INSECTION

応募作品

波野發作

小説

4,719文字

破滅派合評「高タンパク低カロリー」の回出陣作品。
高嶺の花にしてリケジョの星、憧れの円堂トモエの自宅に招かれた、地方出身研究者丑紅イズム青年は、玄関先でとある注文をされる。そう、ここは注文の多い料理店のような自宅だったのだ。イズム青年の運命やいかに!

インターフォンの向こうから、透き通った落ち着いた美声で、ぼくを招き入れる言葉が聞こえた。ぼくはこの部屋に進入する許可を得た。得難い権利だ。ハートのビートが8ビートから16ビートに跳ね上がる。呼吸はすでに困難だ。おそるおそるドアを開き、マンションの廊下から、聖域へと足を踏み入れる。同僚の中で、この部屋に来ることを許されたのはぼくが初めてだ。

「ごめんなさい、いまちょっと手が離せないの」

「はい」普段より少し砕けた口調が、この時間が特別であることを思い知らせてくれる。靴を脱ぎ、用意されていたスリッパに足先を入れる。入れる。入れる行動を取るたびに、魂が高鳴る。ぼくは緊張している。どこまで入れるのか。

「あ、それで、ちょっとお願いがあるのだけれど」

奥の部屋から彼女がぼくに指示を出す。職場でさんざん指示を受けているのに、今はまったく新鮮な気持ちだ。彼女は玄関脇に用意してあったアイマスクを、ぼくに装着するように言った。部屋の掃除が間に合っていないので、と言い訳をするが、そんな必要はない。ぼくは彼女のどんな理不尽な注文でも全て受け入れる覚悟がある。指示さえあれば、塩でもクリームでもなんでも全身に揉み込むだろう。マッハで。

 

円堂巴えんどうともえは、ぼくの勤める研究所の先輩研究員だ。知能体力メンタルの全てが極めて優秀であり、さらに安く見積もってもその能力の五億倍ほど美貌に恵まれている。銀河鉄道スリーナイン拉致らいざなわれそうな切れ長の目と美しい睫毛まつげ。暗闇でもぼんやり浮かび上がるのではないかと思える(いや実際浮かぶはず)クリスタル製の白い肌。実際触ったこともないし成分分析もしていないから実際はクリスタル製ではないかもしれないが、たぶんクリスタル製だ。有機物であの艶は出ない。出せない。不可能だ。円堂先輩は周囲から〈エントモ〉と呼ばれていた。ぼくもそう呼んだことがある。彼女は自然にそれを受け入れていた。キミ、釣りやるんだって? あ、はい。磯とか渓流です。 そう。出身は? 松本です。 信州のね。 そうですそうです。 いいところね。 たまにいくならですけどね。 うふふ。 ご実家は? 養蜂家です。 それでプロポリスなのね。 はい。エントモさんは? NSPナノシルクパウダー。 すごい。ご実家は確かエンドウ製薬ですよね。 まあ、そうよ。 継ぐんですか? 姉がいるから。わたしは研究だけしていたいの。 そうなんですね。 キミ、名前は? 丑紅うしくです。丑紅泉夢うしくいずむ。 イズムクンか。いい名前じゃん。 ちょっとキラっとしてますけど。 わたしは好きよ。 マジですか! ねえ、今度ウチに来ない? え? 見せたいものがあるの。 絶対行きます! 待ってる。 そんな会話が脳裏に蘇る。そしてぼくはここにいる。

 

アイマスクをすると嗅覚が鋭くなった気がする。これは香水か。ジャンヌアルテス。ハニードロップスだ。柑橘系のトップノート。エントモさんから漂う香りだろうか。脳がとろけそうだ。

「イズムクン、目隠しできたらゆっくりこっちへきて。足元は大丈夫だから」

エントモさんの声のする方へ歩きだす。声と香りのする方へ。スリッパを床に擦る音がよく聞こえる。聴覚も研ぎ澄まされているのかもしれない。前へ伸ばす手に、なにかが触れた。驚いて立ち止まると、ぼくの右手を握る彼女の左手だった。細く柔らかい指がぼくの掌を包む。まったくクリスタル製ではなかったようだ。ぼくの意識が手先に集約されていく。いまなら細胞の数でも数えられる。

「じゃあここに座っててね」
その手に曳かれるまま、そっとそこにあったイスに腰かける。目隠しはしたままだ。手を伸ばすと、コツンとなにかに当たる。硬い。これは、テーブルのようだ。テーブルの上になにか置かれている。おとなしく待とう。グラスなどあれば大変だ。両手は行儀よくひざの上に並べた。
食べ物の匂いがしている。おそらくこれから食事が振る舞われるのだろう。アイマスクはなにかサプライズの仕込みのためだ。ぼくの誕生日は来月だが、前倒しということもあり得る。つまり今、この部屋にはエントモさん以外にも何人か研究所の面々がいて、息を殺して合図を待っているのだ。そんなことがあってもいいだろう。エントモさんの自宅にぼくが誘われるなんてことよりはよほど現実的だ。そういえば先程から、部屋のあちこちでなにかの気配がする。かすかだが、物音もしている。間違いない。この部屋はぼくとエントモさんだけじゃない。

 

「今日はありがと」

「いいええ。エントモさんのお誘いを断れる男性などいませんから」
「そんなことないよ」
「いやいや」
自宅のエントモさんはとてもリラックスしているようだ。この湾岸エリアの巨大なタワーマンションの上層階。何LDKあるのか庶民にはわからない。目隠しで歩いてきた廊下はそれなりに長かった。
「今日はね、ちょっとお料理に付き合ってもらおうかなと思ったの」
「料理ですか。ぼくはあまり自炊とかしないので、たいしたことはできないですが」
「ううん。イズムクンは試食をしてくれればいいの。珍しい食材が手に入ったのだけど、ひとりで食べても楽しくなくって」
「試食ですか。嬉しいな。ぼくなんかでよかったんですか?」
「もちろん。気に入ってくれると嬉しいけれど」
「嬉しいに決まっているじゃないですか。光栄です」
あのエントモの手料理が食べられるなんて、そんな僥倖がありますか。ないですよ。ありませんよ。ラッキーですよ。生まれてよかった。

「じゃあ、食べさせてあげるから、アイマスクをしたまま、どんな料理か想像してね」

ええ! 食べさせてもらえる? なんなの。ドッキリなの? やっぱり部屋には同僚がニヤニヤしてスマホで動画撮影してYouTubeにアップとかしちゃったりしちゃったりしてるわけ? 炎上するなら部屋で二人きりがいいのだけど。

「はい、あーんして」

「あーん」

口の中にスプーンが入れられる。ざらっと何かが口の中に放り込まれた。ガサガサした食感。つぶつぶのなにか。皮がついたまま? 香りは香ばしい。歯を立ててみる。噛む。ナッツ? これはナッツだ。皮が少し残ったままのナッツ。芳醇な香り。茹でたのか、微妙な柔らかさの脇に、一部硬さが同居している。揚げているのか。揚げているから香ばしいのだ。ぼくはボリボリと咀嚼して、飲み込んだ。美味い。これは美味い。
「わかる?」
「なにかナッツ類だとは思うんですが、初めて食べた感じです」
「美味しい?」
「とても」
「そ? よかった。これはねクリケットを素揚げして岩塩を少量ふりかけたの。揚げ加減は苦労したのよ。なんどもやり直して。いいレシピになったかも」
「自分でレシピを書いたりするんですか?」
「研究者の習い性なのかな。凝り始めるとつい深みに」
「わかりますー」
完璧超人のようだったエントモさんのおちゃめな面に触れられてぼくはもうメロメロだった。この時間がいつまでも続けばいい。歯に挟まった繊維を指でこっそり取り除く。このクリケットというナッツは殻がちょっと食べにくいようだ。もう少していねいに処理したらもっと美味しいかもしれない。

「じゃあこれはどうかな」
ぼくが大口を開けると、少し硬いものが数個放り込まれた。さっきのよりもっとトゲトゲしている。エビかな? 噛むとキチン質独特の食感だ。エビだな。小エビを干したもののようだ。香りが独特なのはたぶん調味液だ。醤油じゃない。魚醤だろう。ニョクマムか。あれで煮詰めて、佃煮風か。佃島じゃないから、もっと東南アジアの島の名前でもつけてやりたい。濃い味付けだけが、軽い苦味がある。これは美味い。カリッとした殻の中にプリッとした肉が入っている。ボリ、プリ、ボリプリ。ボリボリプリ。これはなかなかくせになる食感。味付けもいい。

「美味いです。美味しいです。あとでもっと食べたいな」

「ほんと! すごい」
すごいって。
「これはファンチョン。中国の食材ね。いっぱいあるから、あとでまた出してあげる」
「ありがとうございます」
ファンチョンか。なるほど。目隠しはそういうわけか。案外可愛らしいところがある。そういうところも愛おしく感じる。ぼくはもうこの女性の虜なのかもしれない。抱きしめたいと本気で思った。香水はいつのまにかカシスの香りに変わっていた。少し彼女の体臭もわかる。それは口腔にある食材の香りとないまぜになり、脳みその少し深いところで性的な興奮に結びつく。ときおり、柔らかいものがぼくの腕に触れる。服の上からでもわかる、極上の肉塊。欲しくてたまらない。
「次はね……」
「エントモさん、目隠し外してもいいですか」
「え、ダメ。まだあるの」
「たぶんもう大丈夫ですよ」
「やだやだ。ごめんなさいもう一つだけ食べてもらうまで待って」
「わかりました。次はなんですか」
「あーんして」
「はい」
ぼくはあーんと声を上げながら大口を開けた。何が放り込まれるのか、緊張する。舌が警戒する。硬いのか。柔らかいのか。苦いのか。痛くはないか。そして、少し大ぶりの塊が一つ。息を吐き出しながら、それをくわえ込む。口の中で半回転させて、噛む。ボリボリとした食感。よく揚がっている。大きめのサワガニかなにかにバナナフレーバーをつけたというところか。フルーツの香りが懐かしい。スクンビットから出てナナへ。罰ゲームのつもりで食わされたときの衝撃のラ・フランスの味を思い出す。

「メンダー」
「あたり! 知ってるの?」
「昔ちょっと」

いや、あの在バンコク時代はかなり頻繁に食べ歩き、記憶に深く刻まれた味。日本に戻ったら食えないと思っていたから何度も屋台に足を運んだのだ。ぼくはアイマスクをとった。彼女がメンダーを盛った皿を手に、じっとぼくを見ている。少し驚いているように見えるが、果たしてどうかな。意外な結果に驚いているのか、それとも思ったより上手くコトが運んで驚いているのか。食卓には所狭しとご馳走が並べられていた。見たことのない食材もある。
「すごいですね」
「張り切っちゃった」
彼女の美形には似合わない意外なデレ顔に、もうどうしていいかわからない。許されるならいますぐかぶりつきたい。よく見ると部屋のあちこちに飼育箱が積まれている。手に入りにくい食材は自前で養殖するしかないからだ。さっきの気配はこいつらのものだったのだ。さっきのファンチョンをつまんで食べる。味付けが実に素晴らしい。
「イズムクンは食べれる人だったんだね」
「まあ、信州人ですし。多少は」
「ひょっとしたらそうかなって思って……」
「エントモさんはファーガンなんですか?」
こくり、とエントモさんは頷いた。部屋を見る限り、これはもう筋金入りのようだ。〈ファーガニズム〉を提唱したオーストラリア出身の社会学者ヴァージニア・アヴォリー博士。その著書『INSECTION 〜昆虫食で生き残れる20億人〜』は全米で大ヒット。ぼくも読んだことがある。ファーガンの本場・北米大陸ではGをパウダーにして団子にしてメープルシロップをかけ、フォルミを軽くふって酸味を効かせて食すという最先端レシピの研究も進んでいるらしい。一度試してみたいものだ。そして彼女の美貌の秘密。それはこのファーガニズムの実践だったわけである。大いに納得できることだ。

エントモさんは恥ずかしそうに目を伏せてバンブーワームのスナックをポリポリと齧っていた。なんかもう高嶺の花感はなく、なんだか簡単に手の届く乙女に見えてきた。
ぼくもメンダーを一つ齧る。やはりこれは美味い。ぼくはエントモさんの肩を引き寄せる。いつしか香水はバニラの香りに変わっていた。
「ぼくもファーガンに興味があります」
エントモさんの目が閉じられた。ぼくも目を閉じる。初めての口づけはバナナの匂いがした。

 

EOF

2019年3月15日公開

© 2019 波野發作

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"INSECTION"へのコメント 14

  • 投稿者 | 2019-03-19 21:52

    そして、こんどはぼくがエントモに目隠しをして……なんてふうにその後の展開を妄想したくなるようなラスト。注文の多い料理店風の試食会にいつのまにか参加させられるはめになった彼は、彼女の魅力におびき寄せられた、もう一匹の昆虫なのかもしれない。描写が丁寧で読みやすく、臨場感を味わえました。

    • 投稿者 | 2019-03-19 23:17

      追記。すごく五感を刺激されました!

  • 投稿者 | 2019-03-22 08:56

    面白かったです。タイトルを見たときどういう意味なんだろう?と思い、最後の方でようやくなるほどとなりました。
    文末にくる修飾が巧みで毎回クスっとなりました。ストーリーもさることながら文章にきいたスパイスも読んでいて楽しかったです。
    (ex.「〜。マッハで。」「〜。いまなら細胞の数でも数えられる。」など)

    タワマン住まいの憧れの先輩がつける香水がジャンヌアルテスという部分が少し気になりましたが(蜂蜜の匂いの香水ならマークジェイコブスやディメーターなんかも出しているので)、あえてのチープな香水というところでむしろ好感度ポイントを狙ってなのかな?とも思いました。

  • 投稿者 | 2019-03-22 17:03

    注文の多い料理店のパロディで、最初は何か残酷な結末を迎えるのだろうと構えながら読んでゆくと、いい意味で期待を裏切られ、ハッピーエンドを迎え、なんだかホッとしました。文章がかっこよくて、だからこそそれが裏切られてどん底に行くのではとハラハラしました。ただ、裏切られたのは裏切られたのですが、そうなると何だか単に美人からお食事会に呼ばれていい感じになったイケメン男の話になってしまい、逆に消化不良感というか、ああ、自分は悲惨な結末を望んでいたのだな、と思いしらされました。

  • 投稿者 | 2019-03-23 03:05

    設定といい流れといい、こなれた職人技を感じます。
    でも、もう少し切り詰めて(長い)密度を濃くしたほうが、鋭さを増したと思います。

  • 投稿者 | 2019-03-23 12:55

    エントモさんには、我もあっけなくメロメロになりました。それが全てです。

    「炎上するなら二人きり」には思わず、「うるせえ、馬鹿野郎」とツッコミたくなりました。

  • 投稿者 | 2019-03-23 15:46

    注文の多い料理店は大好きなので、やはりホラーな展開を期待してしまい、肩透かしを食らったというのが本音です。エントモさんの描写は面白いと思いました。昆虫食ネタは出るだろうなと予想していたので期待値も上がってしまっていたのかもしれません。主人公の心の声は時代性を反映していて面白かったので、高嶺の花としてエントモさんには、もう少しミステリアスで危険な描写があった方がバランス的にも物語として幅が広がる気がします。

  • 編集者 | 2019-03-23 16:16

    IGRいわて銀河鉄道線に乗ったり、岩手県花巻市内故四王山中に実在する山猫軒で実際に食べられちゃった身としては(カツカレー美味かったなあ)、他の方の通り不穏なものを予想し感じつつ読み進めたが、やはり余韻がある作品だった。異文化にまぶされたのだなあ。昆虫食はこれからのシテーボーイのナウなトレンドになるだろう。モボ、モガは銀ブラしながらミミズバーガー食おうゼ。

  • 投稿者 | 2019-03-24 00:46

    ウシクイズムっていう主義主張でもあるのかと思ってつい検索してしまったじゃないですか。虫食いズムのパロディかなと悩んだり。
    長野県出身者で養蜂の家で育ったことで女神のようなエントモさんのお目に留まったのでしょうね。エントモさんが昆虫食で美貌を保っているというくだりに説得力がありました。
    楽しく興味深く読みましたが、少々、ウシクイズム君に都合の良すぎる話かなと。

  • 投稿者 | 2019-03-24 17:12

    高嶺の花の美女とお近づきになる男性の心理描写が生々しくて、たまに「うわあきも」と思いながらも勉強になりました。
    目隠しをしたまま部屋の中にいざなわれ、嗅覚や聴覚が鋭敏になり、この部屋には同僚たちもいるに違いない、「部屋のあちこちで何かの気配がする」てとこでハラハラしました。
    「何が放り込まれるのか、緊張する。舌が警戒する。硬いのか。柔らかいのか。苦いのか。痛くはないか。」ここの表現がとてもいいと思いました、またこの文章は最初に「あーん」するとこで使ったほうが良かったかもな、とも。
    するるんと読める、心理描写の巧みな作品でした。

  • 投稿者 | 2019-03-25 16:19

    キミ、釣りやるんだって? あ、はい。磯とか渓流です。 そう。出身は? 松本です。 信州のね。 そうですそうです。 いいところね。 たまにいくならですけどね。 うふふ。 ご実家は? 養蜂家です。 それでプロポリスなのね。 はい。エントモさんは? NSPナノシルクパウダー。 すごい。ご実家は確かエンドウ製薬ですよね。 まあ、そうよ。 継ぐんですか? 姉がいるから。わたしは研究だけしていたいの。 そうなんですね。 キミ、名前は? 

    のところがテンポよくて好きだったんですが、
    初めての口づけバナナかよ!!

    となんか統一感なくて(1本100kcalあるし高たんぱく低カロリーなのか…?)
    とつっこんでしまいました。

    • 投稿者 | 2019-03-25 17:25

      あ、それはですねメンダーがそういうフルーティな味なんですね

      著者
  • 投稿者 | 2019-03-25 19:59

    父親が信州出身なので子供のころ田舎に行くとイナゴや蔵の屋根裏で飼っていたお蚕さまを食べた(食べさせられた)ことを思い出しました。後味の良い作品でした。イズムクンにとってエントモさんの料理は甘酸っぱくもあったのでしょう。

  • 投稿者 | 2019-03-26 01:50

    そもそもエントモは、どうしてイズムに目隠しをする必要があったのか? 「エントモさんのお誘いを断れる男性などいない」のだから「うちに虫食いに来ない?」と誘っても誰だってホイホイ来てしまうはずだ。自宅マンションに招くほどの信頼関係が既にあるのだからなおのことである。おそらくこれは彼女にとって二人のあいびきの前の軽い戯れのつもりなのだろう。試食の虫料理は、言うなればメインディッシュに先立つ前菜というわけだ。2品目で「なるほど。目隠しはそういうわけか」と気づいたにもかかわらず調子を合わせ続けるイズムは一見うぶなようでいて、実はオトナの機微をすみずみまで知り尽くしている手練れだ。空気を読むのが得意でない私もぜひ見習いたいところである。

    リード文がなかったら、私はこの話を読んでも「注文の多い料理店」のパロディーだと思わなかったと思う。「銀河鉄道」への言及も「料理店」の名前が先に出ているせいでつい賢治を連想してしまう。本編外で印象を操作して意表を突くための周到なミスリーディングだと感じた。

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