月下贖路

昏睡状態(第4話)

大川縁

752文字

後暗さの結晶のような詩です。つい先日、庭で異常に繁殖し始めた石実皮を、通りすがりの老人Aがカメラで撮影していました。その姿を簾越しに眺めていたら、老人Aは傍にあった南天の実をいつくかもぎ取っていきました。
別の日。庭で異常に繁殖し始めた石見皮を、通りすがりの老人Bが写生していました。やはり簾越しに眺めていると、老人Bは傍にあった南天の実をもぎ取っていきました。南天の木から実はなくなり、そうして、この詩は生まれたのです。

口を噤み、瞼を深く閉じる。

枝葉はカサカサと音を立て、月見草の輝きが瞼の裏に浮かび上がる。

月は真円を描き、その引力で人を狂わせる。

 

私は立ち竦み、その場から動けずにいた。

月の下で、楓の並びはどこまでも伸び、月見草が至る所に生い茂る。

油断すれば血を流す、いつしか足元は石実皮の茨が這う。

恐れるだけで、何もできなくなる。

振り返れば、見たくないものばかり、石実皮の茨に絡みついている。

 

それらは私が穢したもの。

2015年11月8日公開

作品集『昏睡状態』第4話 (全17話)

昏睡状態

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© 2015 大川縁

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