混詩「自尊心の歴史」 2018.11.6

混詩集 (第9話)

Juan.B

1,444文字

※親愛なる「ふつーの日本人」達へ捧ぐ

自尊心などというものは

みんなが誇らしげになるような

そんなアクティブでポジティブで

エレガントでアッパーなものではなく

まったくどんよりとして光り輝かず

犬のクソと同じ形をしているかもしれない

だが誰もその可能性に目を向けない

 

いつまでも自分の心と体と諸々が

神社の初詣や七夕の短冊で維持できると思い込んでいる

おお素晴らしい人たちのために

ある人々は卑屈さをよおく示してくれた

そして対価は未だない

 

おお標本の家系に生まれたがために

医者ときたら俺のケツを叩いて無理やり息をさせた

心臓など止まってしまえば良かった

こんなぎらつく悪質な太陽を誇る国など

熱中症の後遺症に人を踏みつけるなどあるものか

 

 

母親の腹から取り出され息が止まっているあいだ俺は考えた

もし皆手足や目鼻口性器がバラバラにつき

肌や髪や爪や歯や性器の色だって綺麗な虹からではなく百万人のゲロから適当に選んだ様に豊富で

いやせめてバベルの塔の時にカミサマが優しかったなら

それだけで諸問題の九割は解決以前に生じなかっただろうと

 

最古の殺人の遺体は俺と同じだっただろうか

単に快楽を追求したら殺されたソドムとゴモラの人々は俺と同じだっただろうか

哲学を理解しないバルバロイは俺と同じだっただろうか

棍棒を持った審問官を前にしたユダヤ人は俺と同じだっただろうか

子どもから石を投げられるズィンミーは俺と同じだっただろうか

訳も分からない連中にはぎ取られるインディオは俺と同じだっただろうか

さて身内から南蛮人に売られた日本人は俺と同じだっただろうか

美しい海岸で銃と取り換えっこされる黒人は俺と同じだっただろうか

逃げ場も無いタスマニア人は俺と同じだっただろうか

大地震を生き残ったと思ったら殺された朝鮮人は俺と同じだっただろうか

そうだレーベンスボルンで生まれさせられた混血児は俺と同じだっただろうか

そしてそれらの真逆の位置で刃物や銃を抱えた連中の自尊心はもうぎらつく太陽の様に光り輝いていた

 

俺は生まれた時からすばらしい石炭や石油だった

他人に燃料を供給してくれる

教室から役所の待合室まで

俺が座ってるだけでみんな元気になった

バスでうめいている障害者は見ていて気分が良くないが

俺はまだヒトらしいから見やすいのだと

そしてある日俺はある哀れな日本人を制圧し自尊心てやつの何たるかを実感した

 

 

時代のために差別されて殺された

おお嫌ですねえ

ああ嫌だ

怖いなあ

怖い怖い

でも今はダイジョウブ

安心してネ

君は生きてるからね

生きてるんだよ!

ナマ!

生きてるだけでも感謝しろ

分かったかこの自意識過剰のブタ

まったくお前は生きてるだけでも

文句ばかり垂れて貢献もせず

カタワどもと変わらねえよ

カタワ!

 

 

自尊心などというものは

抱きしめてくれる天使みたいに描くな

犬のクソのように描け

そして犬のクソの様な自尊心は

国や宗旨や年や地位によらず

俺やお前らそれぞれの名前だけで名付けられなければならぬ

そして互いにせめてその存在の日陰だけでも尊べた時

やっと僅かに光るのかも知れない

 

そしてこれに最初に気付くことすら嘲笑されるのを耐えている

誇っていた奴が一番最後になり威張らなかった奴が最初になるその日を待ち

ぎらつく太陽の下で泥交じりの数滴の水を眺めながら

2018年11月6日公開

作品集『混詩集 』第9話 (全10話)

© 2018 Juan.B

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