米作家のポール・オースターが4月30日に、肺がんの合併症のためニューヨークの自宅で亡くなった。77歳だった。米紙ニューヨーク・タイムズが伝えた。

 1947年生まれ。コロンビア大卒業後、各国を放浪。82年に「孤独の発明」で小説家デビュー。1985年から86年に自身が育ったニューヨークを舞台にした「ニューヨーク三部作」と呼ばれる「ガラスの街」「幽霊たち」「鍵のかかった部屋」を発表し、現代米国文学の旗手として注目された。「ムーン・パレス」をはじめ、米国における家族の問題をテーマにした作品も残した。ほかの作品に「ティンブクトゥ」「幻影の書」などがある。

 1995年の米映画『スモーク』などの映画脚本も手掛け、『ルル・オン・ザ・ブリッジ』では自身が監督を務めている。日本でも翻訳家の柴田元幸により多くの作品が紹介されており、人気がある。

 オースターが闘病中であったことは、妻で同じく小説家のシリ・ハストヴェットが昨年に明らかにしていた。

 筆者はオースターの良き読者ではなかったが、彼の小説の世界観には憧れを抱いていた。彼の新作がもう読めないと思うと誠に残念である。心からご冥福を祈りたい。