日常。(16)

日常。(第16話)

mina

小説

1,198文字

ピンクローターの振動と音が気になる
本当はあなたの口で舌で、私のを舐めて欲しいのに…あなたはちっとも気付かない

「今日も来ましたよー藤崎さん」
「えっ!マジで!?」
「予約入ってるよー、18時から」
「すごい…あの人何日連続で来てんのよ…」
「7日間連続!」
「ウケんだけど」

藤崎さんと初めて逢ったのは、一週間前
その日は雨が降っていて、超ヒマな日だった

「つーか雨とか言って、客来なくね?」
「うーん…待機、人多すぎだし…」
「まだ1本も客付いてなくて、マジいらつく
んだけど?」
「今日はお茶かもねー…」
「掛け持ちとかしちゃおっかなー…てか辞めよっかなー…」
「辞めちゃうの?」
「んー…」
雨の日の待機室って大抵こんなカンジ。天気
が悪いと、こっちの気持ちまで滅入ってくる。
お店辞めたくなって、イライライライラして
ダイエットしなくちゃいけないのに余計に食べちゃったりして、また自己嫌悪して…

ずっと、それのくり返し
ずっと、ずっと、ずっと…

そんなとき藤崎さんが私を選んだ
雨の日の夕方

「お仕事入ったよー」
「はーい…」
「またぁヤル気無しでしょぉ」
「ヤル気アリアリでぇーす」
「全然ヤル気ねぇなー全く」
だって雨降ってるとさー髪型キマんないしさーヒールの先はビショ濡れだし、傘…持つの超ダルいし
「フリーダムとかいうレンタルルーム、マジ遠い」
イライラが募る…

こんな時はいつもそう、いろんなこと考えち
ゃう。このままどこかにいなくなりたいとか、
南国に行きたいとか、眠り続けたいとか…
「あ、じゃぁもう3番のお部屋でお客様待ってるんで…」
「はぁーぃ」
カーテンを2回めくると部屋番号の付いてる
ドアが並ぶ廊下に出る
「 … 」
一瞬ドアを開けたくないという気持ちにから
れる
「 … 」
ドアノブに手をかけて、迷う
「 … 」
ドアを開けたら、診察室みたいなプレイルー
ムにグレーのスーツを着て、青いネクタイを
している、白髪の藤崎さんがいた
「こんにちはー」
「初めまして、元気だねー」
藤崎さんは笑顔でそう言った
「初めまして」
その笑顔がすごく優しそうだったから何だか
安心した。若い人よりおじさんの方がいいし
、笑顔がいい。きっとそんな気持ちになった
のは間違いなく雨のせいだ

ていうか雨のせいにしてるだけ

「君はオナニーする?」
「えっ、あ、はい」
「じゃぁさ、僕にオナニーを魅せてよ」
「 …」
…藤崎さんは私のオナニーをただ見てるだけ
で、私に触れてもこない
「あ…」
「もっと君のカンジてる顔が見たいな」
「 … 」
言葉と視線だけを私に浴びせるだけ
「そう、その君のそんな顔が好きだよ」
「んっ…」
「僕は君の…そのいやらしい顔が大好きだ」
「 … 」
「もっと、もっとだ」
「 … 」
「本当に…大好きだよ」
「あっ…!」

本当はあなたの口で舌で、私のを舐めて欲しいのに…あなたはちっとも気付かない
ピンクローターの振動と音が気になる

私はいつもこうやって藤崎さんにイカされる
「僕は君のいやらしい顔が大好きだ」
「本当に大好きだよ」

                end    

2014年9月1日公開

作品集『日常。』第16話 (全70話)

© 2014 mina

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