日常。(75)

日常。(第68話)

mina

小説

1,546文字

寂しい、僕の中にいつもある感情
ずっと寂しいから、寂しさを紛らわせる方法を僕はたくさん知っている
だけど寂しさを紛らわせてみたところでその瞬間だけ寂しくないだけで、その後の空しさと切なさは僕をいつも苦しめた
会社帰り、車から見える景色は明るく、僕の他に誰か居ることを教えてくれる
もうずっと車通勤の僕の目に見える、いつもと変わらないその景色が僕をホッとさせる
僕はきっと今日もあの店に寄ってしまう
「いらっしゃいませ」
「 … 」
ここの店員はいつも無愛想というか無駄に喋りかけてこないからいい
販売している商品が商品だからかも知れないが…
「…17850円ですね」
「 … 」
「…今月20日に露出狂の女がうちの店に遊びに来るんですけど…」
「えっ…」
「あ、いやいつも露出系の作品を買って下さってるっていうか」
「あっ…」
「いつも来て頂いてるんで、その女に悪戯し放題なんで…どうかな?って思って」
正直驚いた
店員に話しかけられたのも初めてだったし、
しかもいつも来て頂いてるって…
「あ…時間がとれたら…」
「良かった、お待ちしてますね」
店員さん、僕のこと覚えていてくれてたんだ
何となく嬉しいな…いや、何か物凄く嬉しい
この気持ちは純粋な僕の気持ち

         ・          

「何かさー前の店で一緒だった友達が持ってきた話なんだけど…」
「 ? 」
「エロDVD屋でちょっと胸とかお尻とか見せて、ちょっと弄らせて3万円くれるっていう仕事があるんだけど…やる?」
「えっ…何それ?」
「…その店恒例のイベントらしいんだけど、ちょっとしたAV女優を呼ぶと何気にギャラ高くなるし、プロっぽくなっちゃうから素人に近い私たちに声がかかったみたい」
「…でもそれって怖くない?」
「うーん…でも最近店暇だし…私と2人でやってみない?」
世の中には色んな仕事があるんだなって思っ

在籍が長い先輩から言われて断りづらかった
けど、何か不衛生そうで嫌だったから断った
「そっか…ごめんね、変な話しちゃって」
「大丈夫です」

         ・          

あのとき店員さんに言われた20日が近づいてきた
行こうかなって思っていたんだけど、何となく辞めてしまった
「 … 」
そしてまた訪れる、寂しいという気持ち
この気持ちだけは自分じゃどうにもならなかった
抑えきれず、何かにすがりたくって、すがる場所を求めて彷徨う

         ・          

「こんばんは」
「あ…元気にしてた?」
「はい…でも寂しかったかな?」
「寂しかった?」
「はい、ゴトウさんに逢えなかったから」
先輩は今頃エロDVD屋さんでお仕事してるのかな…
「…僕に逢えて寂しくなくなった?」
「はい、寂しくなくなりました」
ゴトウさんは月1回ぐらい、私に逢いに来てくれる人で、触り方がとても優しい人だから、私のお気に入りのお客様だった
今日も私を優しく抱きしめてくれる
「あっ…!」
「 … 」
急にゴトウさんが力強く私を抱きしめてきた
「ど、どうしたんですか?」
「…僕はちゃんとココに居るかな?」
「 … 」
今日のゴトウさんはいつものゴトウさんと何か違ってた
ゴトウさんの抱きしめる力がどんどん強くなっていって、私は苦しくて苦しくて…
「居ます、居ますよ…2人一緒に居ます」
「はっ…あっ…ご、ごめん」
「大丈夫です、ゴトウさんだけが1人じゃないですよ」
そのあと、私も1人ですよとは続けられなか
った
お互いの孤独を埋めあっている私たちは似た
もの同士…まだ抱きしめられているような感
覚が残っていて…私は何故だか濡れてしまっ
ていた
                end

2016年1月15日公開

作品集『日常。』第68話 (全70話)

© 2016 mina

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