岡本尊文とその時代(八)

岡本尊文とその時代(第8話)

吉田柚葉

小説

2,757文字

さもそこに何かある風に匂わせる傾向がある

一九八二年四月、岡本尊文は早稲田大学第一文学部に入学する。即ち上京である。

 

 高校を卒業して、二年ほど受験勉強をしたりしなかったりして、どうにか早稲田大学に入りました。なんと言っても田舎の出ですから、東京にちょっとした憧れはあった。入ったのは、第一文学部という学部で、今はもうなくなってしまった名前です。わたしはフランス文学を専攻しましたが、今以てわたしはフランス語の読み書きが苦手です。いや、ほとんど出来ないままであると言ってよい。本当に大学というところはなんのためにあるのか……、いや、そう言ってはいけない。真面目に、志高く取組めば、馬鹿高い学費だって充分に元がとれる。それは各々の学生次第です。と、紋切形のことを言うしかないくらいには、わたしは大学に興味がないのでしょう。記憶に残っていることと言えば、大便臭い校舎と――いや、嘘です、臭くないですよ――アルバイト先の女の子に熱中したことと、あと少し……、試験前日に、机に向かったは良いが、文章の香りも判らないゾラの原書を枕に居眠りしてしまったことくらいでしょうか。まったく、あれほどよく眠れた夜はなかった。

2019年5月5日公開

作品集『岡本尊文とその時代』第8話 (全41話)

岡本尊文とその時代

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© 2019 吉田柚葉

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