日常。(25)

日常。(第25話)

mina

小説

1,355文字

私はもう何回もこの人にイカされている
だから、好きにならないように必死で我慢している
私は『イク』と『好き』を錯覚してしまうから、だから…なんだけど、…ちょっとヘンかな?
何かイカされちゃうとその人を好きになっちゃって、もうその行為自体が仕事っていうより、リアルになっていって…

仕事にならないの

「今日も予約入ってるよ、ヤベさん」
「本当!」
「嬉しそうだね」
「だってヤベさん、いいお客さんだもの」
いいお客さんの定義とかいうのは、その女の子それぞれ持っていて、いろんな意見があると思うけど、私の場合のいいお客さんっていうのは…私が好きな人だわ
「週1ペースで来るよね、ヤベさん」
「うん」
「まぁ店にとってもいいお客さんだよ」
『お金』というモノが、私とヤベさんの間に在ったとしても、私はヤベさんが好きだし、イカされるのは事実
出勤して、店長に「予約入ってるよ、ヤベさんの」っていう言葉は私にとって嬉しい出来事

ヤベさんが私に逢いにくるのを待ちわびてしまう

いつも朝5時には起きて、歯を磨き、顔を洗い、出勤の準備をする
「早くご飯食べちゃって下さいね」
白米に目玉焼き、納豆、鮭、豆腐とワカメのみそ汁…
「いや、今日はいいよ」
「あら、大丈夫?朝御飯食べないで」
「うん、いいんだ」
「そう…じゃぁこれ」
妻から渡されるいつもの弁当箱
「ちゃんと食べないと」
「そうだね、じゃぁ行ってくるよ」
そのいつもの弁当箱がうざったい
「行ってらっしゃい」
「 … 」
玄関を出て、ゴミを出す。バス停まで早足で歩く
「あら、お早うございます」
「あ、おはようございます」
隣りの家の奥さんとバス停で立ち話
「ヤベさんは保険、何に入ってらっしゃるの?」
「…そういうのは全て、うちの妻がやってるんで…」
旦那さんを交通事故で亡くしてからずっと1人で子供さん達を育てている、女の人だ
そして僕の顔を見るたびに保険の話をしてきて、僕を勧誘する
…早くバスが来てくれる事を願う
バスから降りて、駅でいつもの電車を待つ、いつもの満員電車だ
電車に乗ること30分、会社に着く
「お早うございます、課長」
「おはよう」
会社では一応役職をもらっていて、仕事も順調と言えば順調で、僕を慕ってくれている部下もいる
「あれ、課長、今日も愛妻弁当ですか?」
「ん、あぁ」
「いつまでも仲良くて羨ましいですよねー」
「そうか…」
僕はもう、妻といる事の意味さえ解らなくなっているというのに、周りは愛妻だなんて…
「もう御結婚されて10年ぐらいたちますか?」
「…もうすぐ20年だよ」
「すごいですねー、仲良いですよねー」
妻か…、僕はもう妻をもう、

どう愛したらいいか解らないな

「また逢いにきたよ」
「うん!」
彼女の愛し方なら解るんだが…
「ヤベさんが来てくれるの私、いつも待っちゃうんだ」
「本当に?」
「うん!だって、私ヤベさんの事好きなんだよ」
「好きか…、嬉しいな」
一緒にいてすごく安心したし、僕も好きだと感じていた
「また私に逢いにきてくれて嬉しい」
そう言われて、キスされて…、僕はまた愛し始める、彼女を
「ん…気持ち良い…」

ヤベさんは私をいつもイカせてくれる

                end        

2014年11月3日公開

作品集『日常。』第25話 (全70話)

© 2014 mina

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