ミセス・ブリーンとの会話で思わず吹き出してしまった。このあたりのユーモアはどれだけ時代が経ても変わらない。
――きっといま新月なのね、と彼女は言った。新月のときはいつも主人がおかしくなるの。昨夜どんなことをしたとお思いになる?――とブルームは言われ、――さあ話しなさい。まっすぐ彼女の目を見ること。本気で聞いてますよ。ぼくを信頼しなさい。――と大いなる期待をもってその様子を窺うが、彼女が「こわい夢を見た」と夫が自分を起こしたことを告げると、「消化不。」と反応する。
そういえば、二〇二三年は一月一五日で伊藤整が生誕百周年となったそうだ。これも感慨深いことだ。日本で「ユリシーズ」が翻訳された時代、これほどに世界的に受け入れられると誰が想像したのだろうか。こうやって世界各地の言語で書かれた物語を読めるのも翻訳者のおかげだし、日本語という言語がまだ世界で市場を持っていることは大変ありがたいことである。
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