音楽

黒川祐希

752文字

詩です。書くと穏やかな気持ちになります。

ハロウィン
ディワリ
イースター

 

世界で催されるあらゆるお祭りは
あなたの細胞を祝福するためにあるらしい

いつもここで祈っています

あなたが祈りを歌える日まで

 

「緑の園が眩しかった」

 

音楽が流れてきたとき
人生がべっとり絡まって
コーンポタージュ風味の耽美が
単純な亀裂に染み込んだ

 

「みて、空が赤くなってる」

 

発酵した青春のなかで
君は物理学者に焦がれていたね
熟れた林檎を片手に持って
渋々と昼を眺めていた

 

そこに一匹の猫がいて
人間の営為を見下していたね
僕は猫のまなこから初めて
薄緑という色彩を得たんだよ

 

ハロウィン ディワリ イースター
日ごとに行われるさまざまな祭典は
僕たちの官能の余暇にあって
存在しない夏の暗譜を
可視化することも可能だという

 

音楽が流れるとき
すべてが終わって目をあけた
さながら僕たちの人生は逆再生したモーツァルトのようで
不快のなかでたしかな煌めきが喜んでいた

 

喜んでいたんだ
黄色が好きになると
同時に君は大人になって
警戒色の僕を探しだした
しかし

 

黒を辞めた僕は、すでに
鳥にしか見えない色を帯び始め
いつしか哺乳類の後頭部に
薄緑色の弾丸を撃つ日がきたんだ

 

ハロウィン
ディワリ
イースター

 

祭りの名を唱えたとき 僕が人間になった日に
すべては再び
音楽が流れ始めたとき

 

薄緑色の弾丸を撃ち
安息から生まれてきた僕が
オニオンスープ風味の讃美歌になったとき
口もとの汚れを拭いてくれるのは
あなた以外ほかにいなかった

 

さあ
朝日を祭ってごらん
あなたを襲う幻聴が
艶やかな旋律を伴いますように

 

僕はここで祈っています
あなたが祈りを歌える日まで
僕がここで歌っています
あなたを祈るようにいつも

2021年3月19日公開

© 2021 黒川祐希

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