僕は羊です
体は細長くて赤茶色
よくあなたの家のトイレにいます
山羊は隣町の床屋で
羊飼いに飼われていて
ときおりごみ収集車とともに
あなたの寝顔を覗きにきます
あなたが眠っているあいだ
世界がおかしな風になっているのを
反映するのが夢なのです
遠い国の祭りでは
赤や緑のベルベットが
華やかな囃子に急かされて
寝室のなかを行き交っています
あなたが下痢に襲われて
大便器に腰かけるとき
目やにで汚れた目に僕が映ることはありません
僕はずっとあなたを見ているのに
あなたは起きていながらも夢のなかにいるようです
なんのためにコーヒーを飲むのか
考えたことはないでしょう
それは日中の覚醒を促すためでなく
僕とのコンタクトの機会をうかがっているのですよ
僕は、偏在する羊
平等に存在する生き物として
いつもあなたを見守っています
優しさが持つ怪しい思惑や
嘘のための修辞学を知っています
"羊"へのコメント 0件