今月は新潮、文學界、群像、すばるの4誌が発売された。4誌の概観をここで紹介しよう。

新潮 2024年4月号

・一頭の元競走馬と出会って運命を変えられた女を描く、川村元気「私の馬」、津村記久子「続うそコンシェルジュ うその需要と供給の苦悩篇」(連作完結)が掲載。赤松りかこによる新潮新人賞受賞第一作「グレイスは死んだのか」。

・古川日出男と角田光代による対談「千年の時を超えるためにーー「源氏物語」と「平家物語」を経て思うこと」が掲載。「源氏物語」と「平家物語」を訳した二人が、日本古典の魅力について縦横無尽に語りあう。

・今福龍太「小鳥もカタルーニャ語のさえずる街でーーバルセロナ 叛コロナ日記」。旅先の病床で思考はスペイン史とパレスチナの今を貫き展開する。細部が煌めく日記文学。

文學界 2024年4月号

・【創作】では、町田康「弥勒の世」、長嶋有「ゴーイースト」、滝口悠生「煙」、沼田真佑「三脚の椅子」、井戸川射子「並ぶ連なり歩み」。又吉直樹「生きとるわ」が第4回、島田雅彦「大転生時代」が最終回を迎える。

・村田沙耶香による新連載「Writers in Residence Zurich 滞在記」がスタート。半年間、ライターズ・イン・レジデンスで滞在することになった、スイス・チューリッヒの日々。

・筒井康隆による新連載「自伝」がスタート。第1回は「芽吹いて蕾――幼少年期」。「作家が自伝を書く限り、引用は禁じられるべきだ」という巨匠、豊穣なるその人生。

・「第129回文學界新人賞」中間発表が掲載。

・「第54回九州芸術祭文学賞」が発表。最優秀作は野口実柑「白い朝」。村田喜代子、小野正嗣、青来有一による選評も。

・上田岳弘の特別インタビュー「流転していく世界のなかで」(聞き手=綾門優季)が掲載。移る時代と共に小説を書くとき、何を考えてきたか。デビューから十年間の軌跡。

群像 2024年4月号

・【震災後の世界13】として、東日本大震災がら13年が経とうとしている今、改めて震災後の日本について語る。創作では、古川日出男「キカイダー、石巻、鳥島、福島」。柴崎友香×古川日出男による対談「書けないところから始まる」もあわせて。

・【『徹底討議 二〇世紀の思想・文学・芸術』刊行記念選書】として、松浦寿輝×沼野充義×田中純による「「二〇世紀の夢」を読む30冊」。

・阿部公彦の新連載「父たちのこと」、鈴木涼美の新連載「不浄流しの少し前」がそれぞれスタート。

・【創作】では、小川洋子「踊りましょうよ」、高橋源一郎「オオカミの」が掲載。

・戸谷洋志「メタバース現象考 ここではないどこかへ」、堀江敏幸「二月のつぎに七月が」、百瀬文「なめらかな人」がそれぞれ最終回を迎える。

すばる 2024年4月号

・【特集:ティータイムの効用】として、千早茜のルポ「京のお茶会」、安達茉莉子のルポ「お茶修行日記 武夷山・岩茶の旅」、山崎ナオコーラの小説「アリスは紅茶を飲まない」、石井遊佳の小説「ティータイム」、川野芽生の小説「無茶と永遠」、澤田瞳子のエッセイ「茶をめぐる日々」、赤坂憲雄のエッセイ「岡本太郎の茶会」、石原あえかのエッセイ「チョコレート愛飲者ゲーテ」、清田隆之のエッセイ「俺たちは「お茶する」ことができるだろうか?――ケアの欠如とbeingの肯定」を一挙。

・【小説】河﨑秋子「化けの毛皮」が掲載。

・李琴峰による新連載小説「世界文学の交差点 アイオワ印象」、武田砂鉄による新連載「ルサンチマンをぶち壊せ」、岸本佐知子×杉田比呂美の新連載「ふたりのミッション」がそれぞれスタート。

・長島有里枝×飯田祐子による対談「女性作家の自伝の読者は誰なのか?」。

以上、2024年3月発売の4誌について、概観を紹介した。読書の一助になれば幸いである。