日常。(12)

日常。(第12話)

mina

小説

1,306文字

派手な服装のその人は、私に本気の恋愛を求めてきた

 

うちの店が提携しているホテルにいつものように呼ばれて向かった

『アトランタホテル1081号室、80分コ

ースです』

「 … 」

長い時間のコースのとき、私はいつもドキドキする

「 … 」

ドアの向こうにいる人はどんな人なのかを想像する

自動ドアの入り口から入り、フロントを通って、エレベーターに乗り…10階のボタンを押す

「 … 」

密室の部屋のようなエレベーターが私をその部屋へと案内する

「 … 」

詩的な自分の感情にちょっと笑えた

…ドアをノックすると

「こんにちは!」

「あ…こ、こんにちは」

白髪の派手な服装をしたおじさんが元気よくドアを開けた

「寒かったでしょー」

「あ…はい」

何だか私が接客されてるみたいだった

「僕はね、今日君とプレイをするつもりはな

いんだ」

「え…」

1番困るタイプの人だった

風俗に来てプレイしていかない客程苦手なモノはない、80分初対面の良く知らないおじさんと話すことが、どれだけ苦痛か…

「大丈夫」

「え?」

「君には彼氏がいる?」

「い…ませんけど…」

「僕はね、君のことが大好きだから」

「…今日初めて逢ったのに…ですか?」

「もう僕の好みの顔ってだけで、僕は君が好

きだよ」

「そうですか…」

明らかにおかしな人だなって思った

おじさんは私に好かれようと、嫌われないようにと一生懸命話してくる

…自分の事を今日逢ったばかりの女に一生懸命喋る

「 … 」

そして時々テーブルを挟んで向き合っている私の手を触る、指を握る、肩を触る

『僕の事を好きになって』というおじさんの感情が私に伝わってくる

「 … 」

私はその異様な感じが怖くてたまらなかった

テーブルの上にある時間を計るタイマーが早く鳴らないかなと、それだけをずっと思っていた

「僕の話、つまらないかな」

「…そんな事ないですよ」

おじさんは私が自分に怯えているというのを解りながらも、必死に私に喋りかけてくる

「あの…」

「僕はね…孤独なんだよ」

「 ? 」

「本当は君じゃなくても、誰でもいいんだ」

おじさんは決して私に喋らせようとしなかった

「 … 」

 

私はおじさんに自分からキスをした

おじさんは驚いていたけど、嬉しそうだった

私から手を握ってあげて、抱き締めてあげて

キスを長く、優しいキスを…

 

してあげた。

 

「僕は…」

「 ? 」

「君に同情されているのか?」

「 … 」

「君が僕にしてくれているキスには…」

「 … 」

困惑しているおじさんのマジな顔に私はものすごく感じてしまっていた

「僕は…」

おじさんの事を私がギュッと抱き締めた時、

私は凄く濡れて…そして…イッてしまった

「おじさん、私の触ってくれる?」

「え…」

私はおじさんの指を自分の濡れている部分に持っていった

「濡れてる…」

「おじさんは充分魅力的だよ」

「そうか…」

おじさんは私に笑顔を見せた

 

ホテルから店への帰り道、私はおじさんに対しての罪悪感でいっぱいだった

end

 

 

2014年7月29日公開

作品集『日常。』第12話 (全70話)

© 2014 mina

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