ディビジョン/ゼロ(6)

ディビジョン/ゼロ(第6話)

波野發作

小説

1,064文字

先行きは不透明。水槽も不透明。心も不透明。

〈6〉

 

路地までタクシーを入らせて、クルマを下りた。

通り雨だったので、ぼくがアパートに着く頃には晴れ上がっていた。

むあっとした湿気が肌にまとわりつく。

 

まだ日が高いが、隣のコンビニでサワーでも買って飲むことにした。

金の心配はとりあえずなくなったのだし、ゆっくり部屋探しでもしよう。

資金さえあればどうにでもなる。

 

ポストを見えると、今日も大量のDMが放り込まれていた。

ほとんどはぼく宛じゃなく、元同僚たち向けのものだ。

彼らは皆、ある日突然辞めて出て行ったので、あらゆるものがそのまま届くのだ。

 

そういえば、ローン会社からカードか何かが届くんだった。

すぐ届くのだろうか。

少し面倒な気がした。

 

部屋に戻り、ざっと見渡してみる。

そういえば、1人になってからずいぶん散らかしてきたな。

誰も来ないので、ちょっと自由に使い過ぎた。明日から片付けよう。

 

とりあえずテレビをつけて、缶チューハイを開けて飲む。

スナックの封を開けて、ひとつまみ口に放り込む。

ソファにどっかりと座り、一息ついた。

 

これで晴れて無職だ。自由の身になったわけだ。

もうデタラメな命令を聞く必要もないし、矛盾した指示を受けることもない。

積んだ積み木を壊され続けるような、不毛な業務ともおさらばだ。

 

収入は途絶えたが、元々そんなに多くはない。

次はもう少しマシな給料の会社に入ろう。休みも土日休めるところにしよう。

契約社員というのもなんだか損のようだ。正社員で探そう。

 

コンビニに寄ったときに、就職情報誌をもらってきた。

パラパラとめくってみるが、アルバイトの求人ばかりだ。

飲食のところがやたらと多い。IT系もあるが、オペレーターばかりだ。なんだか違うと思った。

 

ふと目線の先に水槽が見えた。元同僚たちが飼っていた熱帯魚の水槽だ。

魚はとっくに死んだが、水がそのままになっていた。

掃除が面倒でそのままにしてあったのだ。なんか腐ってる気もするが、そのまま置いていこう。

 

ゴミがすいぶん増えていることにも気づいた。

あとで金を請求されても面倒だから、捨てれるものは捨てておこう。

明日からやれば間に合わないこともないだろう。

 

2本目の缶チューハイを開けた。スナックも2袋目だ。

テレビは夕方のニュース番組を流していた。どうでもいい交通事故のニュースが続く。

外はまだ明るかった。

2015年7月29日公開

作品集『ディビジョン/ゼロ』第6話 (全10話)

© 2015 波野發作

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