彼女の胸から血がしたたり落ちた。驚いて、あわてて止血しようとするも、止まらない。
この辺りはなだらかな草原でお医者さんもいない。
彼女はすべてを諦めて眠ることにした。生きることすら諦めて──。
次に彼女が起きたときにはなにもかもが変わっていた。
涼しい風が吹き、そして彼女の胸の傷は少し跡が残りながらも消えようとしていた。
彼女は彼女の少女性を決して裏切らなかった。
そこに、彼女を抱擁する父親──のような存在があらわれて、涼しい風の中木陰で、彼女を毛布でくるんだ。彼女の傷跡はどんどん癒えていった。
父親はこう言った。「どんな傷だって治らないものはないのだよ。安心しなさい。貴女には私がいる。私がいる限り、あなたはいつまででも生きることができるし、幸福に暮らすことができる」
彼女は深く頷いて父の膝の上に頭を持たせかけて目を瞑った。
目を瞑ったその中には、淡い陽だまりの光と、微かに呼吸する父の鼓動が聞こえた。
しばらく彼女はそのままでいると、心が徐々に穏やかになり、傷がたちまち癒えていくのを感じた。
「それでいい。それでいい。」父はそう言うと、彼女を起き上がらせて、手をつないで納屋の方へ向かった。
一家は羊としまうまを育てていた。それも、たくさんの。
回復した彼女はたくさんの羊を撫でまわしながら、しまうまは彼女のその様子を見ながら穏やかに優し気な目でそれを見ていた。
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