極地へ

十六歳

小説

741文字

世界の創造と、女の子の横着と、エベレストのとてもとても短い話です。

 少女が、長い長い独り言を連ねて世界の上を歩いています。

 あたたかい海も、つべたい海も、浅いもので、ブーツの中にしみてくることはありません。南極大陸に降り立って、北へ向かってじゃぶじゃぶ進みます。オーストラリア大陸からは足場があります。インドネシア諸島をわんとぅーすりー。マレーシアをあんどぅーとろわ。スリランカを踏んでインドに着地すると、そこは目的の場所のようでした。おあばあちゃんの描いた簡素な地図のバツ印は、確かにこの辺りなのです。新しい住民のために、ここに大きな障害物を。文明の位置を定めてしまうのだ。おばあちゃんは水海のそこに沈めてしまいなさいと言ったけれど…

 手を汚すのはいやだったのです。だから私はブーツのつま先をネパールの辺りに合わせてぐっ、と押し出しました。モンゴルのほうからも、かかとを落としてこちら側に引き寄せました。いびつな起伏でとてもとても邪魔なことを確認しました。これから帰ります。

ふと思い立ち、成された大山脈の頂に、ちいさくちいさくちいさくなって降り立ちようと屈みこみました。まだ出来立ての雪山ですから、雪は積もっていません。この山は私が創ったのです。それを残したい、と思ったので名を刻むことにしました。ひとさし指の爪の先で岩に刻みました。血が滲んだけれど、たやすいことでした。

 

”創造主の孫”

 

私には名前がないのです。その上、この言葉を住民が使うかも、住民がここまで辿り着けるかもわかりません。きっと吹雪に埋もれてしまうのでしょう。まったくもって無意味なことでした。

 

少女はそうつぶやくと、その後は何も声を発しませんでした。そして極地を抜けて、また極地へと帰ってゆき、そして消えました。

 

2016年5月5日公開

© 2016 十六歳

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