季節の改造

黒川祐希

370文字

詩です。珍しく日が出ている時間帯に書きました。

文字でなく
詩篇を透かす午前の光が
世界と繋がっていることを知った

 

猫と
ワイングラスから香る果実酒が
季節の改造を祝福している

 

僕でなく
街を走る温かな風が
希望に繋がっていることを

 

そこに
微かな自殺の予感が孕まれていることも

 

春と記憶とは
双方向的な関係にあることが

 

揺らぎのなかで生まれる僕があって
愛のなかで生まれる揺らぎがある

 

静けさを失った夜の酔いと
居酒屋から生まれる雑多な会話
そこに息を吹きかける鮮やかな髪の女は
肌が小麦色に焼けた詩人だった

 

鳥が運ぶ異国への憧憬は
すぐ手もとにあるアメリカの嗜好品の上に潰れ
いま僕は三十円の憂鬱に
風情のない愛撫を重ねている

 

季節を改造した日

工場で腕を落とした男があった
名付けることで生まれる命があり
名付けにより欠落する生命があった

2021年3月14日公開

© 2021 黒川祐希

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