――朝鮮人あまた殺されたり
その血百里の間に連らなれり
われ怒りて視る、何の惨虐ぞ 「近日所感」萩原朔太郎、一九二四年二月『現代』より
――朝鮮人あまた殺されたり
その血百里の間に連らなれり
われ怒りて視る、何の惨虐ぞ 「近日所感」萩原朔太郎、一九二四年二月『現代』より
2021年9月17日公開 2021-09-17T22:00:22+09:00 2023-04-01T23:48:01+09:00
作品集『月に鳴く』第9話 (全16話)
これは合評会2021年09月の応募作品です。
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千本松由季 投稿者 | 2021-09-18 10:29
黒猫を通して、二つの世界、現代の日本と戦時中のドイツとの対比を幻想的な筆致で上手く表現されていると思いました。落ち着いた、いい文章ですね。気持ちが良かったです。他の作品も読んでみたいです。
小林TKG 投稿者 | 2021-09-20 03:43
つい先日、オール讀物の猫特集の回を読みましてその影響か、猫という生き物の存在が私みたいなもんにもするりと入ってきました。猫ちゃんは液体。黒猫可愛い。猫を飼ってない、飼ったことも無い。将来的に飼う事も無いだろう私にも、猫ちゃんの可愛さは液体の様に入ってきますね。でも黒猫は狙いすぎじゃないでしょうか?いくら幸福を呼ぶとはいえ。私はサビ猫がいいです。すいません勝手な事言いました。
ヨゴロウザ 投稿者 | 2021-09-22 22:10
はじめまして。
黒猫によって結ばれる二つの情景を連関あるものにするのがワインですが、自分は少々深読みをしてこのワインは洋の東西で起こった虐殺で流された血を暗示しているのかと思ってしまいました。『巨匠とマルガリータ』の中に虐殺で血が流れたあとに豊饒な葡萄が実り、それでできたワインをヒロインが飲むという謎めいた印象的なシーンを覚えていた事も一因かもしれません。なぜそんな悲惨事が美味なワインとなるのか? しかし白ワインとのことで関係なかったでしょうか。
鈴木沢雉 投稿者 | 2021-09-22 22:57
百年というスケールが繰り返しモチーフとして出てきて、上手くまとまっていると思いました。改行だけでいきなりドイツに飛んだときはちょっと戸惑いましたが、それさえもあまり気にならないくらい構成はしっかりしていると思います。
ちなみに黒猫のワイン、大好きです。黒猫に限らず、ドイツのリースリングを見つけたら条件反射で買ってしまうくらい好きです。
古戯都十全 投稿者 | 2021-09-23 21:24
盛り込まれたいろいろなネタと合わせておもしろく読みました。今ある生は大量虐殺を含む歴史の上に成り立っているということを考えさせられました。流れるような文章で描かれる現実の平穏な描写は、惨劇の記憶を癒やす効果として書かれたのではないか、というような印象を受けました。
三年後の若干近未来である設定がわかる描写がもう少しあればもっとよかったのではないかと思いました。
大猫 投稿者 | 2021-09-23 23:38
ツェラー・シュワルツ・カッツ!
甘口で飲みやすいワインですね。猫が背伸びをしているラベルならグリーンのボトルですね。ブルーボトルもあるし、猫型ボトルもあってそりゃもう楽しいんです。なんて、ワイン話に喜んでる場合じゃなかった。
現代日本の階段に寝転ぶ猫、ワイン醸造の滋味深い話の猫。猫は平和と幸福の象徴です。そして月。百年千年の時を越えても変わらぬ月が、戦争虐殺の愚行を繰り返す人間の浅ましさをどう見つめているのだろうと思わされました。
ホロコーストのお題の核心からはちょっと離れているかな、とは思ったものの、読後感がとても良かったです。
諏訪靖彦 投稿者 | 2021-09-25 16:31
鈴木さんも書かれていましたが、アプリオリな同族嫌悪なる感情と如何に向き合って人生の中でどこまで是正していけられるものなのか考えさせられました。「タペタム」初めて知りました。だから猫の目は暗闇で光るんですね。
Fujiki 投稿者 | 2021-09-26 00:34
黒猫を媒介として日本のうんちくおじさんとモーゼル川流域の酒売りが接続される。日本は2023年、ドイツはすごくわかりにくいが、トゥルンプの祖父がナチスからワインを守った戦争体験者でトゥルンプの父が戦後蔵を開けた時点で幼かったので1940年代前半生まれ、ということはトゥルンプは70年代後半~80年代前半あたり生まれだろうだから、やはり作中の日本と同じ時代か? 大胆で見事なつなぎ方だが、ナチスから命がけで守り継いだワインがそんな背景などまったく知らない極東のミドル・クラスに消費されるというのも無残な光景だ。猫なんかにかまけていないで、ワイングラスを傾けながらさらなるうんちくを展開してほしかった。
曾根崎十三 投稿者 | 2021-09-26 09:23
あのワインにはそんな逸話があったんですね。子供の頃、猫の絵を見て意味なく欲しがっていました。
現代日本からドイツに話が変わる時に自分の頭がおかしくなったのかと思いました。それくらいスムーズでした。最後のお食事のシーンで擬音が多めに使われていたのが印象的でした。平和な生活感がありました。
波野發作 投稿者 | 2021-09-26 09:45
まだ他の作品を全部読んでいないけど、この作品が唯一の星5になると思う。大変よかったです。
Juan.B 編集者 | 2021-09-27 19:53
黒猫とワインが歴史を超えた物語の味わいを深めている。まだ、その黒猫のワインを飲んだことがないので飲んでみたい。ジュースと誤ってワインを飲んだと言うエピソードは俺もやらかしたことがあるので親近感が湧いた。
一希 零 投稿者 | 2021-09-27 20:03
わたしも飲んだことあるワインでした。見事な筆致に感服いたしました。ラストにかけての文章が美しく、個人的にとても好きな小説です。