日常。(28)

日常。(第28話)

mina

小説

1,326文字

何もかも無くなって、残っているのは家代わりにしている、この車と五万円ぐらい
いつも一緒にいた家族達もいなくなった
都心ではないけれど、一軒家を持ち、

…多分幸せに暮らしていた

そう思っていたんだが、それは俺だけだったみたいだ
もう傍には誰もいない、誰もいない毎日を過ごしている
何もかも1人で…過ごしている
「たまには外にでも出るかな…」
自然と口からそんな言葉がこぼれた
1人でもいいし、1人でも楽だと思っていたのだが、誰かと逢いたくなったみたいだ

誰かが恋しくなってしまったみたいだ
ぬくもりを感じたくなってしまった

「何かさー」
「んー?」
「私、風俗の仕事、辞めようかと思ってるんだよね」
「ていうか、そんな事毎日言ってるけど、辞めてないじゃん?」
「そうだけど!でも…毎日そう思っちゃうぐらい、何か飽きちゃったっていうか、つまんないっていうか」
「で、次は“どっか行きたい”でしょ?」
「……」
仕事の同僚っていうか、同じ風俗の仕事をしている友達は毎日繰り返される、この私の辞めたい話に延々と付き合ってくれて、その話を最後には笑い話にして笑い飛ばしてくれる
それは同じ事を彼女も思ってくれているからだろうって勝手に思っている
「どっか行きたいって、いつも言うけど、一体あんた、ドコに行きたいの?」
「ドコって言われても…」
「そうよねぇ、具体的には無いわよねぇ」
「…沖縄!」
「沖縄ねぇ、何で?」
「だって…海がキレイそうじゃない?」
「まぁ、そうよね、海がキレイかもね」
「って笑ったー!」
「可愛いなって思ったのよ」
「嘘!バカにしてるでしょ?」
「そんな事無いわ」
本当はドコでもいいんだ
ドコか、なんて

『ドコかに行きたい』

久しぶりに夜の街を歩いてみると、何だか楽しかった
夜遅くまでやってる店も多く、賑やかで明るかった
ソコにいたらまるで自分が1人ではないように感じた
「……」
俺ってよっぽど女々しくて、寂しいヤツなんだなって改めて思った
そんな自分がすごく嫌だけど、今日ぐらいはいいかな…とも思ったり
実際今の俺の頭の中が良く解らない
「お兄さん、どうですか?」
そんな俺に話しかけてきたのは風俗の案内所の兄ちゃんだった
「けっこう安くていい店ありますよ?」
「あ、でも…」
ドギマギしている俺にその兄ちゃんが渡してきた小冊子
「ココに載ってる店、全部オススメですよ」
「……」
もらった小冊子を車に戻ってじっくりと見てみた
キャバクラ、ホスト、普通の飲食店、風俗…いなくなった女房にそっくりな女の子
「何で…!」
女房な訳ないと思いながらも、その小冊子に載っているお店の地図を見ながら、俺の足は彼女に向かっていた

逢いたかった

もうすぐ雑誌予約のお客さんが来る、今日ラストのお客さん

どんな人なんだろう?

きっとお互いドコかに行きたくてしょうがなかった
そんな2人は逢ってすぐに抱き合った
「逢いたかった」
「……」
強く、力強く抱き締められた
きっとお互い誰かに逢いたくてしょうがなかった
その人に抱き締められた、その私のカラダは過剰に反応して、下着から溢れそうなくらい濡れていた

               end

2014年11月24日公開

作品集『日常。』第28話 (全70話)

© 2014 mina

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