数字

黒川祐希

591文字

詩です。眠れないときに書くようにしています。

朝に眠り
僕は起きる
白く繊細な病理が
この部屋を覆ってしまう前に

 

僕は食べて
欠け続ける
忘却に気づいた頃にはもう
それらは名付けようのない地平にいる

 

一滴の涙を流すことにすら
これほどのカロリーを消費することを
一息に飲んだアルコールが
微かに心拍を増幅させることを
一眼みた君の横顔が
オレンジの夕暮れに染まっていたことを
どうして僕はこの場になって
やっと思い出せたんだろう

死や

 

死や、

それに続く重たすぎる過程のことを
道の端々に落とした僕の名前のことを
僕の名前を呼んでくれた君の名前のことを
君の名前を呼んであげた僕の名前のことも
どうして僕は今になって
思い出してしまったんだろう

 

澄み切った網膜には悲しみしか映らないことや
愛は愛を信じるものにしか授けられないことや
眠れない春を薬で解決することは誤りであることも
僕はいつからか完全に
放棄してしまっていた問題だというのに

 

壁を見つめ
考えていた
未完で終わったあらゆる事柄の壊れ具合や
部屋に鳴り続けるエアコンの音を
庭先でひっそりと群れをなす夜行性の昆虫たちも
僕がイヤホンを外さないことには
何も始まらない物事だというのに

 

白い朝焼けが街を焼き払うまで
青々と燃え尽きてしまうすべての紙片のために
僕は底から突き上げる悲しみを歌うことに専念し
ようやく生を享受することができる
ひとりの、痩せ細った男だというのに

2021年2月21日公開

© 2021 黒川祐希

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