日常。(13)

日常。(第13話)

mina

小説

1,270文字

夜になると、ただ暗くなるだけなのに‥それだけでホテルに行くまでの道のりが随分違って見えたりして‥

 

ちょっと怖い

 

「 ‥ 」

 

いつも指定されて行くホテルの側には何も無くて、真っ黒な暗闇の大きな影の固まりだけがホテルを覆っているような気がしてならなかった

ホテルのフロントの中にいる人に軽く挨拶をして、その奥にあるエレベーターまで歩く。ブラックライトの青色と蛍光灯の白色が歩いている私を照らす

「 ‥ 」

見上げると青色が白く光っている

「あの‥」

「 ? 」

ホテルのフロントにいた人が話しかけてきた

「さっき入ったお客さん、ちょっと気をつけた方がいいと思います」

「‥何でですか?」

「いや、僕の思い過ごしかも知れないんで‥多分大丈夫だとは思うんですけど」

そんな事言ってたらエレベーターが1階に着いた

「‥解りました」

エレベーターの扉が閉まる、私はものすごく

不安になった

7階にエレベーターが着いてしまった、78

1号室はすぐそこにある

「 ‥ 」

エレベーターの中から出たくない

このまま帰ってしまいたい

ホテル全体でかかっている有線の曲がやたら

耳につく

「 ‥ 」

この狭い廊下を通って、突き当たりの所に部

屋がある、781号室はすぐそこにある私は

その扉をノックした

「あ、どうも」

扉を開けて、私を迎え入れてくれた人はちょ

っと肌の色が黒い茶髪のおじさんだった

「こんにちは」

私は普通な雰囲気のおじさんを見てホッとし

た、だけど‥

「 ? 」

部屋の中に入ると妙な匂いがした

「おもしろいシステムだね、最近の風俗って

みんなこうなの?」

「あ‥はい」

「どうかした?」

「いや、何かちょっと‥」

「 ‥ 」

おじさんの目つきが変わった

「‥君はクラブとか行ったりするの?」

「行かないです」

「そう‥」

おじさんは笑ってこう言った

「大丈夫だよ、そんなに警戒しなくても」

「あ‥はい」

「ダメなことだっていうのは解ってるから」

「 ‥ 」

おじさんは何だか訳が解っていない私の手を優しく握った

「ちょっとだけ、ぬくもりが欲しくなったんだ」

「ぬくもりですか?」

「そう、ちょっと独りでいるとダメそうだったから」

「‥寂しかったんですか?」

「そうだね、寂しかったのかも知れない」

私は椅子に座っているおじさんを包み込むよ

うに抱き締めてあげた

「ぬくもりって、こんなカンジですか?」

「 ‥ 」

おじさんからはさっき部屋に入ったときに感

じた妙な匂いがした

「‥今日選んだ子が君で良かったよ」

「 ‥ 」

「優しい子って言ったら、店員さんが君だって言うからさ」

「‥あの」

私は匂いの事を聞いてみようと思った

「この匂い‥」

私の言葉を遮るかのようにおじさんは私に優

しいキスをしてきた

「 ‥ 」

静かで優しいキスに私は濡れた

「‥ありがとう」

結局おじさんとしたプレイはそれだけだった

「 ‥ 」

おじさんが先に帰っていいと言うので私はエ

レベーターで下に降りた。エレベーターの扉

が開くとそこには心配そうな顔をした店長が

いた

「大丈夫だった!?」

後で聞いたらおじさんはマリファナをやっていたみたいだ

「 ‥ 」

その話しを聞いた瞬間、私はイってしまった

 

end

 

 

2014年8月4日公開

作品集『日常。』第13話 (全70話)

© 2014 mina

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