日常。(20)

日常。(第20話)

mina

小説

1,455文字

『僕の愛人になって下さい』
その言葉が最後だった、彼はずっとそれを私に伝えたかったらしい
彼が私になって欲しかったのは、恋人ではなくて…
愛人だったんだ

「気持ちよくなっちゃった?」
「挿れようよ」
「中で出したい」
「その方が気持ちいいから」
「挿れたくなったりしないの?」
飽き飽きだった
いくらこのお店がホテルヘルスだと謳っていても、本番=セックスが出来ないということを解っていても、出逢う男の人達は最後まで‥セックスまで、やっぱり辿り着きたいんだろうなぁといつも感じる
私は
『挿れないからこそ、逆にいやらしい』
と思っているので、
「挿れようよ」
と言われた瞬間に、その人に触られたり舐められたりして、高まっていた気持ちが一気に冷めてしまったりする
「 … 」
まぁ確かにホテヘルとホテトルって呼び名も似てるし、ホテトルっていうのはセックス有りだし、ヘルスって言われても一緒にラブホテルに入って、やる事殆ど一緒だもんね
翌々考えてみたら、ただ挿れるか挿れないかの違いと気持ち良さの違いだけの話だし
でも、値段が違うじゃない?
払うお金が違うんだから大人しく私にイカされて欲しいのよね
挿れたいんだったら、それなりの報酬を用意して欲しいものだわ
何かを得る為には、同等の代価が必要って、何かの漫画に書いてあったけど、全くその通りだなって思った
女のカラダを得る為には、同等のお金が必要なんだから!と理解して欲しいもんだわ
もういい加減にしてくれないかな‥男の人のそういうところって苦手
ソレを挿れたって、私ちっとも気持ち良くなんてならないわ
挿れたいあなたはソレを入れれば気がすむんでしょうけど?

「君に逢えて良かった」
そう言って、週1で私に通ってくれているスズキさんはラルフローレンのポロシャツにチノパン、眼鏡もちょっとおしゃれな雰囲気で、中肉中背、肌の色が多少黒くておしゃれな40代だった
「君のネットに載せている写真がすごく良くてね‥久しぶりにこういうところに来てしまったよ」
インターネットの風俗サイトに載っている、私の写真を見て、私を気に入ってくれた人
「純粋に逢って、とりあえず君と話しがしてみたいと思ったんだ」
「 … 」
いつもの挿れたがる男の人達とは違うって思ってた
だって彼は私に挿れたがらなかったし、
「君と話してるだけでも、僕は楽しいんだ」
って言ってたし
彼といる時間はとっても楽しかった
でも、彼も挿れたがる男達と一緒だったのかも知れない

「今日は君に伝えたい事があるんだ」
「…何?」
彼が私に通い続けて3ヵ月目、彼が私に伝えたかった言葉は…
「僕の愛人になってくれないか?」
だった
「えっ?」
彼が私に挿れたがらなかったのは、妻子がいたからだった
「今まで僕は君に嫌われたくない気持ちと妻と子供の事が気になって、最後まで踏み出せなかったんだ」
「 … 」
あぁ、なるほど
彼が挿れたがらなかったのは、こういう理由があったからなのね
「僕は君に挿れたい」
今まで彼に触られて、舐められて何回もイッてしまっていた自分がその一言でものすごく恥ずかしくなった
自分自身の存在がイヤになってしまった
それでも…
「ありがとう、気持ちは解りました」
「じゃあ…!」
「今日で最期、もう私に逢いに来ないで下さい」
彼との最期のキスは私にとって最高にいやらしいモノになった
最期のキスというシチュエーションが私をイカせてしまったのだ
               end     

2014年9月30日公開

作品集『日常。』第20話 (全70話)

© 2014 mina

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