文化庁が「芸術選奨文部科学大臣賞」を2月28日に発表し、【文学部門】で柴崎友香『続きと始まり』(集英社)と乗代雄介『それは誠』(文藝春秋)が選ばれた。また、文学部門の新人賞に高瀬隼子『いい子のあくび』(集英社)が選ばれた。

 「芸術選奨文部科学大臣賞」は、芸術の分野で優れた業績をあげた人たちに贈られる。今年度は23人と1組が選ばれた。

 柴崎は、1973年大阪府生まれ、東京都在住。大阪府立大学卒業。1999年「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」が文藝別冊に掲載されデビュー。2007年『その街の今は』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞を受賞。2010年『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞、2014年『春の庭』で芥川賞を受賞。その他に『パノララ』『千の扉』『待ち遠しい』『百年と一日』ほか、エッセイに『よう知らんけど日記』など、著書多数。

 『続きと始まり』は、2020年3月から2022年2月まで別々の場所で暮らす男女3人の日常を描き、蓄積した時間を見つめる、叙事的長編小説。

 乗代は、1986年北海道江別市生まれ。法政大学社会学部メディア社会学科卒。2015年「十七八より」で「第58回群像新人文学賞」を受賞しデビュー。2020年に『旅する練習』で「第34回三島由紀夫賞を受賞。『それは誠』は「第40回織田作之助賞」も受賞している。

 『それは誠』は、生き別れになったおじさんを探す主人公と修学旅行で東京を訪れた高校生たちが、コースを外れた小さな冒険を試みる青春物語。

 高瀬は、1988年愛媛県生まれ。東京都在住。立命館大学文学部卒業。2019年「犬のかたちをしているもの」で第43回すばる文学賞を受賞し翌年デビュー。2022年『おいしいごはんが食べられますように』で「第167回芥川賞」を受賞。

 『いい子のあくび』は、「割りに合わなさ」を訴える女性を描いた表題作のほか、結婚の形式や幸せとは何かを問う「末永い幸せ」など、社会に適応しつつも、常に違和感を抱えて生きる人たちを描いた3話からなる短編集。

 なお、今年度から芸術振興のため賞金が拡充され、大臣賞は30万円から120万円に、新人賞は20万円から80万円と、いずれも4倍の金額になっている。贈呈式は来月12日に都内のホテルで行われる。