助けてハムスター

多宇加世詩集(第4話)

多宇加世

552文字

偶然と悲運。頬袋にエサを貯めるよ。ハムスターシリーズ。

網戸を閉めてなかったのがまずかった

扇風機を首振りにしてたのがまずかった

酔っ払っていなかったのが

気持ち的に

よけいにまずかった

 

浮かび始めたよ

ロボロフスキー・ハムスターが

 

試しに結わえた

 

商店街でもらったガス入りの風船の

口に垂らした糸にぶら下がり

 

浮かんだ 浮かんだ

さすがロボロフスキー・ハムスター

ハムスター界 随一の小ささよ

浮かんだよ 浮かんだよ

扇風機の風に吹かれたよ

風に吹かれたよ

風船が風に

 

風船は窓から外へ飛んで行ったよ

 

ロボロフスキー・ハムスターは

旅に出たよ

お腹が空いたら

頬袋に詰めた

ひまわりの種を食べたよ

私の流した涙と冷や汗

そんなことも知らずに

ハムスターの歴史上 世界一高く飛んだよ

成層圏で風船割れて

凍ったロボロフスキー・ハムスター

落っこちたよ

 

誰かのハムスター

落ちてきました

糸が結ばれてました

ドライヤーで氷を溶かしました

お庭にお墓を作ってあげました

 

ああなるほど

お庭のすみに

お箸が刺さっているのは

そういう由来があるからなのですね おばあちゃん

じゃあまた施設に戻ろうね おばあちゃん

 

いやです

いやです

ハムスターの墓守は誰がするの

花を誰が供えるの

嫌です嫌です

あそこは若い娘が手の甲つねるからあ

嫌だあ嫌だあ

助けてハムスター!

2019年8月19日公開

作品集『多宇加世詩集』第4話 (全18話)

© 2019 多宇加世

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