お寿司

小林TKG

小説

1,735文字

これを破滅派にあげてもいいんだろうかと思いましたが、まあ思いついてしまったので。

自分の寿命と引き換えに望んだものが、アイデアとかそう言うのが得られるサービスというのがあるというのを聞いた。

「そういうのがあるんですか。いいなあ」

普段から何を考えてるわけでもないし、こういった行為によって金銭の受領をしているわけでもない、まして私みたいなものがいくら自身の些末な寿命を捧げた所で何か特別なものが得られるとは考えづらい。が、もしも将来的に本当に困った時、例えば何かを養うような立場になってしまった時、そういう時何も無くなって心の底から、芯からガチで狼狽して、冷静さを失ってそういう場所に駆け込むよりまずいったんそういうものがあるんだというのを体験してみたいと思った。

 

子供の時に自転車に乗れるようになっておいて、しばらく乗らない時期を経て、大人になったある日また不意に乗ってみたら、存外によかった。乗れるかどうか不安だったけど、意外と体が覚えていた。

 

みたいな事だと思う。知っているだけ。と、ちょっと一回体験してみただけ。でもだいぶ違いがあるんじゃないかと。いざという時その事を思い出して、

「ああ、そういえばあれがあったなあ」

って思えるんじゃないか。そういうライフハックというか。まだ後がある。って言うのが心の余裕につながるのではないかと思った。少なくとも突発的に自殺してしまったりするのは、一旦待てるんじゃないかと。

 

「一回体験してみたいんだけど」

さっそくそのことを教えてくれた町村聡君に話をした。

「じゃあ一回目はお試しだからさ、一年でいいよね」

といわれて、一年?ってなった。

「寿命」

「ああ・・・うん」

使う寿命ね。はいはいはい。一年だったらまあ全然。一年くらいだったらね。もしこの一年が将来的にとても大事になってくるとしても、まあ、死んだらもうわかんないしね。

 

そうして聡君が件の場所に連絡をしてくれて、明日の11時にどこどこに行って。という話になり、あくる日私はその場所に向かった。

 

外の看板にはクリニックと書いてあったが、中に入って受付で昨日町村君に紹介してもらいました。という旨を告げると、受付の人はすぐにはいはいはい。ってSTAFFONLYって書いてる扉の中に通された。そこからスタッフルームを抜けて階段を登って上の階に進んだ。

 

そこに、改めて受付のようなものがあり、

「じゃあこちらを」

と、バンジージャンプとかスカイダイビングする前に書くような誓約書にサインをして、それを書いたらもうじゃあさっそくと、なんかの部屋に連れていかれて得体のしれないマシンの間に設置されて、んで服の上から僧侶の服みたいな、大きな重たいものを着させられてベルトとかで固定された。歯医者の初診時のレントゲンとる機械みたいなのの間に。んで、コレ噛んでおいてください。って、なんか嚙まされて。もうレントゲン撮影機だ。完全に。そんで私を中央に置いた状態で、

「ハイじゃあ行きまーす。動かないでくださーい」

と、係の人が室外に出て。そしたら私の周りの機械が動き出して、なんかぐるんぐるんしだして。レントゲンの機械みたいに。

 

そんでなんの実感も無いまま、ぼーっとしてたらもう終わったみたいで、機械が止まって係の人がお疲れさまでしたーって入ってきて、嚙んでたものを口から抜かれて、固定ベルトを外してもらって、僧侶の服みたいのを脱がされて。

「気分とかどうですか?」

って目にライトを当てられた。全然大丈夫だったので、大丈夫ですと言った。

 

その後その部屋を出て第二受付の所でちょっとソファーに座って待たされた。その時ふと、時すでに遅しっていう言の葉が脳内に浮かんできた。

 

一年。

 

これで一年かあ。

 

時すでに遅し。

 

あ、

 

時すでにお寿司。

 

時々Twitterとかピクシブでそういう文言を見るなあ。って。

 

その後、会計を済ませてもしよかったらとパンフと名刺的なものを貰って、第二受付を後にした。階段を下りてSTAFFROOMに入ると、ちょうど昼時だったからかみんなお寿司食べてた。桶のやつ。私の寿命と金銭が、みんなのお寿司になったのかなあと思った。

2021年6月2日公開

© 2021 小林TKG

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