 評論では尾崎真理子が谷川俊太郎について書いている(150枚)。
  • 今号の目玉は、昭和の大女優・原節子が遺した自筆エセー「手帖抄」全文。1946年に地方雑誌に発表されたものだったが、研究者やファンにもその存在を知られておらず、このたび偶然発見されたものだ。
  • 保坂和志×山下澄人による対談「世界を変えるために」も。

文學界2017年1月号

  • 特集は『「世界文学遺産」への招待』。筒井康隆へのインタビュー、柄谷行人×佐藤優による坂口安吾についての対談、亀山郁夫×中村文則によるドストエフスキーについての対談で構成されている。
  • 今号では『新年 小説の饗宴』と銘打ち、創作も充実。執筆陣は曽根綾子、三木卓、保坂和志、青来有一、松浦寿輝、吉村萬壱、長嶋有、いしいしんじ、松尾スズキの9名。保坂和志は相変わらず猫の話のようだ。
  • エセーに津村節子、岩松了、鴻池朋子。
  • 文學界での高井有一追悼文は、黒井千次が寄稿。
  • 若松英輔の連載評論「美しい花 小林秀雄」が今号で最終回を迎えた。

群像2017年1月号

  • トップ扱いの創作は、長嶋有の長篇「もう生まれたくない」(300枚)。3件の訃報をめぐる記憶についての小説だという。
  • 第69回野間文芸賞(堀江敏幸)と第38回野間文芸新人賞(戌井昭人)の結果、受賞の言葉、選評が掲載。受賞者による記念対談もあり、堀江敏幸は町田康と、戌井昭人は島田雅彦とそれぞれ対談している。
  • 特集は『五〇人が考える「美しい日本語」』。小説家、詩人、批評家、さらにはさだまさしまで、日本語を扱う50人の表現者たちがめいめいの思う「美しい日本語」について語っている。
  • こちらでも高井有一追悼特集。坂上弘と、またしても加賀乙彦が寄稿。

すばる2017年1月号

  • 特集は2017年にちなんで『17』。小川洋子、角田光代、高村薫、谷川俊太郎、中村文則、林京子、平野啓一郎、古川日出男、堀江敏幸、村田喜代子、本谷有希子、森内俊雄、吉本ばななの14名が自身の17歳のころについてエセーを書いている。
  • 小林秀雄賞を受賞した気鋭の数学者・森田真生による「数をめぐる十七の断章」にも期待。
  • 青山七恵×滝口悠生×上田岳弘による鼎談では、「ライ麦畑でつかまえて」「悲しみよこんにちは」といった”十七歳小説”について語り合う。
  • ちょうど100年前の1917年についての座談も。水村美苗と小森陽一は漱石の死について、亀山郁夫と島田雅彦と前田和泉はロシア革命以後100年の文学について語っている。
  • 高橋弘希の小説「踏切の向こう」も掲載。
  • ほか、特集外の創作として辻仁成、辻原登、吉村萬壱、綿矢りさ。
  • 評論では高澤秀次が津島佑子と中上健次について論じている。

以上、2016年12月発売の4誌について概観をお伝えした。