日常。(76)

日常。(第69話)

mina

小説

1,403文字

1000円あれば牛丼の並盛りが3杯食べられる、少なくとも3食は浮くということだ

指名料1000円というのはそういうことだ
たかが1000円、されど1000円なのだ
こっちとしては誰でもいいというわけではないが、その指名料を1000円払うという行為がけっこう自分の中のプライドみたいなものを傷つけたりするから嫌になる
それに指名料を払わなくてもお目当ての女の子と遊べるときがある
その日はスロットで大当たり的な要素があり、感情が昂ったりする
まぁそれはこっちの勝手な都合であり、女の子たちにとっては指名料をもらった方が…

…いいに違いない

僕にとって日常というものはただ過ぎていく毎日のことであり、僕が過ごす時間、僕の時間の過ごし方なんて何の変哲もないただの消化するためだけの行為だ
毎日朝5時に起きて、歯を磨き、駅前のマックでエッグマックマフィンを食べる
「 … 」
毎日毎日、それのくり返し
「あ…」
いつも僕と同じぐらいの時間に見かける女の人、今日もタイトスカートがビシッと決まっている
きっと僕よりもかなり若いんだろうなぁ…僕は彼女を眺めるのが大好きだったりする
彼女はいつもコーヒーを注文し、ミルクと砂糖を断る
脚を組みながらコーヒーを飲む
彼女も僕と同じようなことを思っているんだろうか?だって彼女も僕と同じようにいつも同じ時間に同じ場所に座って外を眺めているから
「 … 」
勝手な親近感、気持ち悪い
…今日は外回りだからあの店にでも行くかな

         ・          

「大体さー電話予約じゃないと指名料くれないなんてケチくさいわよねー」
「…そうかな?」
「そうよ!前に1回ついてまた写真で選んでるんだから、本指名にしてくれって感じ」
「1000円違うもんね」
「そう!たかが1000円されど1000円よ!」
「今は写真指名無料が定番だもんね」
「全く、どんどん稼げなくなってきちゃって嫌になる!」
きっとお客様からしてみれば電話で予約する
までもない女だという認識なんだろうなーっ
ていうのがこちら側としては少し寂しい
また逢いたかったんだって指名してくれる方
がやっぱり嬉しい
入ってくるお金の金額の違いっていうのもあ
るけど、気持ちの違いっていうのもあるよう
な気がする
…たかが1000円、されど1000円だよ
なぁ、本当に

「こんばんは」
「あ、こんばんは!お元気でしたか?」
「うん、まぁぼちぼちね」
前にお相手したお客様だった
「今日はついてる日だったよ」
「ついてる日?」
「君に逢えたからさ」
…私に逢いたかったんだったら電話予約して
くれればいいのに…なんてさっきあんな話し
してたから思ってしまった
…何となくこの人の言ってることの全てが嘘
に聞こえてしまうし、真剣に話しを聞きたく
なくなる
まさに1000円マジック
2人でホテルに入り脱がせあい、一緒にお風
呂に入って体を洗ってあげる
「 … 」
お客様は終始笑顔で楽しそうなんだけど、私
は全然楽しくなかった
カラダに触れられたとき、それはМAXにな
って…
「…大丈夫?」
「えっ…」
お客様にバレてしまった
「あ…すみません」
「気に入らなかったの?」
「え…」
「例えば…僕が君を指名しなかったこととかがさ」
「いえ、あの…」
「…僕みたいなヤツに好かれたら嫌だろ?」
「そんなこと…」
「…お金払って愛みたいなモノを買う男なんて嫌だろっ!」
そうやって急に叫んだお客様が私は急に愛お
しくなり、力強く抱きしめた
「そんなことないです」
そう言った後、私のカラダが濡れていくのが
解った
                end

2016年1月22日公開

作品集『日常。』第69話 (全70話)

© 2016 mina

読み終えたらレビューしてください

この作品のタグ

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

"日常。(76)"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る