カメレオンを中国語でなんて書くか知ってる?

波野發作

ルポ

5,309文字

藤城孝輔『川の先へ雲は流れ』NovelJam藤井太洋賞獲得レポート。

NovelJamについての説明は割愛する。すでにはめにゅーでも何度も取り上げて貰っているし、今さら知らんとかどうかしてる。あなたが知ってる前提で話をする。

 

今回のNovelJamには破滅派所属者(帰属意識はひとまずおいておいて)から、2017年度合評チャンピオンである藤城孝輔と、2017年合評最終戦勝者のぼくが出向した。もっともぼくは2018年の合評ではまるでポイントを稼げていないので、まあ破滅派の魑魅魍魎百鬼夜行の中においてはほんのジェロニモさんであるが、藤城孝輔においてはガチの破滅派エースである。つまり破滅派の山田太郎が高橋文樹だとすれば、藤城孝輔は里中くんである。ぼくは岩鬼あたりかな?

そんなぼくらが奇しくもじゃんけんの結果、同じチームとして戦うことになった。これもすでにご報告させていただいたとおりだ。そして、本戦三日間の激闘の中では、戦果を得られなかったこともすでにご存知であろう。

 

NovelJamは参加者数の割に賞の多いイベントであるが、それでも全員に席があるわけではない。
ぼくのNovelJam参加は第三回の今回で三回めである。第一回は編集者で参加(高橋文樹氏も編集者で参加)。担当作家二名の両方で賞を獲得。

第二回(前回)は、デザイナー参加だったが、担当作家二名とも受賞させることができた。つまりここまで担当作家全員になんらかの賞をもぎ取らせることに成功したという実績があるのである。また、破滅派からは第二回では高橋文樹氏が著者として藤井太洋賞を獲得している。これについては私の予想通りであった(これは後出しではなく本戦時から公言している)。

というわけで、とりあえず少なくとも一応、なんだかんだでぼくはある程度NovelJamというイベントにおいては経験は多い方であるし、勘所や読み筋はあまり外していない。結果論ではあるが、ひとまずここまでは大外しはしていない、と言えるだけの実績はある。あるんだけど、やっぱり目隠しをしてくじ引きをしている感覚は最後まで拭えなかった。

第三回の今回は、もうひとりの担当作家・西河理貴の方は、米光一成賞をいただくことができた。担当の中では五人目の受賞作家となった。ひと安心である。

だがしかし、ぼくの片手はまだ空いたままなのである。本戦が終わって池袋で彼をクルマから降ろして見送ってから、ずっとなにをすればいいのか考えていた。

本人はそれほど欲望を全面に出すタイプではないのだが、ぼくは違う。自分が作家で手ぶらなのなら甘んじられるが、面倒を見た作家が手ぶらってのはどうも落ち着かない。落ち着かないので手を動かすし、動物園のクマのようにウロウロする。思いついたらなんでもやってみる。仕掛けもするし、情報も集める。

 

NovelJamには本戦直後の最優秀賞・優秀賞、審査員賞のほかに、二ヶ月後に発表される「その後の販促活動など」を対象にした「グランプリ」と、本戦当日には参加できない三人の審査員の個人賞がある。作品トータルの出来栄えを審査する「藤井太洋賞」、販促活動の面白さなどを審査する「鈴木みそ賞」、表紙のデザイン性を審査する「山田章博賞」である。そのほか特筆すべき活動が見られた作品やチームに特別賞が出ることもある。

 

グランプリは、総合評価である。これは運営から告知されている条件ではなく、ぼくの推論による戦略上の定義だ。
大きく分けて3つの要素がある。販売数、売上額、販促活動内容だ。販売数は上の下ぐらいの順位であった。決して多くはない。なぜなら1000円という戦略特価で勝負をかけたからである。その分、売上額では担当二作品がぶっちぎりツートップであった。ここまでは読みどおり。ひとまずグランプリ資格は得られたと思っている。これはまさしく破滅派諸兄姉しょけいのご協力の賜物であり、この場を借りて心より感謝申し上げる。

そして、販促活動の審査であるが、ここの戦略は悩みどころである。「一点豪華主義」か「全ジャンル網羅」かである。チームのリソースや資金は限られている。潤沢な資金があればもっとやれることはあるが、ぼくらのポケットマネーではそんなに派手なふるまいは出来ない。
誰も考えたことのない、世界初のびっくりするような特別なアクション、みたいなことをドーンと打ち上げられるのであれば「一点豪華主義」で勝ちに行けることもあったかもしれない。しかし、それができる条件ではない。であれば「全ジャンル網羅」で、こまめに、できるだけたくさんのことをやるしかない。審査員が見比べる「チームがやったことリスト」を一つでも多くの項目で埋めること。それが、唯一の突破口だと思われた。戦術的には「飽和攻撃」である。

 

結果、ぼくのチームはグランプリを獲得できた。詳しい活動内容は別途報告しているのでここでは割愛するが、講評によると、1000円という強気の価格と、その裏付けとなるあとから提供される追加のエンターテイメントという思想設計がよかったとのこと。これは投票権のない理事長の感想ではあるが、おそらく審査員票も同様の評価をしていただいたものと思われる。詳しい講評はいずれ発売になる合本で読めるので、それを待ちたい。

しかし、グランプリの受賞対象はチームメイトの作品「センコロ」の方だった。藤城孝輔の「かわくも」ではない。

 

本戦終了から、グランプリ発表までの2ヶ月。藤城孝輔の「かわくも」になんらかの賞を獲らせること、それがぼくの最大のテーマであった。
力技で獲りに行けるのは「みそ賞」と「グランプリ」だけである。作品自体を見る「藤井賞」とデザインを見る「山田賞」はすでにリリースしてあるものが対象であるから、いまさらジタバタしても始まらない。
「みそ賞」は前回は天王丸景虎氏が獲得した。チームで受賞はしているが、彼が毎日作品をプリントしたトレーナーを着用して生活したというパフォーマンスがウケたので、実質的には景虎氏単独で獲得したようなものだ。ま、一応プリントされている表紙のデザインを担当しているので、共犯者的な意味で図々しく手柄をカウントした。

今回はなにを評価するのか、まったくわからない。力技が利くところではあるが、筋が読めないので、手出ししにくいゾーンであるのだ。ただ、少なくとも前回と同じことをしても無駄なのはわかっていた。景虎氏のマネごとは出来ないし、無理にやったところでみそさんにウケるわけがない。笑ってくれるとは思うがw。

ならばグランプリか。となるが、これが実に難しい。2作品のどっちかが獲ればいいのであれば、なりふりかまわず暴れていれば手繰り寄せることは可能だろうと思った。しかし、「かわくも」の方だけとなるとそうはいかない。
二作品という両輪を回して、ようやくチームとして動ける。そこでまとまった動きをすることで、存在感を増すことができる。グランプリを戦う上で、チーム単位で動くということは極めて重要な要素である。一人で動いても、審査員からは見えないのだ。とにかく審査員の視界に入り続けること。ズームイン朝の後ろの方で手を振り続けるように、とにかく動くことしかないのだ。ちなみにグランプリの審査員というのは、同盟の本件担当理事である。藤井さん、みそさん、山田さんは個々の賞のみの担当であるよ。ぼくはこれについてよく口にもしていたけど、みんなちゃんとわかって活動してたんかな?

そして、グランプリは作品の性質上、もし頂けるとしたら「センコロ」だろうと思っていた。実際そうだった。こっちは舞台化や回し読みチャレンジなど実施事項が派手だ。かわくもも英訳やオーディオブック化などアクションはきっちりやっているが、2つのどっちか、となると売上数も含めてやはりセンコロということになる。これは事前に見えていたことではある。

 

うーむ。参った。かわくもの受賞は、自力でどうにかできることではなくなっていたのだ。

 

表紙のデザイン性を審査する山田章博賞の可能性はどうか考えてみた。
ほさかなおのデザイン。こだわり派の藤城孝輔が納得するまで煮詰めた、自信作である。ぼくはほとんど口出ししなかったが、これは俺の納得できるレベルものが最初から提示されたからである。任せて安心できると判断したに過ぎない。コントラストの調整まで地味な作業を根気よく続けてくれたほさかなおの渾身の一枚だ。決して他のチームの作品に見劣りするものではない。十分戦えるし、勝てる。ただ、山田賞は予測が難しい。前回まったく大外ししている(杉浦さんが獲るのは意外ではなかったが、獲るなら羊の方だと思っていた)。

ちなみに今、書店店頭に行くと、かわくもの書影に似た感じの文芸書がたっくさんある。大きな書体でタイポを組んでいるような、そんなの。それは、かわくもの書影がありきたり、という意味ではない。流行の最先端を押さえているということだ。つまり、今やるなら、こう!という王道デザインである、とぼくは思っている。獲れる可能性はある。しかしまったく確信は持てないし、安心できない。安らげない!

 

藤井太洋賞。これは書き手としては一番欲しいのではないか。じっくり読んでもらった上で、16作品を吟味してもらって、それで頂く。作品がっていうよりは、16人の中で一番小説がうまいやつ選手権である。まぐれ当たりはない。前回の高橋文樹氏の獲得は読みが当たった。つまり一番上手いやつが誰かわかれば、それがわかりさえすれば、いける。藤井太洋賞ならいけるし、なにより藤井太洋賞が欲しい。実のところ、仕込みはきっちりしてあった。問題は、かわくもよりももっと藤井賞にピントを合わせたものがあるか、ないかだ。なければ、いける。

条件はもともと悪くないのだ。藤城くんの書き様は破滅派合評で知るところではあるし、藤井さんの作家としての方針というか考え方は、同盟セミナーでも何度も拝聴しているし、ぼくが書くときの参考にもさせてもらっている。知っているものと、知っているものを繋ぐ。どうすればいいかはわかっていた。問題はそれができるかどうかあるが、藤城くんはできるし、できた。この好条件を活かせるか。活かす力がぼくにあるのか。正直、結構なプレッシャーだった。考えてもみろよ。毎回合評で負けてる上位の相手の面倒を見ろってんだから、どうしてそうなったとしか思えないだろうw。

とにかく、丁寧に。粗は絶対だめだ。アクはしっかり取り、ダシはきっちり効かせる。言葉選びの一つ一つまで手も抜けない、気も抜けない。琥珀色のコンソメスープを仕込むように、織り上げていく。藤城くんが織り上げていくのを、あとからついてひたすら品質チェックをする。

そこまでは。そこまでは、当日に仕込んであった。出来映えは、うなづけるレベルに到達している。出荷していい。そういうものだ。適マークをバーンと押して、送りだしたのである。

 

そして2ヶ月後。

 

グランプリ当日。

藤城くんはネットにいなかった。高橋文樹が前回忘れてて来なかったように、不在。まったく破滅派はよ。ただ、ちょっと予感はしていた。ひょっとしたらこれはイケてるんじゃないかと。ジンクス的にはそうだ。前例が一つしかないけど。

だから、藤井さんに「チームGOMERA『川の先へ雲は流れ』」と呼ばれたとき、驚きはしなかった。ただただ、ホッとした。

これで、手ぶらで沖縄に帰らせた青年に、忘れ物を送ることができた。

破滅派合評で折れ気味だった自分の審美眼に、少し自信が取り戻せるかもしれない。

あとは、破滅派でドヤ顔ができる。などなどいろいろさまざま。うはは。

 

選評としては「書き出しの流れがよかった」ということで、がっつり思いは伝わってくださっていて、ありがたいことです。

 

藤城くんはその後、イベントが終わりそうな頃にようやくネットに繋がった。

「ごめんなさい、SNSの通知を切っていました(がっかりするなら、一人で静かに落胆したかったので……)」

貴様あw。

 

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個人的には「NovelJam8冠(最多)」、「グランプリ連覇」、「担当作家全員受賞(6名)」という目標をすべて達成。これでゆっくり眠れそうだ。

 

そして、3月頃、英訳版出ます。売り方は検討中。

同じ頃、「かわくもスピンオフコンテスト(仮称)」やります。高橋文樹さん、伊藤なむあひさん、波野發作さん(あ、わしや)が審査員を務めます。

 

センコロの方は、5月11−12日に池袋・木星劇場で上演します(決定)。演出・脚本は森山智仁さん。

3月3日にオーディションが行われます。

 

NovelJamは終わっても、チームGOMERAの活動はもう少しだけ続きます。

なにとぞよろしくお願い申し上げます。

 

私からは以上です。

 

 

 

 

2019年2月3日公開

© 2019 波野發作

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