手記

十六歳

小説

527文字

超短編です。この長さだからいい、と思っています。少しの個人的な我慢から生まれたフィクション(嘘)です。

私はその日、イヤホンをして、十年近く年季の入ったウォークマンで音楽を聴いていた。いつも二人の友人と登校していて、その日も二人と一緒に学校へ向かっていたけれど、私はひとりで十年近く年季の入ったウォークマンで音楽を聴いていた。

私は傍目、明らかに苛立ち、落ち込んでいたのだろう。きっと目を見開いて息も荒かったのだろう。友人のうちの一人が、道も半ばまで差し掛かった辺りで肩を叩いて私に尋ねた。

「今日はどうしたんだい?君は一体何を聴いているんだ。」

と。私は答えた。

「これかい?何も聴いてなどいないさ。僕には君たちの話がすべて聞こえていたのだよ。理解は出来なかったけれど。でも僕が話さなくとも君は楽しそうに話すではないか。そう、僕には君たちの話がすべて聞こえていた。理解はできなかったけれど。」

 

本当は、音楽はきちんとかかっていたし、学校に着くまでの間友人のどちらも私に何も尋ねて来なかったし、私は元々話さないタチだし、何も問題はなかったのである。

本当はウォークマンなど持っていなかったし、学校には通っていないし、友人はもういないし、後ろから肩を叩かれたから、私はここで手記を終えて、ペンを置くのである。

 

私は耳がきこえない。

2016年2月21日公開

© 2016 十六歳

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