悪魔の契約

絶世の美女(第4話)

吉田柚葉

小説

8,167文字

最近粗品さんのyoutube見てます。面白いです。

ちょっとしたケンカをおこして留置所におくられた。じぶんではケンカのつもりだった。はたからみればそれはきわめて一方的なものであったらしく、ケンカのあいては被害者としてあつかわれた。僕は納得がいかなかったが、おもえば、これまでの人生ですっかり納得のいくことなんてなにもなかった気もした。

留置所は、しずかだ。おくられたさいしょの夜は、このカンとしたしずけさにあたまが冷えて、こういうのもわるくないとおもった。しかし二日、三日とすぎていくうちに、飽きがきた。このしずけさは、世界が僕に興味をもっていないことによるものだった。だが、房のそとに出て、あんなふうにまただれかとケンカをして、それでだれかに興味をもたれるということがあるだろうか。世界はずっと僕に興味なんてもっていなかったのではないか……。

僕はひとりごとを言った。こわい、とか、たのしい、とか、感情を指すことばを、はきだした。だがほんとうは、こわいとつぶやくとき、ちっともこわくはなかったし、よもやたのしいはずもなかった。

となりの房からも、ひとりごとがきこえてきた。男の声で、こちらはきちんと文章になっていた。
「たいくつだなあ」

まったくだ、とおもった。
「きみもたいくつだろう」

僕は、はい、とこたえた。それまでにもなんどかおなじ質問をされたことがあったが、返事をしたのははじめてだった。ちがう房のひととの会話は禁止されていたからだ。そしてこの返事のために、僕たちは見張りから、会話はやめるよう怒鳴られた。懲罰房おくりにすると脅されもした。たいくつすぎて、懲罰房おくりにされてもそれはそれでよいとおもえた。ほんとうに、たいくつでしかたがなかったのだ。
「そとの世界がどうなっているか、気になるよ」

と男はひとりごとを言った。
「私はここに一週間いる。一週間もこんなところにほうっておかれる人はあまりいないと思う。なにがそんなにややこしいのか、一週間だ。だが、たった一週間でもある。そとの世界は、きっと、なにも変わっていないんだろうな。私がここにくるまで、四十年生きてきたが、なにも変わらなかったのだから、きっと、これからも変わることはないだろう」

そんなふうにして男はじぶんの年齢を僕にあかした。
「私はお笑い芸人をやっていたんだ。と言っても、きみは私を見たことがないとおもう。きみが足繁く劇場に足をはこぶようなお笑い好きなら話はべつだが、テレビをつけてバラエティを見るだけなら、まず私を知ることはないだろうね。そんなていどの芸人だ。そんなていどの芸人は世にごまんといる。そんなごまんといる芸人のなかのひとりだ。劇場に出してもらって、順当にすべって、なけなしのギャラをもらう。あるいは、なけなしの給料からいくらかはらって、劇場に出してもらって、順当にすべって、アルバイトにむかう。たまには営業に出て、順当にすべって、アルバイトにむかう。そんな芸人だよ。そんなごまんといる芸人の、そのなかでもとりわけおもしろくない方の芸人なんだ。

きみは、私のしゃべりのおもしろくなさにおどろいているだろうね。すこしでもボケるとか、なにかちょっと言い回しにくふうするとか、もっとしゃべりに抑揚をつけるとか、そういうことを私がしないのは、これがひとりごとだからだけではない。劇場に立っても、私はほんとうにおもしろくないんだ。ごまんといる芸人のおおくは、しかし、おもしろくないんだよ。おもしろくないから売れない。それはまずまちがいのないことだ。すこしでもおもしろくないと、芸能界から悪魔の契約のおさそいはこないんだ。

悪魔の契約について、ながくうわさだけはきいていた。私もまわりの芸人たちもみんなひとしくおもしろくないやつらばかりだったから、ほんとうに都市伝説として理解していた。信じようにも、そういう契約をした、という事例を知らないから、信じようがないんだ。だが、みんなの共通の認識として、悪魔の契約、という都市伝説はあたまにあったんだ。都市伝説って、きみはなにか知ってるかい。『ドラえもん』のまぼろしの回……、『タレント』というぶきみな回があるとか、トトロは死神だとか、あとは『火垂るの墓』のやつ。どれもアニメなのがなさけない。口裂け女とかも都市伝説かな。まあ、そういったもののひとつとして、悪魔の契約、という芸能界の都市伝説があるんだよ。つまり、売れている芸能人は、テレビ局のにんげんとある契約をかわすことで、テレビでのしごとをもらう。その契約を拒否すると、社会的に抹殺されるから、悪魔の契約を提示されたじてんでそれをうけるしか選択肢がない。すこしでも売れている芸能人はみんな、その悪魔の契約を交わしている。そんな都市伝説だ。

だが、私のごとき、ごまんといる芸人……、のなかでもとくにおもしろくない芸人は、売れている先輩芸人とのつながりもないし、かくにんのしようがない。それに、仮に売れている先輩芸人から話を聞けたとしても、ほんとうのことを言う保証なんてない。おそらく、「契約のことを他言してはならない」という項目だって、悪魔の契約のなかで交わされているはずだ。どこまでもふかい霧のなかにかくれているのが、都市伝説だ。ない、という証明ができない以上、あるかもしれない。まあ、きわめてうすい、ちょっとにごった水くらいの不透明感で、もしかしたらあるかもしれない、あるかもしれないということは、つまり、あるのではないか。いや、きっとあるはずだ。なんだったかな、こういうの。ああ、パラノイア。そういう感じだ。

ともあれ、この都市伝説は、ちょっとおもしろい。おもしろいというのは、知的好奇心をそそられておもしろいというのではなくて、もしこの都市伝説がまったくのつくり話だったとして、そのつくり話を創作したやつの心情がよくわかるからだ。こんなつくり話をつくるやつは、私たちごまんといる芸人のなかのひとりにちがいない。おもしろくなくて、努力もしない、ごまんといるクソな芸人のひがみが生み出したにちがいない。だから、仲間うちで悪魔の契約の話をする際は、そういうどうしようもない思考を引きうけるかたちで……、それこそ、ボケとして、悪魔の契約こい! なんてライブでさけんでみたこともあった。だが、悪魔の契約なんてのは芸人のあいだだけの都市伝説で、お客さんたちにはまったく浸透していない。まわりの芸人もフォローできなくて、すっかりすべってしまった。私くらいになると、すべってしまうことなんてこわくもなんともない。なさけないことに、私はすべることになれすぎて、ああしまったともおもわなくなっていたんだよ。ただ、すべったというじじつに関してはなにもおもわなかったのだが、この「悪魔の契約」ということばを公の場で口に出してしまったことに、何かおおきなあやまちをおかしてしまったように感じたんだ。

空気が読めない。子どものころから私は絶望的に空気が読めなかった。この、空気を読む、ということばはたしか松本さんが流行らせたことばだったとおもうし、それが流行ったとき、私はすでに会社を辞めていたから、ともかく、ながいことじぶんの性格の欠陥をしめすことばにめぐりあえず、ただばくぜんと、さまざまなコミュニティのなかでういてるなあ、とおもっていたところに、さすが松本さん、と感心するとどうじに、涙が出たんだ。なるほど、それが私を形容するひとことか、と。とかく、そのことばにめぐりあってから私の芸人人生がはじまった。

一般にあたまが良いとされる大学を出て、広告代理店に就職して、二年ほどでやめて、芸人養成所に入って、まるで才能がないのに気づいて、それでも芸人しか道がなくて、あれこれ相方を変えて、どの相方も私のお笑いのできなさに失望して去っていった。それで、十六年だ。十六年も他人のお笑いの才能に寄生してじぶんではなんの努力もしなかった。根本的にお笑いがむいていないんだ。お笑いはもとより、舞台、ひとまえがむいてないんだ。漫才の台本を暗記して、ぜったいにだいじょうぶだ、とおもっても、舞台に立った瞬間、あたまがまっしろになる。ことばがまったく出ないんだ。どの相方のときも、私はボケだったが、どの相方とでも最終的な漫才スタイルは似たものになっていった。つまり、私がちょっとボケて、相方がとほうもなくながいたとえツッコミでえんえんべしゃりまくる……。台本としては九対一といったところか。なさけないことに、ほんとうにそれ以外に手がないんだ。

あたまがまっしろになって、漫才がまるでだめなのはいつものことで、それならそれで、しおらしくしておけば良いものを、ライブのエンディングになって、演者たちがそろってフリートークなんてことになると、タガがはずれたのか、それともミスを埋め合わせようとするのか、いずれにしても空気が読めていないのだが、変なところで変なひとことをはさんでしまう。流れを読み違えて、まったく意味のわからないボケを……、他の芸人にはボケているのかもよくわからないようなボケを、スッとはさみ込んでしまう。私としてもなぜそんなことをするのかわからないんだ。吊り革をにぎって満員電車にゆられているとする。駅に停車した際に目のまえにすわっている乗客がおりていったからそこにすわる、それくらいの感覚で、スッとはさみ込んでしまう、場を凍らせてしまうひとこと。まったく意図がわからないボケだよ。だれもフォローなんてできやしない。そのなかでも最悪のものが、悪魔の契約こい! というさけびだ。

たいていはほかの芸人のフォローがなくて、若干の沈黙がつづいても、しくった、という風におもうまで、なかなか気づかないんだ。ところが、この、悪魔の契約こい! に関しては、言ったそばから、なにかざらりとした感覚が舌の上をはしるのを感じたんだ。とんでもない禁を犯した、と思った。もちろん経験はないが、きょうだいで肉体の関係をもってしまったら、こんな後悔がおしよせてくるんじゃないかと。ああ、ひどいたとえだ。だが、まさにそんな感じなんだ。一瞬、目のまえのけしきがグニャリとゆがんだ。もう、ひきかえせないと、そうおもった。

ライブ後、とうぜんながら、とうじの相方からひどくおこられた。だが、相方と、それを言った本人である私とでは、その禁を犯したことへのとらえ方のおもみがおおきく異なった。相方としては、また私がつたわりづらいボケをしたことに、あきれているようだった。私が決定的に踏み違えてしまったことに気づいてはいなかった。

それからしばらくして、その相方と解散した。そのライブのあとも、なんども私は相方がゆるせないようなミスを犯したんだ。それが、三年ほどまえか。すでに三十代もおわりにさしかかっていた。それから、どうしようもないからピンでやり出したんだ。ピンでやる、いや、何かをひとりでやるなんて、これまでにやったことがない。どんなときも私は、だれかのうしろをひょこひょことついていくだけだった。

お笑い……。お笑いと言ったって、そもそものはじまりがいつだったか。もちろん、会社をやめて、これからどうしようとなったときにとつぜんにお笑いをこころざしたわけではないよ。ほんとうにおさないころから、私はテレビが好きでしかたなかった。ひとりっ子で、なにか自発的にものをするという気概がなくて、ピアノをならわされたり、サッカーチームにはいったり、どれもまったくお話にならなかった。中学に入って、吹奏楽部にはいっても、まるでダメで、だいじなコンクールのときなんかは、曲のさいごに一発だけ鳴らすシンバルを担当していた。楽譜がよめないんだ。よもうという努力もせず、ただ好きな女の子がいたからはいった。

というのはほんとうにどうでも良い。どうでも良いが、とにかく、テレビだけは大好きだった。なにひとつ能動的なことはなく、ただ画面に映されるものをながめていれば良いだけなので、ほんとうに好きだから見ていたのか、見るだけで良いから見ていたのか、それはどちらとも言えないのだが、仮面ライダーのまねもウルトラマンのまねもしたことがない私が唯一コピーしたのが、ある音ネタ芸人のネタだった。土曜日の夜にテレビで見たネタを部活終わりに、友だちとまちあわせて披露するんだ。親友がいてな、そいつはおもしろいやつで、いまおもえばそいつがおもしろかったわけだが、私のパクリネタに全力でつっこんでくれるんだ。まあ、ウケるわけだ。アドレナリンが出て、ほんとうにしあわせな気持になる。もう一度言うが、私はただ音ネタ芸人のネタをコピーしていただけだ。独創的なのは、ツッコミを入れてくれる親友の方だ。だが、中学生の男子が友だちのまえでやることだ。パクリだからと言ってそれを指摘されるわけではないし、パクリだからと言ってツッコミを入れる親友よりもひくい評価をあたえられるわけではない。私は、お笑いが大好きだった。笑うことも、人を笑わせることも、ほんとうに大好きで、お笑い芸人のことも大好きだ。

やっぱり、お笑いのことは大好きなんだとおもう。たんじゅんにファンなのだろう。だからほかの芸人に嫉妬したりしたこともいちどもない。うそだ。もちろん、嫉妬はする。嫉妬はするんだけど、ライブの舞台袖で、ほかの芸人たちのネタを間近でみられるのが、なによりもほんとうにしあわせだった。そのときは先輩だろうと後輩だろうと関係ない。おもしろくない芸人だろうと、私にとってはおもしろい。ただ、芸人が好きで、芸人のネタが好きなんだ。じぶんが売れないのはあたりまえだし、ほかの芸人をうらんでも、じぶんが売れるわけではない。それはそうなのだが、やはり、すこしは嫉妬する。嫉妬の対象が売れているわけではなく、小屋みたいなライブ会場で数十人を相手に笑いをとっているだけであっても、私は嫉妬する。

会社をやめて、その、中学生のころにいっしょにお笑いのまねごとをやっていた、親友だったやつに、ほんとうにひさしぶりに連絡を入れた。いっしょにお笑いをやろうと、電話口で、ひさしぶり、のあいさつもなく、まずひとことめに、そう言った。ひさしぶりすぎて、距離感がわからなくて、いちから説明するのもめんどうだったんだ。聞くところによると、親友もしごとをやめたところだった。転職先はきまっていた。だけど、その場で、わかった、やろう、と言ってくれた。その後、三年くらいいっしょにやって、解散した。三年は、かなりもった方だ。私と三年もやるなんて、私だったらぜったいにいやだ。親友はおもしろいやつで、やさしいやつなんだ。根気づよく、なんとか私とでも成立する漫才をつくろうとがんばってくれた。

そいつはピンではじめて二年ほどして、すこしだけ売れた。ネタ番組で見たネタは、フリップ芸だった。じまえで用意したボケをスケッチブックに書いて、それに、とほうもなくながいたとえツッコミを入れるというスタイルで、私とコンビをくんでいたときに漫才としてやっていたネタそのままだった。私だったらネタを飛ばすが、スケッチブックだとネタを飛ばさない。私だったらセリフを噛むが、スケッチブックだとセリフを噛まない。私はあのスケッチブック以下のそんざいだった。あれをテレビで見たときは、さすがに落ち込んだ。その日のバイトを飛んだよ。まあ、バイトなんてもんは、なにもなくても、めんどうなだけで飛ぶのだが、そのときばかりは、落ち込んで、からだがうごかなくなった。

やがて、その親友もテレビに出なくなった。しゃべりはうまいが、ひどく身長がひくくて、仕切りにむいている感じではなかったし、そうでなくても規格外の天才たちがうずまく芸能界だし、こんかいは良いながれにのれなかったのだろうと、そうおもった。だが、それからしばらくして、私の母親からの電話でそいつが死んだことを知った。交通事故だそうだ。大型のトラックに轢かれて即死ということで、そのことに関してはうたがいの余地はないそうだ。さほどの話題にもならなかったが、いちおうはネットニュースになっていた。記事のコメントを見ると……、いや、ひどいもんだ。六件しかなくて、「だれ?」なんてことが書かれている。ああいうところにわざわざ「だれ?」なんて書き込むのはどういう了見なんだろうか。あんがいと同業者かもしれないともおもうが、これであとはわすれられていくしかないのだとおもえば、どうして私ではなかったのだろうと、なかばは本気でおもった。それにしても、売れかけてすぐだった。いそがしくてろくにねむるじかんもなかったなんていう話もあったが、なんでもうすこし気をつけられなかったかと、親友への怒りもわいた。

ところで私にはつきあっている女がいた。芸人仲間たちとの飲み会で出会った女で、べつに美人でもなんでもないが、わかいし、銀行に勤めているという。私の学歴をきいて、もったいない、なんてことを言った。そのときはムカついたが、まあ、そんなふうに言うのもわかるし、学歴が良くても、じっさいに社会に出てみて、どうしようもなかったのだから、芸人をやっていてもやってなくてもおなじくアルバイトでその日暮らしをしていただろう……。

と、それは良い。とにかくそのときはムカついた。ムカついて、女をどうにかしてやりたいとおもった。もったいない、というのは、ようは私に興味がある、ということでもあるから、一所懸命にくどいた。で、ホテルにはいって、することをした。ほんとうに胸がちいさい女だった。こんなに胸のちいさい女ははじめてだった。それが良いのだと気づいたとき、私はまだまだじぶんのことでも知らないことがあるものだと、ちょっと感心した。

で、女の住むマンションころがりこんだ。女には、バイト代をいれるから、と言ってころがりこんだのだが、マンションに荷物を移動したその日にバイトをやめた。女は、私が一円も金を入れなくても、なにも言わなかった。コンビを解散するたびに、だいじょうぶ、わたしが養ったげる、と、じっさいはとっくのむかしから養ってくれているわけだが、そう言ってくれた。私がいよいよピンになって、女も三十をすぎて、はじめて涙を見せた。私はモノマネをはじめていて、しかし、私のやることだ、ろくなクオリティではない。芸人なんて自称プロだ。べつにモノマネをやるためになにか資格がいるわけじゃないし、いくら時間があるからってまじめに研究も練習もせず、そんなやつにしごとなんてない。女からもらう小遣いで知り合いの若い芸人の自主制作ライブに出させてもらって、すべって帰るだけ。その日もすべって、打ち上げで酒をしたたか浴びて、夜中に女のマンションにもどった。平日だよ。女は次の日もしごとがあるのに、帰りみちでどこかに鍵をわすれて、バカみたいにピンポンを押しまくる私のために玄関のドアをあけてくれて……、その場で泣きくずれた」

それ以降、男の声はきこえてこなかった。男の話はまとまりがなく、時系列もめちゃくちゃだった。けっきょく、悪魔の契約とはなんだったのか、男はなんの罪をおかしてここにいるのか、わからずじまいだった。男の親友は悪魔の契約をもちかけられて、それを断ったために事故死に見せかけて殺されたのかもしれない。男は泣きくずれた女を見てあわれみや怒りの感情にかられ、その場で女をあやめてしまったのかもしれない。あるいは男の話はまったくのとちゅうで、これより何十万字もしゃべったむこうで男はなにかほんとうに小さな犯罪を犯してここにぶちこまれたのかもしれない。それはわからない。そしてそれは永久にわからずじまいである気がした。

それから二日して、僕は釈放された。親が保釈金をはらってくれたのだ。その二日間、男のひとりごとはきこえてこなかった。どうやら男は僕よりさきに釈放されたらしい。

僕をむかえにきたのは父親だった。父親は僕と目を合わせなかった。僕の方でも目を合わせようとしなかった。父親の車にのりこんだ。後部座席にのった。車がはしりだした。もう夜だ。まどからながめるけしきは、いつもの東京の下町だった。

車内は無言だ。カーステレオから、笑い声がきこえてきた。

2022年5月21日公開

作品集『絶世の美女』第4話 (全7話)

© 2022 吉田柚葉

読み終えたらレビューしてください

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

この機能は廃止予定です。

タグ

この投稿にはまだ誰もタグをつけていません。ぜひ最初のタグをつけてください!

タグをつける

タグ付け機能は会員限定です。ログインまたは新規登録をしてください。

"悪魔の契約"へのコメント 2

  • 投稿者 | 2022-05-21 17:24

    読了感がなんとも言えずよかったです。

    • 投稿者 | 2022-05-21 17:40

      コメントありがとうございます。読了感が良かったというのは初めて言われたのでとても嬉しいです。

      著者
コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る