二〇〇五年の秘密基地

応募作品

一希 零

小説

4,576文字

僕なりに平成を振り返りながら書きました。「かける」は「指名する」を、「よろっと」は「そろそろ」を意味します。

記憶もだいぶ薄れて、それは果たして現実だったか、幻実でしかなかったか、判別がつかなくなってきたけれど、何かしらのきっかけさえあれば、その夢は突如鮮明なものとなって僕の瞼の内側に描画されるだろう。何かしらのきっかけ。たとえば、何度も使い回した空気が滞留する犬小屋みたいであり、それでいて大自然のただ中で感じるような土と草と埃の混じった匂いに触れたとき。たとえば、日焼けし手垢で変色した古い文庫本たちが、無理やりねじ込むように収納された本棚がいくつも並んでいるのを目にしたとき。輪郭を喪失した記憶の断片はひとつの夢としてその都度編まれ、そこはかとなくたゆたう波に呑まれるようにして、僕は夢の中に浸かるのだ。

まばたきする。閉じられた瞼の内側は、赤色と緑色の無限の砂嵐以外に何も表示しない。開かれた瞼から露わになった瞳は、いくつもの明確な情報を受信する。少し遅延して、視覚以外の感覚も反応を示す。僕は声を聞く。

「びっくりしたでしょ。うちに来た人、みんなそういう反応するの」

「いや」そう、僕は首を横に振りながら言うものの、次の言葉が続かない。

「ねえ? そんなに驚かれると、ちょっと傷つくんだけど」

「秘密基地」

「秘密基地?」

「昔、子供の頃にね」

「男子だね」

「男子さ」

「似てるの? ここ」

「どうかな。なんとなく?」

「それは、古い畳?」

「うん。そして、四方を取り囲むように並ぶ焦げ茶色の本棚」

「部屋は?」

「狭く感じたけど、本当は広かったのかもしれない」

僕は彼女の部屋の中心に座り、四方を見渡し、目を瞑る。瞼の裏に、いくつもの記憶によって描画される曖昧な色彩が風に煽られたカーテンのように揺れ動き、けれど蜃気楼のごとく僕は何も掴むことができない。ただ、小さな痛みだけが、目を瞑るこの僕と夢の中の僕とを結びつける。頼りないたった一本の糸が胸に縫い付けられ、向こう側でその糸を引っ張っているかのように。

「どうしたの? 眠い?」

今ここに存在し、僕の隣から聞こえる単一の音。彼女の声が浮かび、消える。

「おやすみ」

 

 

二〇〇一年に小学一年生だったから、未だに僕は西暦と学年をセットで思い出せる。一年生のときにアメリカで旅客機がビルに突っ込み、二年生のときにサッカー日韓ワールドカップがあって、三年生のときに遠くの国で戦争があり、四年生のとき、大きな地震が起こった。ちょうど学校で展覧会があった日だ。土曜日だった。週が明け学校へ行き教室に入ると、僕の作品の一部、紙粘土で作ったネコの頭が机の下に落ちていた。それが、中越地震について僕が真っ先に思い出すことだ。

新潟市に住んでいた僕にとって、中越地震は、所詮は他人事だったのかもしれない。何より僕は、まだ子供だった。ニュースは連日地震についてばかりで、気づけば僕は小学五年生に進級していた。二〇〇五年の話だ。

僕はクラスで一番背が低く、力も弱くて運動も苦手だった。勉強は苦手ではなかったけれど、得意なわけでもない。地図帳を眺めることと、自由帳に棒人間の絵を描くことが好きだった。この頃は「第七次世界大戦」と題された、青色棒人間軍と緑色棒人間軍の血みどろの戦争を描き続けていた。今思い返すと、これは明らかに長篠の合戦の絵の模倣だった。

僕には二人の友達がいた。小一から小五までずっと同じクラスのカイ。四月に長岡の小学校から来た転校生のコウヘイ。カイは背が高く猫背で、図書館で借りた『マンガ日本の歴史』をいつも読んでいた。長身と彫りの深い顔立ちでありながら高い声で喋る、気のいい奴だった。コウヘイは小五の割にはガタイが良く、カイより背は少し低いものの、力持ちで運動が得意だった。野球部よりも高く遠くへボールを投げ、サッカー部よりも速く走った。目を小さくしていつも笑っている、元気で明るい奴だった。

目を閉じた状態で、脳内に僕の声が響いている。過去を、文字で綴るように描写してゆく。次第にそれは、現前する光景として捉えられる。目を瞑る僕から、夢の中の僕へ、僕の意識が移行する。僕は夢の中にいる。僕はいる。ここに。まるで犬小屋のような部屋に本がたくさんある、この場所に。

小学校のグラウンドの裏側に、鬱蒼とした木々に囲まれた誰も住んでいない古い家があった。学校では幽霊屋敷と噂され、昔ここに住んでいた人が自殺したとも言われていた。その廃屋には誰も近づかなかった。僕ら以外は。僕らはそこにいた。ここは、僕らの秘密基地だった。

僕の隣から声が聞こえる。小学生にしては低い声だ。

「武器をつくるぞ」コウヘイは言う。

「ああ」僕は頷く。

「よしきた」カイは言う。

埃まみれの畳の上にスーパーでもらった段ボールを敷いて、僕ら三人は部屋の中心に座っていた。僕の手元にはピカピカのウォレットチェーンに錆びついたキーホルダーの鎖の部分など、他にもストラップやチェーンの類がいくつかあった。それをひとつずつ繋げていた。ひとつひとつは短くても、すべて連結すれば立派な武器になる。

「お。いい感じだな」

「先端に鎌をつけたいね」

カイは本棚に寄りかかって座り、小さな布の巾着袋にボルトやネジをいくつも入れていた。コウヘイは太い輪ゴムを切って、それを玉状に丸め、それを繰り返してスーパーボールを何個も作っていた。僕らの武器の材料は拾いものに限られる。放課後になると学校や近くの公園、それから空き地や閉鎖された工場の近辺を探索し、武器のパーツに使えそうなものを収集する。一通り収集したら、秘密基地へ行き、武器づくりを行う。そうして、来たるべき戦いの日に向けて準備をしていた。

「俺たち、いつかここで戦うんだよな」

「そうさ」

「誰が攻めてくるんだろう? 先生とか?」

「あれだよ、キタチョーセンだよ。ほら、マンギョンボン号来てるし」

「ショウグンサマ?」

「そうそう。マンギョンボン号のせいで、市内の焼肉屋からカルビが無くなってるって、俺のお母さんが言ってたぜ」

「俺の父さんは、マンギョンボン号に大量の『ラ王』を積み込んでるって言ってた」

「ショウグンサマは『ラ王』が好きなのか」

「あれ、明日って何日だっけ」

「十三日」

「マジか。俺の出席番号じゃん。絶対かけられるわ」

「なに? 宿題やるの?」

「そ。ヤバイもん」

武器作りが終わると、各々は好きなことをしていた。コウヘイは家で勉強ができないと言って、いつも秘密基地で宿題をやっていたし、カイは大体図書館の本を読んでいた。僕は自由帳に絵を描いているか、秘密基地の古い本を引っ張ってきて、適当に読んでいた。難しい本ばかりでさっぱりわからなかったが、唯一、『星の王子さま』という本は普通に読めた。面白いとは思わなかった。

「よろっと帰るわ」カイはそう言って、読んでいた『マンガ日本の歴史6』を閉じた。

「え、そうなん?」コウヘイは言う。

「うん。あんまり遅いと、お母さんが心配するんだ」

「そっか」僕は小さく頷く。

「俺の親は、むしろ俺が遅く帰ってくると嬉しそうだけどね」コウヘイは少しつまらなそうに言った。

「なんで?」

「俺に、一緒に遊ぶ友達がいるって分かるから」

「そういうもんなん?」

「クラスで孤立してないか、とか。心配なんよ、きっと」

「まあ、僕たち、微妙に孤立はしているけどね」僕は躊躇いがちに呟く。

「でも、一人じゃない」コウヘイは言う。

薄い沈黙が空間に広がる。外から児童の笑い声や叫び声が聞こえた。遠くからは、野球部の掛け声が響いていた。僕はぼんやりと斜め上を見上げていた。そこに『星の王子さま』があるのだ。

「もうすぐ、夏休みだな」

「うん」

「夏休みも、秘密基地集まれるか?」コウヘイは僕らに尋ねる。

「俺、夏休みはずっとじいちゃん家に行くんだ。だから無理だわ」カイは申し訳なさそうに言う。

「そうか」コウヘイはそう呟く。そして、僕の方に視線を向けた。

「僕も、家族で旅行に行くから。あんまり来れない、かな」

「そうか」

「うん」

「あ、ヤバイヤバイ。俺、じゃ、帰るわ。また明日な」カイは慌ててランドセルを担ぎ、少し大きな声でそう言った。再度訪れようとした沈黙を無理やり壊すように。

「おう」コウヘイは言う。

「またね」僕は手を振る。

それから、僕らの秘密基地にキタチョーセンが攻めてくることはなかった。当たり前だ。同時に、現実はまるで幻の如くあっけなく崩れ去った。僕はそのことを、かつて身をもって知り、未だに夢として突きつけられる。

夏休みが明けると、コウヘイは既に転校していた。先生は長岡の実家に戻ったのだと言った。僕らは何も聞いていなかった。僕とカイは驚き、最初は裏切られたような気持ちになったが、徐々に後ろめたい想いが込み上げてきた。休みの間、僕らは秘密基地に一日も集まっていなかった。

『まんが日本の歴史』を読み終わったカイは『はだしのゲン』を読み始めた。僕は「第八次世界大戦」と銘打った棒人間たちの新たな戦争を描き始めた。僕ら二人だけとなった秘密基地はなぜか居心地が悪く、次第に僕らは集まらなくなった。むろん、武器も作らなくなった。

最後に秘密基地を訪れた瞬間を僕は思い出せない。なんとなく秘密基地から足が遠のいたのだから。最後にカイと何を話したのかを僕は思い出せない。それが最後の瞬間になると、そのときには思ってもいなかったのだから。僕の記憶は物語のように明確な始まりと明確な終わりなんてものはなく、破りとった一頁のように、ただ断片としてのみ存在する。あるいは、存在しない。

六年生になり最後のクラス替えがあると、僕とカイは別々のクラスとなった。五年間ずっと同じクラスだった友人との別れにもかかわらず、僕らの間に特別な挨拶をした記憶はない。新しいクラスメイト達とも少しずつ仲良くなってゆき、その頃の僕はドイツワールドカップを真新しいプラズマテレビで朝から見ていた。

その年の夏休み、秘密基地は取り壊された。休み明けに姿を消したコウヘイと同じようにして、秘密基地もまた、一年後の休み明けに姿を消した。そこは更地となっていた。かつて秘密基地のあった場所の前に立ち、僕は目を閉じた。秘密基地の中の光景を思い出そうとした。けれど、その時点で記憶はすでに輪郭を少しずつ失い始めていた。風に煽られ続ける砂の城のように。止まらない時間などありはしない。変わらない世界などありはしない。僕は大量の古い本たちがどうなったのかを考えた。僕はあの『星の王子さま』がどうなったのかを考えた。小さな星に誕生した、たった一輪の薔薇の花を想うようにして。

 

 

声が聞こえた。瞼をこじ開けると、いくつもの明瞭な色彩が知覚される。

「あ、起きた?」

「ねえ」

「なに?」

「どうして、記憶は残るのだろう。不確かな形でしか保存されないなら、いっそすべて消えてしまえばいいのに」僕は言う。

「昔の夢でも見てた?」

「そうかもしれないし、そうじゃないのかもしれない」

「なにそれ」

彼女は笑う。僕もつられて、少しだけ笑う。

「君は君。そうでしょ?」

「うん」

「コーヒー淹れるね」

彼女がそう言った瞬間、僕はその声の背後に、無数の声を幻聴する。それらの声の束をくぐり、ひとつひとつを相対化して、唯一の彼女の声を僕は発見する。今、ここにいる彼女を。

「ねえ」僕は言う。

「なに? あ、砂糖とミルク?」

「おはよう」

「うん。おはよう」

2019年1月21日公開

© 2019 一希 零

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"二〇〇五年の秘密基地"へのコメント 14

  • 投稿者 | 2019-01-21 23:00

    冒頭の――開かれた瞼から露わになった瞳は、いくつもの明確な情報を受信する――という表現は好きでした。新潟弁もなかなか聞けないので新鮮でした。

    秘密基地の話は自身の体験を元に書いてると思うのですが、回想する男が若干、春樹っぽく感じました。

    • 投稿者 | 2019-01-28 18:08

      合評会当日の参加が難しそうなので、コメントに返しておきたいと思います。
      表現について、ありがとうございます。視覚と聴覚の二つの感覚について、とくに意識的に書いてみました。新潟弁はあまり奇抜なものではないですが、まあ、こんな感じです笑。一点、これはたしかに回想形式で、また筆者自身と重なる設定を用いてますが、あくまでフィクションとして書かれ、実体験をもとに書いた、という意識はありません。結果的に、似た経験をしていた可能性はありますが。
      春樹感は意図的なものではありませんし、僕もいまいちわかってないのですが、タイトルの「二〇〇五年の秘密基地」は村上春樹の「1973年のピンボール」から取ってきてます。ただ、特に深い意味はありません。(深い意味ないのに持ってくるな、と言われれば、黙るしかありません)

      著者
  • 投稿者 | 2019-01-24 21:49

    失われた時間に対する甘美な追想が素直に書かれていると思う。私は感傷的なノスタルジアに共感するような感受性はさらさら持ち合わせていないが、子どもの目を通した中越地震や北朝鮮の存在の記述にはリアルさを感じた。また、男性目線で少年の世界を描いた物語であるため、唯一の女性として登場する「彼女」の疎外が際立っている。彼女は主人公と同じ空間を共有しているにもかかわらず、二人は違う時間を生きている。しかも彼だけの時間である過去を彼女と共有する意志は彼にはなく「そうかもしれないし、そうじゃないのかもしれない」などというハルキ・ムラカミ風のスカした台詞で煙に巻く。まるで彼女に説明することで何か大事なものが致命的にそこなわれてしまうかのように。おそらく二人は一夜を共にする間柄であるはずなのに、彼女のことは全編を通して一切彼の眼中になく、彼女の部屋も過去の記憶を思い出すよすがとしてしか描かれない。それでもかいがいしく彼に夜明けのコーヒーを淹れてあげる彼女がひたすら哀れだ。私が彼女の立場であったなら「今ここにいる私を見ろ!」と、この青二才に往復ビンタを食らわせることであろう。

    • 投稿者 | 2019-01-28 18:18

      「僕」の眼中に彼女は一切描かれないかもしれませんが、僕の耳には唯一彼女の声のみが響いています。彼女の部屋の景色は過去を呼び起こす装置かもしれませが、彼女の言葉は僕を現在に引き戻してくれます。そんなつもりで書きました。谷田さんがコメントで書いてくれましたが、まさに「ただいま」としての「おはよう」のつもりです(今作は、実はこの最後のやり取りから書き始めました)
      過去はとても美しいもので、そのように書いたのは事実です。ですが、それは「今」を疎外しているわけではないです。ただこれは、単に筆者の考えで、藤城さんの読みを否定するものではありません。というか、正直、自分でもう一度読み返したら、今述べてきたようなことがきちんと表現できてなかったことがよくわかったので、もっと上手く書けるようになりたいです笑。ありがとうございました。

      著者
  • 投稿者 | 2019-01-24 22:17

    無垢で儚い少年時代への回想が生き生きと描かれている。夏休みが終わって離ればなれになってしまったり、もう二度と取り戻せないあのときというテーマはどちらかといえばありふれているので、もうひとひねりあってもよかったのかなと思う。回想については、作者の得意パターンできれいにまとめた感がするのと(それは文句をつけるところではないが)、淡い感傷の域を出ていない気がするので、一希さんの実力への期待をこめて、今回は少し厳しくした。

    • 投稿者 | 2019-01-28 18:23

      「ありふれている」というのは、確かにそうですね。。また、僕自身が回想形式で書きがちなのも、本当にその通りだなあと思います。物語としての捻り、僕自身のスタイルからの脱却については今後の課題です。とても貴重なコメントをいただけました。ありがとうございます。
      その上で、ではなぜこのありふれたテーマを、同じ手法で繰り返しているかについて説明しますと、例えば以前に合評会に出した「ほんとうの気持ち」という掌編では、過去を回想して「その過去をやり直したい」「あのとき伝えられなかったことを今度こそ伝えたい」みたいな結末にしました。それは物語の爽やかかつ綺麗な閉じ方とは裏腹に、過去に捕らわれ続けているようなネガティブなものではないか、という気持ちが僕の中にありました。今回はそれを乗り越えたいと思って、過去を回想しつつも、最後には「今ここ」の声に気づき、今を生きて行く(目覚める)、という結末を書いたつもりなのです。
      合評会では同じ方々に読んでいただけるため、そのような変化も含めて読んでもらえればと思い、同テーマを最近扱い続けてました(『風の歌たち』では一切が過ぎ去り変わることをテーマに書き、『ほんとうの気持ち』の否定を試みました。今作は『風の歌たち』で示した流れゆく「時間」を肯定したいと思いました)が、しかし、「感傷の域を出ない」と言われると、結局はそうかもしれません。域、出たかったです。期待に応えられるよう、次回作頑張ります!

      著者
  • 投稿者 | 2019-01-26 21:47

    彼女の部屋のおびただしい本を見て、瞬間移動のように少年の記憶に帰って行く。取り立てて大事件はなかったけれど、ちょっと孤独な少年だった彼と共に過ごした二度と会えない(かもしれない)友達、二度と見ることのない秘密基地、止まることのない時間に流されつつ、心に残った消えない思い出にたゆたうように身を任せている「僕」。
    美しい映像を見た気がしました。
    他コメントに「彼女」が疎外されているという指摘がありますが、私はそうは読みませんでした。「彼女」もまた「僕」と同じ時間を共有していて、「僕」が見た夢を何となく感づいているようです。二人の思い出はこれから作って行くのだと思います。他の誰のものでもない「彼女」の声を聞きつつ時はまだまだ流れて行きます。うつろう時の恐ろしさ悲しさを直感しつつ、でもまだたっぷり時間を持っている若い人にしか書けない小説だと思いました。

    • 投稿者 | 2019-01-28 18:28

      ありがとうございます。こう言うと、肯定的な感想に乗っかったような感じになるのでアレですが、まさに、「今ここ」から「ここ以外」の時間へ行き、その時間を恋しく思いつつも、その時間から帰ってきて今を進んゆく、そんな話として書いたつもりです。これは僕が史学科生だからか、今を考えるために過去を考える、という手法が好みのようです。なので、過去は単なる憧れの対象ではなく、今を見るために必要な過程と思っています。
      また、過去と今を、「映像的に何度も繰り返し捉えられる過去」と「固有の声が響く今」として対照的に描こうと試みたつもりなので、とても嬉しい感想でした。

      著者
  • 投稿者 | 2019-01-27 16:02

    ひとつの物語として、いいものだと純粋に思いました。何と戦うかもわからないまま、秘密基地で武器を作る少年たち。イメージとして詩的で、でも交わされる会話には等身大の姿が見えるようです。
    主人公が彼女の質問に答えず、「おはよう」と言うのは、こちら側の世界に帰ってきたという意味で「ただいま」とも言っているように思えました。
    残念だったのは、お題である「犬小屋のような部屋に本がたくさんある」というのが作中でそのまま書かれていたことです。敢えてそうしたのかもしれませんが、個人的にはひねりが欲しかったです。

    • 投稿者 | 2019-01-28 18:34

      「もしも授業中にテロリストが教室に入ってきたら」みたいな妄想がありますが、そういう感じのことを三人も考えていたのだと思います。そしてその「何と戦うのかはっきりしないけれど、何かと戦うために備えようとする」という心理は、平成を振り返る過程での、一種の社会的風刺の意味をうっすら込めたつもりです。また、新潟は地震や原発、拉致問題など、危機の源がいくつもある場所でした。
      お題そのまま、という指摘は、ほんとその通りです。今回はお題決定に至る経緯に立ち会った人間として、お題をトリッキーに解釈して他作品との差別化を狙うのではなく、そのままのお題の風景を舞台に書こうと決めていました。とはいえ、文章レベルでそのまま書いてしまったのは根本的に失策でした。

      著者
  • 投稿者 | 2019-01-28 15:08

    なぜハルキ感が出るのだろう…?
    ぐらいハルキ感がすごいです…。
    ハルキ感が出る人って鬼のようにハルキ感が文章に滲みますが、
    まじで一希くんはハルキ感出てますね。
    なんでなんだ…???
    特に序盤とラストのセクション。
    僕と彼女のやりとりが鬼ハルキ感。

    • 投稿者 | 2019-01-28 18:38

      ハルキ感は僕も意識したのではないからわかりません笑。ハルキ最近読んでないし。。
      ただ、最初と最後のセクションでは、会話文における「微妙に噛み合ってない感」を出そうと思って書きました(対照的に、回想シーンはすらすらと会話させました)。リアルな会話こそ、よくちぐはぐな気がして、他方回想は記憶なので補正されてる感じにしたかった、というのと、過去の時間は当然、彼女との時間ではないのでそのズレ感(時差ボケみたいな?)を出しつつ、これから「僕」と彼女の時間の始まりを予見させたいなあと思って書きました。が、まあ、ハルキ感の正体は謎です。

      著者
  • 投稿者 | 2019-01-28 23:25

    ゼロ年代という誰からも無視された時代を上手に書いていて、もっと大勢がたくさんゼロ年代を書いて後世に残したほうがいいと思いました。万景峰号久しぶり

  • 編集者 | 2019-01-29 02:24

    同年代を生きてる筈なのにどうしてこうも見るものが違うのだろう?(勿論俺が悪い方)と思いつつ、美しい話だった。お題が出来る場に居たにしては、イメージが綺麗過ぎるとも言うが……。新潟出身なら中越地震は勿論、万景峰号と海の彼方の国も身近なのだろう。日朝友好。

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