今月は新潮、文學界、群像、すばるの4誌が発売された。4誌の概観をここで紹介しよう。

新潮 2024年1月号

・井伏鱒二による単行本、全集未収録の忘れられた小説二篇を発掘。「三十男Q・Dの告白/小さな町」が掲載。併せて大原祐治による解説も。

・平野啓一郎による中篇「息吹」が掲載。

・桐野夏生の新連載「聞こえたり聞こえなかったり」がスタート。

・梯久美子の新連載「独りの椅子 石垣りんのために」がスタート。家族を持たず家族をうたった詩人の〝本当の顔〟に迫る決定的評伝。

・秋元孝文構成・インタビュー・訳による「作家エトガル・ケレットは今イスラエルで何を考えているか」。両親が共にホロコーストを体験したイスラエルの小説家エトガル・ケレット。ガザ地区への攻撃が激化している今、祖国の中で何を思い過ごしているのか。

文學界 2024年1月号

・【創作】では、又吉直樹による短期集中連載第1回「生きとるわ」、村田沙耶香「無害ないきもの」、大濱普美子「空に突き刺さる屋根」が掲載。

・磯崎憲一郎の「日本蒙昧前史 第二部」が最終回を迎える。

・【新連載】東畑開人「贅沢な悩み プロローグ――深い谷の両岸で」、KOHHとして知られる千葉雄喜「千葉雄喜の雑談」、石田月美×頭木弘樹×畑中麻紀×横道誠 「ビブリオ・オープンダイアローグ」第1回・スナフキンの悩み「ふつうの友情を求めて」がそれぞれスタート。

・【追悼 櫻井敦司】として、10月に亡くなったロックバンドBUCK‐TICKの櫻井敦司について、高橋弘希が「その演劇的な死について――BUCK‐TICKという毒薬」を寄稿。

・ジャニー喜多川氏による性加害が明らかになってから様々な展開があった旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)について、矢野利裕による批評「ジャニーズの感触――むしろ芸能スキャンダルとして」が掲載。

・金原ひとみ×渡辺ペコによる二十年振りの対談「正しさが移ろう時代を描く」。

・なお、今月号から表紙画=下山健太郎、グラフィックデザイン=REFLECTA,Inc.が手掛けて装いをリニューアル。

群像 2024年1月号

・創作では、阿部和重による新連載「Wet Affairs Leaking」、原武史による新連載「日吉アカデミア一九七六」がスタート。草野理恵子による「名前を呼ぶ」が掲載。

・【エッセイ特集】「休むヒント。」として、麻布競馬場、伊沢拓司、石井ゆかり、石田夏穂、岡本仁、角田光代、角幡唯介、くどうれいん、古賀及子、小西康陽、斉藤壮馬、酒井順子、酒寄希望、向坂くじら、佐藤良成、杉本裕孝、高橋久美子、滝口悠生、武田砂鉄、竹田ダニエル、つづ井、年森瑛、永井玲衣、蓮實重彦、平松洋子、藤代泉、古川日出男、星野博美、堀江栞、宮内悠介、宮田愛萌、吉田篤弘と総勢32人のエッセイを一挙。

・「第76回野間文芸賞」受賞作は、川上弘美「恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ」。「第45回野間文芸新人賞」受賞作は、朝比奈秋「あなたの燃える左手で」と九段理江「しをかくうま」。それぞれ受賞のことばと選評が掲載。さらに、川上弘美×宮田毬栄による特別対談「小説、この不確かなもの」もあわせて。

・【『なれのはて』『列』W刊行記念対談】として、加藤シゲアキ×中村文則による「いま小説を書くこと」。

・自身の哲学において集大成とも言える『訂正可能性の哲学』(ゲンロン叢書)を上梓した、東浩紀のロングインタビュー「批評=楽しさをもとめて。東浩紀の二十五年」(聞き手=大澤聡)。

・宇野常寛「庭の話」が最終回を迎える。

すばる 2024年1月号

・【特集:子どもと本と未来と──座右の児童文学】として、対談では小澤俊夫×エリザベス・コール「昔話の持つ力」、金原瑞人×西村義明「忘れられても残り続ける物語」、エッセイでは、深緑野分「児童文学について」、佐藤厚志「フィリパ・ピアスから日本の子供たちへ」、都甲幸治「暴力と祈り──ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』を読む」、論考では、河合俊雄「河合隼雄と児童文学」、安藤聡「英国ファンタジーとその背景──児童文学の名作を生んだ時代と風土」、遠藤純「戦時下、ある文学者が子どもに向けたまなざし──山本有三編「日本少国民文庫」のこと」、そして池澤夏樹による小品「失われた子供たちの海岸」を一挙。

・小説では、桜木紫乃「情熱」と石田夏穂「世紀の善人」が掲載。

・金原ひとみのデビュー20周年記念したインタビュー「絶望から他者理解へ 金原ひとみの20年」(聞き手・構成/江南亜美子)が掲載。

・『パッキパキ北京』刊行を記念した、綿矢りさ×藤井省三による対談「オンナ寅さん北京をゆく!? 新境地の魅力」。

以上、2023年12月発売の4誌について、概観を紹介した。読書の一助になれば幸いである。