今月は新潮、文學界、群像、すばるの4誌が発売された。4誌の概観をここで紹介しよう。

新潮 2024年6月号

・創刊120周年記念特大号。1904年5月5日に創刊されて120年を迎える。谷川俊太郎から年森瑛まで総勢70名以上の執筆陣による創作や随筆が集合。

・特集「春のみみずく朗読会」として、今年3月に早稲田大・大隈記念講堂で行われた朗読会で読まれた未発表の短編、村上春樹「夏帆」と川上未映子「わたしたちのドア」を掲載。さらに、マーサ・ナカムラによる「朗読会レポート」も併せて。

・宮本輝による新連載「湾」がスタート。「人」の字に似た美しい舞鶴湾を舞台に、百年単位の生の営みを融通無碍な語りで描く。

・小山田浩子+滝口悠生+上田岳弘による特別鼎談「新潮新人賞受賞から十年――何を考え、どう書いてきたか」が掲載。

・「第48回川端康成文学賞」は町屋良平「私の批評」。

・曾根博義+編集部による「新潮120年史」。

文學界 2024年6月号

・【創作】では、尾崎世界観「転の声」、長嶋有「僕たちの保存」、又吉直樹「生きとるわ」(短期集中連載第6回)が掲載。2024年上半期同人雑誌優秀作として、後藤高志「今日があったという響き」。

・加納愛子×町屋良平による対談「正解がない面白さ」。初の中編小説集『かわいないで』(文藝春秋)が発売される加納と長編『生きる演技』(河出書房新社)を3月に上梓した町屋。互いの新刊を手に、小説における言葉、笑い、面白さを語り尽くした初対談。

・奥泉光×島田雅彦「いま文学を学ぶ人たちへ」(進行・江南亜美子)。奥泉の近畿大学最終講義を掲載。

・石田月美×頭木弘樹×畑中麻紀×横道誠「ビブリオ・オープンダイアローグ」が最終回を迎える。

群像 2024年6月号

・「第67回群像新人文学賞」は当選作に豊永浩平(応募時は馬熊英一名義)「月ぬ走いや、馬ぬ走い」、優秀作に白鳥一「遠くから来ました」が選ばれた。豊永は、2003年沖縄県生まれの21歳。琉球大学に通う現役の大学生。白鳥は1982年宮城県生まれの41歳。15年間新人賞への応募を続けて、今回の優秀作受賞となった。選考委員の柴崎友香、島田雅彦、古川日出男、町田康、松浦理英子による選評も。

・ブレイディみかこによる新連載「世界は誤訳でまわってる」、武塙麻衣子による新連載「西高東低マンション」がそれぞれスタート。

・伊藤春奈「ふたり暮らしの〈女性〉史」、小川洋子のVRアニメーション『耳に棲むもの』から生まれた連作小説、永井玲衣「世界の適切な保存」がそれぞれ最終回を迎える。

すばる 2024年6月号

・【小説】では、二瓶哲也「ふたご理論」が掲載。

・【『グリフィスの傷』刊行記念対談】として、千早茜×石内都「傷痕の奥に見えるもの」。

・安藤礼二による「黄金の道」と、小森陽一×成田龍一「大江健三郎を読む──文学と歴史の複眼的視点から」の新連載がそれぞれスタート。

・「第九回渡辺淳一文学賞」は、塩田武士『存在のすべてを』。

・「第三十九回詩歌文学館賞」が発表。【詩部門】松岡政則『ぢべたくちべた』、【短歌部門】三井ゆき『水平線』、【俳句部門】正木ゆう子『玉響』がそれぞれ受賞。

・村田沙耶香による「世界99」が最終回を迎える。